『叫ぶ うどん』 前編

やましん(テンパー)

『叫ぶ うどん』 前編


 ロボットのきゅーさんが、おいしいおうどんやさんがある、と、教えてくれました。


 叫びたくなるくらい、うまいんだとか。


 きゅー(正式には、Q)さんは、ロボットですが、かなりのグルメです。(くわしくは、『巨大モール難民』参照)


 様々な味を分析し、相手の好みに必ず合う食べ物を推薦してくれます。


 ぼくと、きゅーさんは、長い付き合いなので、彼は、ぼくの好みは知り尽くしていました。


 きゅーさんが言うのですから、間違いはないと思います。


       🏚️

 

 その、うどんやさんは、けっこう、へんぴな場所にありました。


 町からは、かなり離れています。


 公共交通機関はないので、自動車とかバイクなどで行くしかありません。


 ま、うどんのために、自転車でやって来る強者はいるようですが、登り下りがかなりきついです。


 駐車場は、使っていない畑の一部でした。


 ぼくの、流星5号は、かなり古いですが、なんとか行き着きました。


 しかし、お店自体は、なかなか立派な建物です。


 大きな蔵みたいな感じです。

 

 とくに、変わった感じはなくて、玄関先にはきれいなサンプルと値段が表示してありました。


 『おわ。やすい!』


 あくまで見た目ですが、どんぶりがでかいわりに、お安い感じです。


 ほんとうかな。


 でも、内容自体は、ごくふつうの、おうどんやさんみたいです。


 すると、中から、若いカップルさんが出てきたのです。


 『わあ、びっくりしたわあ。こっちが、もう、叫びそうだった。ひとりだったら、逃げてたわ。』


 『まったく。しかし、ほんとに、うまかったなあ。あんなうまいうどん、初めてだあ。でもあと、ダイジョブかなあ。』


 『たべちゃったんだから、仕方ないわ。』



 む。なんだ、この会話は。



 まあ、はじめてのお店に入るのは、多少の勇気がいるものです。


 ドアは、手動ドアでした。


 しかし、わりに重たくて、頑丈です。


 ががががあ〰️〰️〰️☺️


 最初をうまく引っ張ると、あとは、すっ、と、軽くなりました。


 なにか、意味があるのかな。


 『あ、らっしゃい。どぞ。』


 威勢のいいかんじの、おじさんの声です。


 なかは、がらんとして、他にお客さんはいません。


 さっきのふたりで、はけたみたい。


 ぼくは、カウンターではなく、ふたり用の席に座りました。


 別にクレームが有るわけもなし。


 その声の主は、まだ、中年になったばかりくらいのお兄さんでした。


 『ども、いらっしゃいませ。なんにしますか?』


 ぼくは、かべに張ってあるお品書きを眺め、言いました。


 『あの、きつねうどん、並盛。』


 『きつね、並みね。』


 お兄さんは、ぱっと、厨房のなかに消えました。


 なかなか、上品な感じです。

 

 明るく、開放的。


 ただ、一枚の、大きな注意書きがありました。

 


 『叫び声がしても、問題はありません。』  



 『な、なんだ?』


 すると、代わりに、お姉さんが現れました。


 これがまた、ぜひ、実際にお姉さんにほしいくらいの、すごい美人さんです。


 まあ、おうどんですから、そんなに、時間はかからない。


 やがて、お姉さんが、でかいどんぶりを持って、やってきました。


 『おまちどおさま。』


 たしかに、でかいです。


 一般的などんぶりの、1.5倍くらいはあります。

 

 でも、そのどんぶりは、とても、上品なのです。


 『これ、並盛れすか?』


 『はい〰️〰️。そうです。』


 『美しいどんぶりですね。』


 『はい〰️〰️。これは、アランダ・バイゼンの、どんぶりです。』


 『ばいぜんの!』


 深く、しかし、不可思議な華やかさがある、ちょっと黒光りする、美しいどんぶりです。


 アランダ・バイゼンとは、世界的に名高い、高級うどんどんぶりメーカーです。


 『では。』


 ぼくは、こころして、お箸を取り上げました。




  『ヽ(;゚;Д;゚;; )ギャァァァ〰️〰️〰️』 




 『わあ!』



 なんと、おうどんが、叫んだのです。



 む、ちょっと、だだをこねたかな。


 



 

        おわり

 



  

 🍜 旨かった。麺に秘密があるみたいだが。しかし…………わあ! また、いつか! 食べましょう。



 

 


 




 


 

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