壮年期 3
その二日後。
今度はアポ無しで第三王子が拠点にやって来た。
「…これはまた急ですね。どうなされました?シャルドー王子」
「急に押しかけてしまってすまない、クライン辺境伯。伯が兄様達の勧誘を断ったと聞いて真偽を確かめに来たのだ」
本部の建物の入口で出迎えて挨拶がてら用件を問うと王子は申し訳なさそうな顔で謝罪した後にアポ無しで来た理由を告げる。
「ええ。自分は正直、国が良くなればそれで良いので結果で判断すると返事を保留しましたが…」
「どうかクライン辺境伯に俺の後ろ盾になって欲しい!」
「…続きは部屋でしましょうか。こちらです」
俺が肯定して理由を教えると王子が突然かなり迷惑な要求をしてくるので俺は外でする話じゃないな…と自室へと案内した。
「…伯も知っての通り俺は兄様達と違って王妃の子では無い。ゆえに周りから『第三王子』と呼ばれているものの継承権は妹である第六王女のシルヴィアよりも低い」
「昔ならその影響は強かったかもしれませんが、今はおそらく出生とか関係無く実力を重視されているのでは?ヴァネッサ王女も腹違いですが王子達と王位を争っていますし」
自室に入ると直ぐに王子が弱音のような事を言い出し、俺は否定するように第四王女の現状に言及する。
「ヴァネッサはウィロー…いや、今はロマズスル辺境伯の派閥の支持を受けているからだろう。だが俺には…」
「…少し厳しい事を言うようですが、シャルドー王子は存在感が薄いんですよね…第一王子は政務に長け、第二王子は軍事に長けている。第四王女は外交に長けていると聞きますが、シャルドー王子についての噂はこれといって全く聞きません」
王子の発言と自虐的な呟きに俺は反応に困りながら貴族達から大々的に支持を得られていない理由を話す。
「…それは…」
「王たる者ならば自分の仕事振りを周りに知らせる事も重要になります。居ても居なくても変わらないのならば傀儡と疑われて国民から不信感を買いますし」
「…自分の役割を大々的にアピールしろと?」
言い淀む王子に俺は面倒くせー…と思いながら自分の考えを伝えると不満そうな顔で確認してきた。
「時には必要になります。王とは国の象徴であり、縁の下の力持ち…周りのサポートが上手なだけならば別に王である必要はありませんから」
「…国の象徴、か」
「逆に周りの補佐が得意であればその部分を強調するのがよろしいかと。自分が居るから周りの部下達が仕事を早くこなせて成果を残せる…という能力をアピール出来れば十分王の器足り得るので支持する貴族も増えると思います」
俺が厳しい言葉をかけると王子が考えながら呟くので俺は悪印象を残さないように口八丁で誤魔化すかのような助言をする。
「…なるほど。ありがたい助言、感謝する」
「幸いな事に今なら『国を繁栄させる王に相応しい』という結果さえ出せれば王位を継げそうなので頑張って下さい」
「…もし、俺が王になった時には協力してくれるか?」
「国のためになるのなら喜んで」
王子の納得したような発言に俺が話を締めるように応援すると王子が仮定の話をしながら確認してくるので俺は条件付きで了承した。
「そうか。…まだ話していたいが次の用事があるゆえ、ここらで失礼させてもらう」
王子は安心したような顔を見せると時間を確認してソファから立ち上がり、残念そうに挨拶する。
「分かりました。応援しています」
「ああ、伯の期待に応えられるよう努力を尽くすつもりだ」
俺が引き止めずに適当に挨拶を返すと王子は応えるように返して帰って行く。
「…また勧誘ですか。こうも短い期間で次々と王子が来るのなら王女も来そうですね」
…建物の入口で王子を見送ると馬車が走って行った後にお姉さんが建物の中からヒョコっと顔を出しながら言う。
「どうかな?他のところに手を回してるだろうから俺のところに来る余裕なんて無いんじゃない?」
「まあヴァネッサ様に王位を継ぐ気は無いらしいですが…派閥の人達からしたらやる気が無いと困りますし」
「今動き回ってるのも誰が王になっても自分が不利にならないように立場を固めてるんでしょ?派閥の奴らが余計な事するから大変そうだな…」
俺がお姉さんの予想に否定するように言うとお姉さんは神輿として持ち上げてる貴族達が勝手に動いてる…的な事を暗に含め、俺は王女に同情するように呟く。
「特にウィロー伯爵…ではなく、ファーン男爵は返り咲くために必死らしいですよ?」
「…これから返り咲くのは無理くない?最低でも俺か東西の辺境伯二人、侯爵の領地を奪わないといけないし…今んとこ可能性があるのはロマズスル辺境伯の所だけど味方で現派閥のトップだからなぁ」
世代交代でワンチャン狙う以外に方法は無いと思うけど…と、お姉さんの噂話を聞いて俺は否定的に返して今から返り咲く方法を予想する。
「とりあえず国政の中枢や要職に就く狙いがあるのでは?」
「ソレもお家がしっかりしてないと何かあったら直ぐに蹴落とされるでしょ?」
「…あー…確かに…」
お姉さんの適当な感じの予想に俺が予想で返すとお姉さんは納得したように呟いた。
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