第22話 密室なら何してもいいんだよ?
ー #保健室 #夜 #散歩部部長視点 ー
他愛のない会話も紅先輩とするのなら別格だと思う。
今なら2人、密室。
つまり私は何をしてもいいし、何をされてもいいんだ。
口裏さえ合わせれば文字通りなんだってできるのに・・・・・・
この先輩はどうやらヘタレなんだよね。
そう感じ取って限界まで抑えた溜息をすると伯爵から電話がかかってきた、
本当は紅先輩から名前を貰いたかったけど仕方ないよね。
☆☆☆
みんなが集まってきた。伯爵と伯爵の母親、裁縫部顧問そして私たちの5人。
「密室となった保健室でさ、私奪われたんだよね ” 初めてを ” 」
私以外がざわつく、当然そんなことはしてない。
「ベットに押し倒されてさ、私に名前を付けてくれた。
「いやいやいや、何もしてないからな!!!
そもそもヴァーミリオンって朱色だし!!!!
もしかして信じないよな?な?!!!!」
紅先輩の発言はスルーして魔法でメリケンサックを呼び出して威嚇をする。
人間って怖い物で強者に対しては恐怖を感じてしまい正常な判断が
できなくなるから、先輩以外は ” 対話 ” に成功できた。
「ほら、お腹もこんなに膨らんで。あっ、今動いたかも」
「クッキーの食べすぎだろ!!!!!!
いい食べっぷりに感心していたが信じてくれ!!!
それでも俺はやってないんだ!!!!!」
紅先輩、それ死亡フラグだから。
「あれ?忘れたの?もう結婚式を挙げて指輪も通したじゃん」
きらりと光るルビーの宝石を見せて、
” ありもしない既成事実 ” をでっち上げる。
完璧な作戦のはずだった・・・・・・けれど裁縫部顧問が横やりを入れた。
「待って頂戴、2人の結婚を止める気はないし祝福するつもりよ。
けれど紅ちゃんが ” ウエディングドレス ” を着たかどうかが
気になってしょうがないの!!!!!!!!」
「つっこむところそこかよ!!!」 って紅先輩は言ったけれど
確かに疑問に思う所かも。
白色のドレスのイメージがないのも事実、
逆に普段と違う服でテレ顔の先輩もいいね。
「うーん、紅ちゃんの趣味は黒ゴスロリ系だから思い切って
それを花嫁衣装にするのも手だと思うけどね」
ウインクしながら裁縫部顧問は紙にデザインを書きなぐっていく。
この人絵がうまいな、と感心しつつ伯爵は結婚式場のサイトを
私に見せてきた。
伯爵の母親は何故かスピーチの練習してるし、呼ばれる気満々じゃん。
「こんな空気だけどどうする?紅先輩」
私の問いかけに少し間を開けシリアスムードで対応する紅先輩、
そう私が懇願しているあの目、
メイド喫茶で見せた夢女子製造モードの鋭い眼光。
これを待っていた、今の先輩を掌握すれば私は先輩を独占できるから。
「───すまないな、名前を俺自身が考えられなくて」
やば、自分の非を認める先輩はレアかも。
「俺はそこまで強くないからな、
目の前で何人もの人間が注射器片手に ” 蒼転寺遺伝子 ”に
適合する可能性を求めて亡くなった地獄のような世界の住人だ。
だから俺より先に逝かないでくれ。
それが俺と付き合う条件だ」
「それが紅先輩の過去・・・・・・ということは
本名は蒼転寺 紅、アレ?
私が普通に言えるってことは偽名?」
「そういうことだな、そもそも蒼転寺の遺伝子は後付けだからな。
そんなことはどうでもよくてだ。これから頼むぞジエンド」
「やっぱ長かった?」
「長いがなんかドラゴンみたいな名前でカッコいいぞ?
スカーレット・ヴァーミリオン・ジ・エンド」
「そう、気に入ったらならジエンドでいいや」
密室では何もなかったけれどいつか事実にして見せるから。
・・・・・・紅先輩の過去話の後、裁縫部顧問から笑顔が消えていたけど
もしかして元カノだったり?
☆☆☆
ー #紅視点 ー
夜も遅いということで解散となった俺達。
過去なんてものは他人に語る物じゃないことは分かっている。
ジエンドを利用してまで知りたかった真実。
やはりリーヴェは何かを知っている。
違うな、奴こそが蒼転寺の血を持つ ” 蒼転寺ラン ” なのだ。
何故俺達に正体を隠すのだ?
俺達の世界の住人ならば負い目を感じるのも無理はないがな。
世界征服され宇宙に旅立ち事故死した
あのランが生きているならばやることはひとつだ。
彼女が作ったロボットホビー、装狂演譜で決着を付け
真意を話してもらうだけだ!!!!!
ー #裁縫部顧問、トキソウ・リーヴェ視点 ー
え?私の肉体が滅んだ後ってそんなことになってたの!!!!
真意は知りたいけどなんて言うか・・・・・・
私は空間認識疎外装置を外せない。
今更リエちゃん達に会って何を話せばいいのよ。
ー トキソウ・リーヴェの正体編 完 ー
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