オムツの園児は27歳
「ただいまより、令和××年度、ことり幼稚園の入園式を執り行います。
本日、入園を許可された者、五十一名。
特別に再入園を許可された者、一名。
児童が入場しますので、保護者の方は拍手でお迎えください」
後方の扉が開いて、保護者席で湧き起こる大きな拍手。
そこに、上履きの底ゴムが板張りの床と擦れ合ってきゅっきゅ鳴る音が聞こえ始める。
やがて最初の園児の姿が見えた。
が、その次……二番目の園児が明らかにおかしい。
目立って体の大きな新入園児の姿に保護者席がざわめいた。
「本当にオムツなのね……」
「しかも、これが初めてじゃないらしいのよ」
「え、何がですか?」
「入園ですよ……正確には留年らしいんです」
また、私は手を引かれている。
私が最初に入園した年の……かつては同級生だった「お姉さん」に引かれている。
あのときは三人に引かれたが、今年は一人だ。
先頭を行き、席に到達する。
ステージ中央に演台が置いてあって、その左右に新入園児の人数と同じ数の木製の椅子が並んでいる。
今、階段を登り終え、自分の席まで連れてきてもらった。
明らかに他より大きな席の前で、一礼して座った。
音は鳴らない。
お手本のような入場。
おかしい点と言えば、明らかに3歳ではない点と、オムツとスモッグのみでスカートを履いていない点だろう。
自分でも驚くほど、冷静に、しかし心が動かない。
あれから2年。
私は【また】ことり幼稚園に入園した。
私の手を引いて、入場をリードしてくれた年長の園児。
それは、かつて共に入園した、娘の「リサ」だった。
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