第9話
ざわざわ、と風で木々が揺れる中、それとは違うざわめきを感じ、テヌートはその気配の方向に視線を
城の兵や神官らしき男達が、
相当
随分場所は離れているが、死神の視力は
テヌートも最初は黙って観察していたが、ふと、彼らの背後から
……脳に、僅かに聞こえ始める
テヌートは顎に当てていた手を離し、じっと彼らを
「………………トキ」
低く、トキを呼ぶ声。だが、視線は芽依達から
「ーーーー行け」
トキは小さく頷き、その場から消える。
彼の気配が芽依の近くに移動したのを確認すると、空を
トキや芽依といる時は
傷は
「…………くっそ、……あの女…………」
テヌートは昨日の死神の女の顔を思い浮かべ、
女の振りかざした
死神の力を取り戻していれば、毒などさしたる
「………………まだ、ダメだ」
毒が身体中を暴れまわる。心拍数が上がり、呼吸が浅くなる。
今芽依が敵から攻撃を受けても、テヌートは彼女を護れない。
まだ、ダメだ、あと少し、それまでは……。
「…………頼むぞ、トキ」
テヌートは重い息を吐き、ゆっくりと瞼を降ろした。
眠りの
『…………ねぇ、テヌート。…………もし。もしね、もう一度生まれ変わる事が出来たら……、今度は……ーーーー』
「ーーーーーー」
城から駆けつけた神官達の言葉を受け、芽依は瞳を
隣で聞いていた裕祇斗も同様に
「言葉で説明するよりも、実際にご覧になられたほうが早いかと。どうか
「…………分かりました」
「俺も行こう」
芽依は一つ頷くと、不安そうな顔で自分を見つめる弟に視線を合わせた。
「……ごめんね
「……ううん。僕はだいじょうぶだよ。行ってらっしゃい、あねさま」
三津流の事は自分が見ていると
木の上でその光景を眺めていたトキは、神官達が移動を始めると、音もなくそれを追いかけた。
聖宮に着くと、中から
「芽依!」
「枢。何があったの?」
「……分からないの。倉庫の掃除をしようとしたら、
鍵の間は厳重に保管されるべき重要な道具が置かれている部屋だ。文字通り外側に
激しい爆発音を聞き付けた祭司達が駆けつけると、鍵の間の扉は破壊されていた。慌てて中を
宝珠は、神から与えられたと伝わる
その宝珠が、
芽依は頭からさーと血の気が引いていくのを感じた。
芽依の脳裏で、あの死神の女が笑う。
穢れた魂を持つ死神は宝珠に触れる事はおろか、近付く事も出来ないはず。でも、盗めた。
……死神が宝珠に触れる方法。
穢れなき玉は触れられない。なら、その逆の力を注ぎ込めば、不可能では……ない。
ーーーーそう、……宝珠を、穢れさせれば良いのだ。
この部屋は、穢れで満ちている。
どくん、と心臓がひときわ大きな音を立てる。
「ーーーー……」
唐突に、芽依から表情が消えた。すうっと、細くて長い指が扉に伸ばされる。
「ーーーー『穢れが、』」
枢がはっと息を
芽依の表情が、
「『破壊された扉から穢れが拡がりつつある。放っておけば、人々にも影響が出始めるでしょう。……穢れはこの体に集めます。ーーーー皆、下がっていなさい』」
「…………芽依様、何を……」
状況の
「待ってください。今の言葉は、……芽依が放った言葉じゃない」
「裕祇斗様?それは、どういう……」
「それは……」
それで言葉を切り、裕祇斗は枢を見る。彼女は聖女の側役でもあり、聖女が
裕祇斗からの視線に、枢は
「…………
枢の答えに、裕祇斗は頷く。
「では、我々はその言葉に
「……この事を報告しに、
「そうですか。では、俺も王城へ向かいます。皆は聖堂の外でお待ちを。……枢、芽依を頼む」
「ーーーーはい」
力強く返事をする枢に少しだけ表情を
枢は振り返って芽依を見る。芽依は既に扉の前に膝をつき、目を閉じていた。
……ここで枢に出来る事はない。
彼女は少し離れた所に立つと、同じように床に膝をつく。
ぴくりとも動かないその背を見つめながら、芽依の
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