第21話 ダンジョン【メリーさんハウス】1
「さぁ、早く案内しなさい」
「勘弁してください! ほんと勘弁してください!!」
まああれだ、絵面はメチャクチャ悪い。
あと
「なぜです? これまで多くの冒険者を自分のダンジョンに引き込んだのでしょう? ならば我々も問題ないはずです」
「むっ、無理です! 許してください! 許してぇー!!」
何がいったいどうしてこうなったのか。少しだけ時計の針を戻す。
「つ、疲れた……!」
「もう歩けないぃ……」
「お疲れさまでした」
タイミングが合ったのでこの週末は光さんたちから指導を受けていた。
光さんの戦闘技術についてはスゴすぎて参考にならないのひと言だった。
だってそもそもレベルが違って身体能力が圧倒的だし、同じアームズでも補正が入るから光さんが使うと火力がおかしいし。
『ね、簡単でしょう?』
ひとりでエネミーを殲滅した光さんに言われたけど、オレと雫で全力で首を振ったね。ちなみに鳴司さんも振ってた。
ああでも、スコップを使った近接戦闘は参考になったかもしれない。光さんのスコップが
その点、
一番印象に残っているのは探索だ。
2人とも探索をすごく重視している。フィールド系のダンジョンだと地形をがっつり確認して、何の変哲もない石とかも手にとって確認している。文明のあるタイプのダンジョンだとメモは漁るわ日記は読むわ、引き出しは全部開けるわで。どこのRPGゲーの主人公かと。
正直、こっちはいつエネミーが現れるか気が気じゃなかった。高レベル冒険者なら多少の敵は脅威じゃないんだろうけど。あるいはエネミーの接近を把握するスキル的なものがあるのか。雫の召喚獣のミアが似たようなことができるけど、狭いところだとそれも難しい。
道のりはまだ長い。
「あれ? なんだこれ?」
組合に戻って休憩している時だった。鳴司さんが自分のポケットから何かを取り出した。
「……鍵? なんで?」
それは小さな鍵だった。ファンシーなお花のキーホルダーが付いている。鍵の造形はシンプルでおもちゃにしか見えない。
「拾ったんですか?」
「酔ってるうちに拾ったのかなぁ?」
「鳴司さん酔ってない時ってあります?」
「相川ちゃんは手厳しいなぁ〜、あっはっはっは」
雫のやつコワイもん無さすぎだろ。鳴司さんが温厚で良かった。
「でもそれ、ほんと何なんでしょう」
「とりあえず交番にでも——」
ピリリリリリ。
「「「「!」」」」
スマホが鳴る。鳴司さんのスマホだ。テーブルの上に無造作に置かれている。
そして鳴司さんは着信している電話番号を見て首を傾げる。知らない番号らしい。しばらく応答しないで待っていたけど、鳴り止まないので電話に出た。テーブルに置いたままスピーカーモードで話し始める
「もしもし?」
『もしもし? わたしメリーさん』
「女ですか。私の知らない」
光さんの方が怖かった。
『もしもし? わたしメリーさん。いま梅田駅にいるの』
光さんの姿が消えた。そよ風だけが残っていた。鳴司さんが問いかける。
「もしもし? メリーさん? キミの後ろにれーちゃん居ない?」
『もしもし? わたしメ……ハァ? 何いって——きゃあああああ!?』
『あなたですか鳴司さんの電話の相手は。聞きたいことがありますので同行してください』
『ちょ!? な、なによあんた?! や、やめ——』
ブツッ。
そして場面は最初に戻る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます