壮年期 47
…支部に着いても建物の中に女の姿は無く…とりあえず支部の中で待機する事、約一時間後。
「…お。もう着いてたのか。早かったね」
「どうでした?」
「今のところ異変は起きてないようだ。異変の痕跡は見受けられたけど」
女がやって来て意外そうに言いながら合流すると少女が確認し、女は調査の結果を報告した。
『む。この気配は…』
「…ん?」
「「!!?」」
これからどうしたものか…と少しの沈黙が流れると急に闇の精霊である美女が魔法陣から勝手に出て来て呟き、分身の俺が振り向くと少女と女の二人が美女を見ながら同時に驚愕する。
「「 誰!?」」
「何の気配も無く急に現れた…!?私達に一切気づかれずに…!?」
「一体いつからそこに…!」
「…呼んでないんだが?」
少女と女の二人は美女を見ての反応と言葉が被ると驚いた様子のまま美女から目を離さずに呟き、分身の俺は呆れを通り越して微妙な感じで言う。
『久方振りの魔族の気配がするぞ。南西…』
美女は思わせ振りな事を言ったかと思えば魔力が切れて維持出来なくなったのか話してる途中で姿が消えた。
「いやいや。思わせ振りな事だけ言って消えるんじゃないよ」
分身の俺はツッコミを入れるように言った後に空間魔法の施されたポーチからゴブリンの魔石を取り出して握り潰し、魔力の回復にあてた後に闇の精霊を召喚するために詠唱する。
「…これは…!!」
「まさか…!精霊術…!?」
『いやぁ済まぬのぅ。咄嗟の事ゆえ魔力の配分を間違えてしもうた』
召喚術で床に魔法陣が展開されると少女と女が驚愕しながら分身の俺をガン見し、魔法陣から現れた美女は笑いながら非を謝ってきた。
「あんた…!精霊術師だったのか!?変化魔法の使い手のはずじゃ…!」
「まあ精霊と契約してるだけだし。それより『魔族』ってのは?」
『人間の言葉で言えば南西90kmほど先の集落に気配を感じるぞ。魔族については実際に見てみるがよい。それと妾よりも精霊王に尋ねる方が有益な情報が得られよう』
女が驚愕しながら確認するように聞き、分身の俺は適当に返して尋ねるが美女は魔族の場所を教えるも疑問には答えてくれなかった。
「南西90km…行ってみましょう」
「…そ、そうだね」
「残念だが魔力の消費が重いから帰ってくれ」
『うむ』
少女の少し考えての指示に女が了承し、分身の俺はこのままだと直ぐに魔力が切れてしまうので移動前に美女を送還する。
…そして王都の外に出ると女がドラゴンに変身して少女と分身の俺を掴んで目的地へと運んでくれた。
「降ろすよ」
「え?きゃあああ!!」
「いやいや……よっと」
…上空でいきなり女が変化魔法を解き、そのまま地面に落下するので少女が悲鳴を上げ…
分身の俺は呆れて呟きながら少女を掴んだ後に女も抱えてスタッと地面へと着地する。
「いきなり危ねー真似すんなよ。馬鹿か」
「あんたならどうとでも出来ただろう?」
「そりゃそうだけどさ…」
「あ、ありがとうございます」
「ははっ、なにカマトトぶってんだいアンネローゼ。あの程度の高さからじゃ傷一つ付かないくせに」
分身の俺が苦情と文句を言うと女は反省の色ゼロの余裕の態度で返すので納得いかずに呟くと少女がお礼を言い、女が笑って弄るような事を言う。
「それでもあんな高さから急に落とされたらびっくりするでしょ。あなたは本当に昔から…」
「はいはい。とりあえずこの近くで異変が起きてる、って事でいいのか?」
少女の苦情と呆れたような呟きを軽く流した女は近くの村を指差しながら確認した。
「さあ?行ってみない事にはな」
「…ではいきましょうか」
分身の俺が適当な感じで返すと少女が合図をして村の中へ向かって歩き出す。
「…ん?」
「なんか騒がしいって事は…」
…村の中に入ると少し騒ついているような雰囲気なので分身の俺らは早足で騒ぎの下へと向かう。
「…おっ」
そして畑の方に行くと小悪魔だかデビルだかの羽が生えた黒くて小さい人型の生き物を発見。
「…アレが新種の魔物か…」
「…ゼルハイト様、あの魔物に見覚えは?」
「無い。もしかしたら図鑑に載ってるかもしれないけど…ダンジョンの外に居る時点で魔物じゃない可能性が高い」
女が意外そうに呟くと少女が確認してくるので分身の俺は否定した後に予想を話す。
「って事はアレが精霊の言ってた『魔族』ってやつなのか?」
「多分。まだ断言は出来ないけど」
「…周りの人達の迷惑になりますし…退治しましょう」
「そうだね」
「そうだな」
女の確認に分身の俺が適当に返すと少女が真っ白な杖を取り出して指示を出し、女と分身の俺は了承して魔族とやらに近づく。
「キキキー!」
「なんか喋れよ。ただの魔物か?言葉は通じんのか?」
「キキッ!」
「人の言葉が通じるわけないじゃない」
小さな羽をパタパタと動かして浮いている魔族に分身の俺が話しかけるも返答は無く、女が呆れたように言ってワーウルフの姿に変わる。
「キー!」
「ほお…武器持ちか」
「だから?」
「キッ…!」
魔族は臨戦態勢に入ってフォークのような三又の槍を取り出し、分身の俺が意外に思いながら呟くも女はつまらなそうに呟き…
素早い動きで魔族を鋭い爪で切り裂くと簡単にバラバラになって倒れた。
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