第1章 連続殺人

第5話 闇医者の密談

 アラバスタの肌を持つ、濡羽。しかし目の前に座る女性━━透螺とうらの肌はそれ以上に、不健康なほどに青白い。


「ちょっと気になる話があるのでね。濡羽に教えてあげようと思ってきたんだよ」


 ゆったりとした、余裕を含む独特な話し方をする。


「何でしょう?もしかして抗争かな」

 ある意味ずれていて、ある意味で的を射た発言。


「抗争、というよりロンペルと揉めそうになっていてね。まぁ、何かあったら頼むよ。闇医者様?」


 悪戯好きの少女がするように、唇に人差し指を当てて微笑んだ。


 プルルルル、と電話の呼び出し音が鳴る。


「茉仁荼、抗争するってほんと?」


「え、ねえさんどこ情報?」


「本気になれば……っていうか元からロンペルの機密情報くらいなら知ってるけど」


「くらい……?普通にヤバいと思いますけど」

 ドン引きしている。からかいがいのある後輩(30歳)だ。


「まぁ、明日カフェでも行こうよ」


「わかりましたよ。では明日」


 今回の成果━━抗争両サイドの主からの情報収集完遂および約束取り付け。


「久しぶり、こんなとこでいいの?」

 少女はカフェで零した。


「 いいですよ。雰囲気があって」


 少女と10は違うであろう男が言う。かれ色の短髪、白藤の瞳の優男。


茉仁荼まにとがいいならいいや。で、どういうこと?コシュマールと抗争って。無謀にもほどがあるでしょ」


「いや、俺はそんなつもりないんですけどね。 幹部達がそうでもなくて。 白雨しらめとも話したいんだけどできそうですか、ねえさま」


 しばらくうーん、と悩んでから

「いいんじゃない?」

 と言って電話を掛け始めた。


「もしもし、透螺とうらさん?茉仁荼が貴女に話があるってよ」


「そうなの?じゃあ行かせてもらおうかな。十分待ってくれるかな」


「わかりました、お待ちしております」

 ふふ、と笑んで彼女はスマホをおく。


「優しいお姐さまに感謝してよね」


「はいはい、ありがとうございます」


 ぷくーっと頬を膨らませ、

「雑すぎるでしょ」

 と愚痴った。


「パンケーキ奢ってよ、茉仁荼」

 甘えるように少女が言う。


「ほんとに奢らせてくれることないでしょ」


「まぁねー、まだ私はそこまで堕ちてないもの」


 結局頼んだパンケーキを頬張りつつ幸せそうにしている。


「遅くなってすまないね」

 コシュマールの現首領ボス━━白雨透螺しらめとうらの到着だった。


「さぁ、密談と洒落込もうじゃないか」

 にこ、と笑う茉仁荼。


「あ、その前にもう一人いるね。魅空みあ様、そろそろ出てきません?」

 濡羽ぬればが言う。


「気付いてたのね、濡羽」


 沈香茶じんこうちゃのボブヘア。雲居鼠くもいねずの瞳と墨色の瞳孔の、貫禄を湛えた女性。


「魅空、いたの?」

 旧友である茉仁荼が問う。


「いたら悪い?」

 と言い返す。


「お体は大丈夫なのですか?」

 透螺が尋ねる。


「んー、大丈夫よ。気にすんな!」


「魅空さま、それで本日はどのようなご用向きで?」

 濡羽が尋ねる。


「いや?裏社会の歴史に残る密談には先代として参加したいじゃない?」


 ひそやかに、何かを味わうようにして。彼女はそっと笑う。


 現在公開可能なキャラクター情報


 玽条茉仁荼くじょうまにと

 現・ロンペル頭領。濡羽の後輩的存在だが30である。魅空みあとは旧知の仲である


 組織解説

 ロンペル━━ギャングの集まりが大規模化した、コシュマールに次ぐ勢力。スペイン語で破壊を意味する。現頭領は玽条茉仁荼くじょうまにと


 コシュマール━━マフィアとして勢力拡大を続けてきた組織。裏社会最大勢力であり、現首領ボス白雨透螺しらめとうら

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