エピローグ1
あれから、幼稚園に通い続けた。
最短で退園する気だったが、そんな事を言っている場合ではなくなった。
幼稚園の、トイレトレーニングを促すそのシステムを活用しようとした。
だが、娘のためにと徹底して拒んだトイレは、そのような短期間で治ることはなく、退園。
五年の屈辱に耐えた私が、ただトイレに入るという、それだけのことが出来ないまま時間が過ぎた。
それどころかおねしょまで始まり、レポート提出の期間以上にオムツが重要な存在になってしまっていた。
ろくに自宅も出る事もなくなり、未だ常にオムツが必須なこの体。
実験の時と違い、オムツは支給されない。
自費購入では、あまりにも早い消費は、家計を圧迫した。
余裕を持って受験させられたはずの資産は、リサの小学校卒業まで保たなかった。
補助金も掛け合った。
だが、私は健康そのものだった。
介護も不要。
適用されなかったのだ。
だが、これはある意味助けとなった。
掛け合ったことで、失禁の矯正施設への入所の話が上がったのだった。
……聞けば、この施設は例の大学の関連施設ということもあり、裏であの研究員の方々が動いてくれたようであった。
こうして娘を残し、私は施設でおねしょしなくなるために、トイレの恐怖を克服するために、努力した。
娘が、来るまでは。
中学を出て、エレベーター式の進学を蹴って、就職してしまったのだ。
この施設に。
母の為に、母と同じように苦しむ人の為に。
実験だったと信じてはもらえない。
私の努力は、屈辱は、何だったのか。
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