おまるが使える裕子
分かっていたが、意図的なオモラシというのは予想以上に困難であった。
「お母さん! ほらオマル持ってきたよ」
「あぁだめ、待って……まだ」
「おもらししちゃうでしょ早く!」
利尿剤の容赦ない尿意が消え、その高まりは緩やかなものになった。
水を本当に……本当に多量に接種していることもあり、1時間に一度はトイレに行きたくなる。
後に水中毒の恐れがあるからと、この摂取量は辞めさせられる。
だが、その止められる前段階でも、私はおもらしできないでいた。
手が股間から離せない。
腿をすり合わすのを辞められない。
小刻みに飛んだりその場で足踏みしたりを辞められない。
息を整え
目をつむり
トイレに居ることを想像し、
しかし膀胱が緩まない。
私に気をかける娘がそんな状態を見逃すわけもなく、素早くオマルを持ってきてしまう。
初日は出来た。
本当に、本当に長い時間オモラシスべく、トイレを拒んだ。
そうして娘とトイレの前で入るかどうかのイヤイヤをして、出来たのだ。
そしたら、幼稚園の先生に相談したらしい。
事情を知らない担任の先生のようだ。
……そうしたらなんと、教室においてある私用のオマルが届けられてしまった。
『裕子ちゃん、リサちゃんを困らせちゃだめですよ。
このオマルで夏休み中にオモラシを治してくださいね』
そうして、我が家にオマルが置かれた。
置かれてしまった。
「はいズルっと!」
「あ!」
そうして、リサは私のオムツを素早くおろしてしまい、両足の間にオマルを挟み込む。
この状態でお腹を押されれば、もうしゃがみ込むしかなかった。
世界的に著名な海外のアニメ会社の、お姫様達が散りばめられた、このオマルの取手を掴むしかなかった。
「やったぁ! これで十回連続ね。
でも、次はおトイレ行けるよう頑張ろ」
「……そうね……ありがとうね、リサ」
「じゃ、洗うから降りて?」
「はい……」
あれから一週間。夏休み初日以降、オモラシをしていない。
オマルが使えていた。
これを使えたうちに入れて良いのであれば、だが。
だが、一つ言えることは。
これは、【オモラシ】ではないということだった。
なんとかしなくてはならない……
いや、なんとかなってしまう必要があった。
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