第16話 黒いローブの集団
街が見えるところまで行くと街が戦禍にあることが分かった。
街の門は壊され、衛兵や冒険者、狩人と思われる者たちがあちこちに倒れている。
「おい!お前ら!何があったんだ!!」
全員返事がなかった。既に息絶えていた。
「くそっ!!」
「一体何が起こってるんだ!?」
「俺も知らねぇよ!今までこの街で戦闘なんて起きたことねぇ!」
急にルナが踵を返して体制を低く保ち周囲を警戒し始めた。
その様子をみて二人も足を止めた。
「みんな気を付けて!その建物の裏から誰かくる!」
ルナが警戒する方を見るとそのからできてきたのは傷だらけのティガーだった。
「知った匂いを感じたんで出てきてみれば。やっぱお前らか……」
「お前はベンゼルか!?何があった!」
「急に街に何者かが襲撃してきたんだ……敵の正体はわからねぇ。賊の数はおよそ100。街の衛兵と俺らで始めは何とか食い止めていたんだが……敵の中に化物みたいな強者がいた……全員フードをかぶっていて種族はわからなかったが、俺を倒したやつは恐らく魔族……。敵の狙いは領主の首だ。ケビンらが守りを固めにいってるが奴と戦っても勝てるはずがねぇ!お前らを強者だと見込んで頼む!この街を守ってくれ!!」
「ロンドはベンゼルを助けてやってくれ。俺らは行ってくるよ」
「わかった。三人とも無理はしねぇでくれよ?領主さまの屋敷は冒険者ギルドの裏の通りをまっすぐ行くと早い」
「ありがとう。行くぞルナ」
「はいっ!」
二人は全速力で領主の屋敷のある方へと向かう。
道のわきには賊と思われる者、冒険者、民間人と思われる人も倒れていた。
こんな平和な街で暴れるなんて……!
ハルトは歯を噛みしめて怒りをあらわにしていた。
ルナは血と煙の匂い、あちこちから聞こえる悲鳴や叫び声を聞いて悲しい気持ちになっていた。
二人が領主の屋敷の前の広場につくと、屋敷の前でケビンとルッツ達が黒いローブを纏った集団に囲まれていた。
「ルッツ!!」
ハルトが叫んで助けに入ろうとすると黒ローブの一人が手をあげ周囲に何やら指示を出した。
すると部下と思われる5人がハルトとルナを取り囲んだ。
「悪いが邪魔しないで貰おうか冒険者さん。足止めしろって命令なんでね。邪魔をしなければ命までは取らない」
「お前らか?」
「うん?」
「お前らが罪のない人々を殺したのか?」
「任務の邪魔をする者は誰であろうと始末しろという命令なもんでね。じゃないと俺らが殺されちまう」
「そうか……。もういい、わかった」
「へっ。物分かりが良くて助かるぜ。おい、こいつらを縄で縛って――」
男がそういいかけた瞬間。ハルトとルナが一瞬で5人を吹き飛ばした。
その様子を見ていた先ほどの黒ローブのボスと思われる者は驚いていた。
そしてルナの姿を見て笑みを浮かべた。
「こいつらは一体……。ふふ、キャトランか面白い。お前達にこいつらの相手は任せた。俺があの二人の相手をする」
「待てっ!逃げるのか!?」
ルッツが男を止めようとし、挑発した。
「逃げる?お前達なぞ10秒もかからず全滅できる。少しでも長生きしたくば口に気を付けろよ人間?」
男はとんでもない威圧感を放ってルッツ達を睨み、威嚇した。
その威圧感にケビンすらも動くことが出来ずにいた。
「さて、貴様らの相手は俺だ。かかってこいキャトラン。そして人間の冒険者」
ルナが全力で飛び掛かり男を攻撃し続けた。
しかしすんでのところで飛びつく攻撃を見切られ躱された。
「なんで当たらないのか?と思っているな?」
ルナは男を睨みつけた。
「いいだろう、ハンデだ。教えてやろう。俺はユニークスキル未来予測を持っている。敵対する対象が次にする行動が直感的にわかるというスキルだ。どんな攻撃もこのスキルの前では無意味!最強種キャトランといえども所詮はこの程度か……もういい」
男はそういうと右手に火炎を作り出した。
その火炎は以前見たレイラの魔法の倍の大きさはあった。
「燃え尽きろ猫め」
男が火球を高速でルナに投げつけた。
ルナは躱そうとするが間に合いそうにない。
ルナは当たる直前になり、せめてダメージを最小限にしようと思い目を閉じ両手でガードした!
火球がルナを直撃する。
それを見ていたルッツ達が愕然としていた。
「あんなの喰らったらいくらキャトランと言えども……」
全員があきらめかけたその時。
炎の中から声が聞こえてきた。
「なんだ、この程度か」
ローブの男もその声を聴いて炎の方にすぐさま向き直った。
「!?俺の魔法を喰らって生きているだと?」
手を振るいハルトが残りの炎をかき消した。
「ルナ、大丈夫か?」
「ええ、ご主人様がかばってくれたおかげで……」
ルナも驚いてぽかんとしている。
「ちょっとルシアを預かっててくれ」
そういうとハルトは背負っていた荷物をルナに預けた。
「バカな……無傷だと……?ありえん!!」
「あれくらいの炎ならなんてことないみたいだな」
「では私の最強の魔法で……!」
そう言うと男は両手に集めた炎を正面で混ぜ青白い炎の玉を作り出した。
「ふははは!この炎はそこらの魔法とはわけが違うぞ!炎魔法の使い手の中でもかなり限られたものにしか扱えない高位魔法!対象をすべてを燃やしつくすまで消えないことからその名もヘルフレア!俺を本気にさせたことを後悔しながら燃え尽きるんだな!くらえっ!」
巨大な青白い火球がハルトに直撃した。
しかし次の瞬間。炎の中からハルトの声が響いた。
「確かにさっきよりは少し暖かい気がするな。しかもホントに消えないのか」
「バカな……ありえない」
ローブの男は恐怖で震えていた。
「んじゃこの魔法そのままお返しするよ」
そういうとハルトは男に瞬時に近づき両手を握った。
青白い炎はローブの男に移り、男が悲鳴を上げ始めた。
「自業自得だバカ野郎」
ハルトは苦い顔をしていた。
炎が男から消えるとローブで見えなかった男の姿が露わになった。
男はまだ微かに息をしていた。
「貴様……何者だ……。炎竜にでさえ火傷を負わせるという……ヘルフレアを受けて無傷とは……」
「んー。俺健康だからかな?暑さとか寒さ感じないんだよね」
「……!!まさか完全耐性……伝説の勇者だとでも…………いう……のか……。すみま……せん…………さま」
そう言い残すと男は息を引き取った。
目の前でボスを討たれ、恐怖していた賊の残党はケビンらによって打ち取られた。
「助かったよ。にしてもハルト。なんであんな魔法を受けて平気なんだ?」
「ははは。そういう体質みたいで……」
「まぁなんでもいいや。ありがとう。助かったよ」
「それにしてもこの男って」
男の姿を見ると、額には角、背中には羽を生やしていた。
「ああ、魔族だな。魔族は1000年前に交わした不可侵条約があるから魔王領から出てこないはずなのに」
これが魔族か……魔物から進化した人型の種族だっけか。
ルシアも魔王に進化する前だったらこんな姿だったのかな。
「何の目的で魔族がこんな田舎の街を狙ってきたんだ?」
「それについては私から説明させてください」
急に背後からする声に振り向くとそこには甲冑を身にまとった新手の魔族が立っていた。
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