第14話
その頃
獣は休む間もなく襲いかかってくるし、
羽の悪魔に近付こうにも、まずこの獣を何とかしなければ身動きが取れない。
それに、無理に近付いて逃げられてしまっては元も子もない。
あくまでも一瞬で、しかも確実に
だが……。
「……一人で
一人でいるからか、思わず本音が口から
今、
ーーーー彼等を護れるのは、自分しかいない。
「……来い」
まだ、羽の悪魔と裕祇斗の間には距離がある。剣を投げても、三匹の獣に盾になられたら、途中で剣は止められる。
まずは、獣の
一匹の獣が裕祇斗に飛びかかる。
体勢を低くして
護身用にと芽依が隠していた
廊下の
「…………、っよし……」
ここまで追いかけてきた獣が、同じように跳び上がるのを見て、裕祇斗は屋根から手を離す。
そのまま思い切り、獣に対して槍を突き立てた。
「『ガウッ!』」
槍は獣を
身動きの取れなくなった獣は、
「…………まず、一匹……」
斬っても死なない化け物。物理的に動けないようにしてしまえば関係ない。
仲間意識があるのか、他の獣の
「……!」
だがしかし、裕祇斗が剣を構える前に、剣が視界から消える。
「……ご無事ですか、王子!」
音もなく近付いた何者かは、門の兵士が持つ小型の槍を振り下ろし、獣を地面へ叩き落としてこちらに視線を
裕祇斗はその者を見て、これ以上ないほど目を見開く。
「え、……は……!?
「……
信じられない者を見たような顔で自分を見てくる裕祇斗に苦笑いを返しつつ、杙梛が答える。
その間も、獣を
その姿を見て、裕祇斗も冷静さを取り戻したのか、剣を構え直す。
……結局いつも、自分は誰かに護られてる。
それでも戦闘中、背中を安心して預けられるのは、彼しかいないのだ。
二人は何も言わずとも、二匹の獣をそれぞれに相手する。
杙梛が槍を
「っ……、コイツらは斬っても死なない。攻撃は最低限で良い!その間に、本体を倒す算段を考えーーーー」
ガウッと
先程地面に槍で
「っ、……!!」
「杙梛っ!!」
「…………、大……丈、夫……っ、……です」
衝撃で地面に転がったものの、杙梛は
受け止め切れず、槍がパキリと音を立てる。ガガッと地面に引き
それでも
「…………っ、……!!」
「杙梛……ーーーー!!」
裕祇斗は獣を
「…………っ」
ーーーー唐突に、今まで反応の無かった羽の悪魔が、にたり、と笑った。
殺すなら今だと踏んだのか、獣と共に杙梛のいるほうへ移動する。
動いた、と……視界の
裕祇斗が放った剣は、悪魔の盾になっていた獣を貫通し、勢い殺さず、小さな悪魔の全身にぐさりと突き刺さるーーーー。
ーーーーキィィィイイン!!
「ーーーー……」
額に冷や汗を滲ませ、肩で息をしながら、崩れたそれをただ
杙梛も似たような表情をとっていたものの、
「王子!お怪我が……!」
「……あー。これくらい大したことじゃない」
「大したことないわけないでしょう!」
ぎこちなく笑って誤魔化そうとする裕祇斗に対し、杙梛は眉を吊り上げてあからさまに怒った表情になる。
それを見つつ、しまった……と内心ため息をついた。
杙梛は王子としての裕祇斗を大切にしている
事あるごとに王子らしくあれと告げる彼は、裕祇斗がこんな大怪我を負うことは許さないだろう。
「……とりあえず、止血はしましたが、一度王城に戻って医師に
「…………いや」
そこで一度言葉を切り、奥の部屋を見つめ、暫くして杙梛に視線を戻した。
「三津流の所にいるよ」
「ですが……」
「頼む、って言われたんだ……。姫が無事に戻るまでは、俺は此処にいる」
「……………………」
眉間の
だが、裕祇斗がこうなったら
「……分かりました。王子がそう言うなら従いますよ」
ーーーーにっ、と裕祇斗が口角を上げる。
「…………本当に、貴方達は……」
杙梛の前で、此処に残ると言い切った芽依と裕祇斗。
何の偶然か、同じ
決して、目を逸らす事を
三津流の部屋を目指す裕祇斗の後ろ姿を眺めながら、杙梛は眼鏡の奥で目を細めた。
「…………だから、貴方がたは迷わないんでしょうね」
ぽつりと呟かれたそれは、裕祇斗に届く前に風に
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