マンイーター・イーター

上面

マンイーターVSマンイーター・イーターVSガキVSバタフライ

 七色に輝いて見える羽を持つ蝶がうんざりするくらい飛び交う寂れた神社の境内に俺と少年とニコニコした表情の姉ちゃんが居る。

 全員が少し腕を伸ばせばぶつかるくらいの近距離に密集している。

 ちなみに俺の身長は二メートル近いので腕もそれ相応に長い。

「少年、その女は人喰いだ」

 その少年を見つめる姉ちゃんは人喰いだ。俺の感覚は人喰いを判別することができる。これは科学的に証明された事実だ。

「誰!?急に出てきたおじさんは誰!?」

 少年は急に出てきた俺の存在に驚き、腰を抜かす。

 俺は突然出てきたが、怪しい者ではない。

「マンイーター・イーターだ。怪しい者ではなく、おじさんではなく、お兄さんだ」

 俺は人喰いを食べる者を自称している。

 今では天然記念物となってい人喰いを残さず食べる美食家だ。

 主に俺が食べたせいで、今では人喰いもあまり見かけなくなっている。

「夏の暑さで狂人が自然発生している……」

 姉ちゃんは俺から一歩一歩距離を取る。まるでここに不審者がいるようだった。

 蝶たちよ、不審者の存在を知るか?

 蝶たちは俺の思いを知ってか知らずか、群れを使って文字を空中に描き、『不審者はお前だ』と言ってきた。下等な虫けらが。潰すぞ。

「姉ちゃん帰ろう?」

 少年は姉ちゃんと血縁関係があるようだった。

「なるほど。そうかわかったぞ。その姉ちゃんは少年と血縁関係があり、少年が蝶を捕獲する様子を見て微笑ましく感じていたのだな。それはそうと人喰いであり俺の獲物であるが」

 全ての事象を俺は知っているわけではない。俺は実際に見たものから、この世界の法則を導き出すことしかできない。

「はい」

 七色の羽を持つ蝶たちは俺の長い独り言に勝手に同意してきた。

「君たちの意見は聞いていない」

「ここはお姉ちゃんの人喰いとしての技能スキルを使用して食い止めるわ。先に逃げなさい」

「姉ちゃんを置いていけないよ」

 二メートル先ほどの距離で姉弟がお涙頂戴な寸劇をしていた。

 人喰いであるからと言って、通常の人間より筋力が特別優れているわけではない。

 ただ肉質が通常の人間よりも美味しいだけだ。

「蝶たちは人の生き血を吸います。協力しませんか?マンイーター・イーター」

 ここで蝶たちが少年を襲うならば、姉ちゃんの注意も蝶と少年に引かれる。

 勝手にやらせておくか。

「俺は人喰いを食べるグルメであって、吸血蝶には興味がない。勝手にしろ」

 俺VS姉ちゃんと少年VS吸血蝶の対決が今ここで始まった。

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