虚無からはじめる異世界生活 ～最強種の仲間と共に創造神の加護の力ですべてを解決します～

第8話 リーザスの街 待望のお肉

金も手に入り遂に……。

待望の肉を食えると思い二人の心臓は高鳴っていた。

最初に街に入ったときに声をかけてきたランドボアの串焼きを出していた店に二人は向かった。

豚バラの串焼きのようでとても食欲をそそる香りがしていたからだ。

店に着くなりすぐに2本注文し、二人はじっと焼き上がるのを眺めていた。

「あいよっ！串2本あがり！銀貨４枚ね！まいど～！」

ハルトとルナは1本ずつ串を受け取り。それを眺めてつばを飲み込んだ。

近くにあったベンチに腰掛け串を眺める二人。

炭火でこんがり焼けたランドボアのバラ肉から滴る肉汁は軽く振られた香辛料の香りも相まって二人の煮袋を刺激した。

待ちに待った待望の肉……二人はゆっくりと口に運ぶ。

そして肉にかぶりつこうとしたその時。

眼前を黒い影が横切った。

二人はすぐに何が起こったのか理解する。

何者かが二人の串を奪ったのだ。

二人は待望の肉を食す直前で奪われた静かな怒りがこみ上げ、殺意を込めた目つきで肉を奪った者を睨みつける。

そこにいたのは1匹のタキシード柄の猫だった。

猫は二人の殺気を感じ取り全身の毛を逆立てながら必死で逃げようとしていた。

だが目をぎらつかせたルナが全力でそれを追う。

人の動きとは思えない速度でルナは全速力で路地に逃げ込んだ猫を追い立てる。

猫もなかなか素早く、健闘はしたが路地裏の行き止まりに追い込まれ逃げ場を失っていた。

「お肉の恨み……覚悟……！」

ルナから凄まじいオーラが見えた気がした。

次の瞬間、その猫の背後に数匹の猫が現れた。

ぞろぞろと全部で6匹集まってきた。

猫は子猫たちのために食い物を探してきていたようだ。

それを見てルナは野良だった頃のことを思い出した。

まだ子猫で自身で獲物も取れず空腹に耐えていると、知らない猫がどこからか持ってきたご飯を分けてくれた記憶。

昔を思い出し、幼いころの自分と目の前にいる猫達を重ね。

ルナの中にこみ上げていた怒りは何処かへ消えてしまった。

後ろで見ていたハルトも同じだった。

「ねぇ……ご主人様？」

「ああ、わかってる。あの肉はその子たちにあげよう」

「うんっ！」

二人は猫達が食事を終えるのを見守って別れを告げようとした。

するとその場を去ろうとした二人の体に子猫たちがしがみつき登り始めた。

「こらこらっ。ははっくすぐったいって！」

「ふふふっ。ありがとうって？いいよ♪気にしなくて！……え？私達と？」

ルナは猫と会話しているようだ。人型になっても猫と会話は出来るらしい。

子猫たちがようやく落ち着いたので、親猫をなでて今度こそ行こうと思ったらルナが真面目な顔をしてハルトに願いでた。

「ご主人様！この子たち行くところが無いんだって……。この猫もこの子たちの本当の親じゃなくて親が居なくなった子猫をかわいそうに思って養っていたんだって……。この子たち連れて帰ったらダメ？かな……」

そんな顔でお願いされたら断れるわけないじゃないか……。

まぁそうじゃなくても猫好きの俺としたらそんな状況を聞かされたら放っては置けないけどな。

「わかった。連れていこう」

そういうとハルトは親代わりの猫の前に行ってこう告げた。

「俺らの世界では敵も居ないし、食事には困らないかもしれない。た　だ　し！肉はないからな……？」

親代わりをしていた猫は話を理解したのか

「にゃーん」

と納得したように鳴き声で返してくれた。

しかし今すぐ連れて帰るわけにもいかないので、ギルドで登録が済ませて戻るまでの間、ロンドのところで猫達を面倒見てもらうことにした。

「だ、だんな！なんだいこの猫達は！」

「これから俺らと住む予定の仲間達だ！仲良くな！しばらくよろしく！」

「仲間って猫じゃねぇか！ちょっとだんなぁ！」

こうして猫達をロンドに預けて二人はギルドへ……向かう前に、先ほどの串焼き屋に訪れていた。

ようやく二人は念願のお肉にありついた。

先ほどの串焼きを購入しベンチに座ってそれを眺める二人。

そしてゆっくりと口へ運んでいく……。

口に入れると長い間求めていた濃厚な肉汁が口の中へ広がる。

『おいしい～！』

二人は涙を流しながら串焼きをほうばった。

そんな様子を見ていた串焼き屋のおばさんが、泣く程美味しいって言って食べてくれたのはあんたらが初めてだといってサービスでもう1本ずつ譲ってくれた。

二人は至福の時間を満喫した。

「はぁ～……。うまかった」

隣を見ると、ルナも至福の表情を浮かべていた。

「さてと、久々に肉も食えたしギルドの登録を済ませておこうか。街を出るにも身分証が必要みたいだしな」

「はーい！」

こうして待望の肉を満喫した二人はギルドへ向かった。