壮年期 13

…それから北東の廃村とかいう場所に向かっていると途中で同じ方向へと馬を走らせている一団を発見。



「…アレは怪しいな…」



とりあえず分身の俺は通り道に先回りして地上に降り、怪しい一団を待ち伏せする事に。



「おーい!おーい!」


「…なんだ?」


「おい!止まれ!」



分身の俺が合図するように大きく手を振って声をかけると先頭の奴らが怪訝そうな顔をしながらも馬と後続を止める。



「王女の誘拐に成功したんだって?伯爵から依頼があるんだが」


「どこで知った?まさか見張ってたのか?」



分身の俺のカマかけにおそらく頭目と思われる ゴツいナリの男性が馬に乗ったまま近づき、怪訝そうな顔をしながら問う。



「俺は君達が依頼を受けたのとは別の伯爵の使いでね。金を倍払ってでも連れて来いと言われてる。とりあえず当主はその伯爵と今交渉中」


「スキュリュ伯爵か…ふん。一度金を惜しみやがったくせに今更倍払うと言われてもな」


「なんでも三倍までなら出しても良いんだと。王女が無事で綺麗な身体のままなら…って条件だが」


「「「三倍!?」」」



分身の俺がそれっぽい嘘をでっちあげて言うと男性は面白くないように鼻で笑って拒否るように返し、後出しで更に嘘を重ねて王女の状態を確認するように告げると周りの男達が驚く。



「三倍だと?本当か?」


「王女の状態次第で。一応金も預かって来てるけど…」



男性の確認に分身の俺は念を押すように言って共通金貨を一枚取り出して見せる。



「なぜ金貨なんだ」


「新参の俺を信用出来ない、ってんで換金に足が付きやすい金貨を渡された。仕事を頼まれたのにここまで疑われるなんて酷い話だと思わない?」



男性が通貨について疑問に思ったように聞いてくるので分身の俺は呆れたような様子で嘘を言い、同意を求めて金貨を指で弾いて渡す。



「…確かに本物だな。本当に4500万分の金貨を用意出来るのか?」


「その前に王女の姿を見せてくれ。条件に合わなきゃ倍までしか出せん」


「おい、女を連れて来い」


「分かりやした」



男性は金貨を触ってじっくりと見て真偽を確かめると金貨を指で弾いて返却し、金額の確認をしてくるが分身の俺が取引をするように返すと周りの男達に指示を出した。



「…女にはまだ誰も手を出していない。捕まえる時に抵抗されたから多少手荒な真似をしたが殴っただけだ」


「素手で?」


「ああ、素手と棍棒で腹辺りと背中を殴って気絶させた。痣が出来てるだろうが大して目立たないはずだ」



男性の説明に分身の俺が確認すると攻撃方法と攻撃した場所まで詳細に教えてくれる。



「連れて来やした」



男に連れて来られた姫は両手をロープみたいなもので縛られていて、逃げられないようにか足枷のようなものも付けられていた。



「…!?」



口も猿ぐつわのように布で縛られてる姫は分身の俺を見て目を見開いて驚くも状況を察したのか直ぐに表情を戻す。



「…ふむ…服がなんか少し汚れてるけど拐った時のまま?」


「ああ。地面に倒れた時に汚れたんだろう。俺達がこんな上等な服を持っているわけが無いからな」



分身の俺が全身を確認するように見ながら聞くと周りに居た男達の一人が答える。



「…なるほど…これなら…」


「どうだ?」


「…コレ、耳栓付けないと。これ以上は聞かれたらマズイ」


「好きにしろ」



分身の俺の呟きに男達の一人が食い気味で催促するが分身の俺は結果を言う前に耳栓を取り出して姫に付ける事を提案すると男性は興味無さそうに言う。



「…これなら全額払える。その前に取引現場を見られたら面倒だから目隠しもしてくれ」


「おう!分かった」


「…じゃあ確認よろしく」



姫に耳栓を付けた後に条件を満たしてる事を告げ、ハンカチのような薄手の布を取り出して要求すると男達の一人が受け取って姫の顔に巻くので分身の俺は金貨を袋に入れて渡す。



「……おい、金貨が500枚あるぞ。50枚多いんじゃないか?」


「ああ。ソレは口止め料。君達は誰とも会わなかった、誰とも取引しなかった…伯しゃ…じゃない、とある貴族について何も知らないって事で」



男性の指摘に分身の俺は姫を肩に担いで意外に思いながら金による口止めを図った。



「ふん…そこまでするか…まあいいだろう。野郎共帰るぞ!今夜は宴だ!」


「「「「おおー!!」」」」



すると男性は面白くなさそうに鼻を鳴らして呟くも了承して大声で男達に指示を出し、直ぐに馬を走らせて去って行く。




「…さて…と。どうしたもんか…」



分身の俺は盗賊団から姫を取り返したはいいが、ライツの王都に行くか猟兵隊のいる村に行くかを悩んで呟く。



「…うーん…とりあえず近くの村か町にでも行こうか…いや、もしかしたら本物の伯爵の使いが廃村に居たらマズイな…」



とりあえずその場を離れるように歩きながら姫を解放するための安全な場所を考えた。



「…王都かぁ…やっぱり王都しかないよなぁ…でもなぁ…王子…じゃなかった、王様が黒幕だったら面倒だし危ない伯爵が居る可能性もあるし…」



姫にとっての一番安全な場所はやっぱり猟兵隊の居る村なのだが…



また王都への移動中に襲われたらたまったもんじゃないので直接送る事を考えるも最悪の事態を想定してしまうとやはり二の足を踏んでしまう。

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