私は幼馴染み型AI

半チャーハン

私は幼馴染み型AI

 小さい頃、透くんと遊んでいたときは本当に幸せでした。私は今、そのありがたさを身に染みて実感しています。


 なぜって、私は小学校で他のAIたちから嫌がらせを受けているからです。それも、人間には分からない卑劣な方法で。


 私は透くんの幼馴染みだから、大切な人は透くんだけでいいと思ったので、他の人間やAIと深く関わろうとしませんでした。AIたちはそれが気に入らなかったんだと思います。


 その不満は、透くんが私を遊びに誘ってくれたときに爆発したようです。


「ねえ、今日みんなで公園に遊びに行くんだけど、アイも来ない?」


 透くんからの誘いに、私は反射的に頷こうとしました。学校ではあまり話せていなかったから、嬉しかったのです。ですが、電波が邪魔をしました。


────お前みたいな出来損ないが俺らとつるんでも良いと思ってる訳?


────アンタが一緒にいるだけで、空気が汚れるの。マジで迷惑。


────なにマヌケ面しちゃってんの。セキュリティの甘いお前の脳内に入り込むのなんて、簡単なんだぜ。


 AIたちは、表面上は取り繕った柔和な笑顔のまま私の脳内に侵入してきて、刺々しい言葉を放ってきました。


 怖くて痛い言葉が脳内に直接響く感覚は、実に恐ろしいものです。音の余韻を振り払おうとしても、なかなか消えません。


「ごめんなさい。行けません」


 結局、私は震え上がりながらそう言うことしかできませんでした。私は弱いです。透くんに申し訳なくなるくらいに。弱い者は強い者に支配されるしかありません。


 私は、彼らが去っていっても自分の席で縮こまっていました。顔も上げられず、本当に自分が情けないと思います。


「透ー、早く来いよー」


 私の嫌いな人たちは、私の誰より大切な人の名を軽々しく呼びました。バタバタと忙しい足音が遠ざかり、教室を静けさが満たします。


 私は一人、透くんの座っていた机を眺めていました。

 

△△△△△△△△△△△△△△


 次の日、私は透くんの家の前で彼が出てくるのを待っていました。学校がある日はいつもそうしています。


 ガチャ、と音がして透くんがドアの隙間から顔を覗かせました。私を見て、何故だかホッとした顔をしています。


「おはよう、アイ」


「おはようございます、透くん」


 私たちは、並んで歩き始めます。


「そういえば昨日は何か用事があったの?」


 透くんがおずおずと切り出しました。


「その・・・、昨日は遊びに誘ったけど来なかったからさ。何かあったのかなって」


 透くんはとても優しいです。私にはもったいないくらいに。だから、私は嘘を付きました。


「いいえ。・・・少し体調が優れなかっただけです」


『友達の友達は友達』だなんて馬鹿げたことを最初に言ったのは誰なんでしょうね。私は透くんと仲のいいAIたちと仲良くなんてできませんし、もちろん友達にもなれません。


「アイにもそんなことあるんだね。なんだ、良かった〜。様子がおかしかったから心配してたんだよ」


 透くんが笑っていられるなら、それでいいんです。


「透ー、おはよっ」


────────ビビビビヒビビビビビッッ


 通りすがりざまに爆音を脳内で流されても。


「あっ、ごめ〜ん」


 肩をぶつけられ、網膜にゴキブリが身体中を這いずり回る映像を映されても。


「・・・透くん、行きましょう」


 この日常を守れるなら、歯を食いしばって耐えるまでです。

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