替えのオムツの持ち込み方

 トイレに入れるし、帯もワンタッチ。

 自力で替えようと思えば出来ないことはないと思うのだ。多分。


 だが、肝心の替えをどうするのかが、思いつかない。



 うちが檀家をする寺にロッカーは無い。駅から離れた所のためコインロッカーだって無い。

 自家用車は売ってしまった。


 大きなカバンを持っていく訳にはいかない。

 いつも持ち歩くのに使う、幼稚園カバンなんて論外だ。


 私の葬儀用の黒いバッグは縦12cm、横20cm、厚さ3cmの、取手の無い物。

 オムツは……入るだろうか。





 ……一つだけ、なんとか入った。ほかは財布とキーホルダーが精一杯。

 二つ目は……いや、一枚目の時点で膨れすぎる。


 不安で胸が締め付けられる。

 入園式の日、私は二回目のオモラシで溢れさせた。

 その恐れが付き纏う状態にならざるを得ないのだ。

 

 いや、そもそもどの段階でオムツを替えるのか。


 長い法事が始まる直前で三枚当てるべきではないのか。

 


 ……いや、使用済みオムツをまずどうするのだ。

 当然だが、使用済みは使用前よりはるかに分厚くなる。


 というより、このバッグはオムツの伸縮性を最大限活かして入れている。

 使用済みでそんな事をしたら大変なことになる。


 そこらで捨てる訳にはいかない。

 このオムツは、全て私の名前が……個人情報がだいたい入っている。


 寺のゴミ箱に残すわけにも行かない……



 大学の想定以上のペースでオモラシをしている都合、次の供給が間に合わず一日だけ市販の普通のを使ったことがあった。

 結果、今当てているオムツの性能は凄まじいということをとても良く理解することになった。

 厚さがどうこうというのもあるが、それよりも吸水速度もすごいのだ。



 どうする。


 どうすれば良い?





「お母さん、私、オムツ履くよ」


 そこには、卒業したはずのオムツを当てたリサが居た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る