夜暮れを飛び降りて

四鈴 イト

プロローグ

 欲望は本来当人の内側にしか存在しないものであり、その姿形は観測できないものである。しかしその想いや強さによってはそれが外側に漏れ出し、無意識に当人に変化をもたらしてしまうことがある。例えるなら空腹時のいい香りがしたときに顔が弛緩したりするものが挙げられる。そして欲望が臨界点を超えると衝動として当人を乗っ取る形で欲望は姿を現す。

 つまり生物は理性によって欲望を抑え込んで日々過ごしている。もし私も含めあらゆる生物が理性によって欲望を制御していたらどれほど平和だっただろう。

今は日が沈み夜が暮れてきた、夜暮よぐれのころ。欲望を理性ではなく解放によって共生を選んだ者たちが乱舞する刻。ASF所属のリジェ・メルローもまた同じ時に欲望漏れ出す仕事場へと赴いていく。

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