青年期 362
「…面白い。私もココを活動拠点にする」
「えっ!?」
「本当は総本山か本部に居座ろうと思ったが気が変わった。他にどんな面白そうな魔道具を開発してるかアンネリーゼに聞いてみよう」
「今も部屋に居る?」
「あ、はい。こちらです…」
女が少し考えてニヤリと笑いながら言うとお姉さんが驚き、女は気にせずにココの支部に留まる理由を話すので俺が確認するとお姉さんは肯定した後に女を見ながら微妙な顔をするも案内してくれた。
「…坊ちゃん、流石に断った方がいいのでは…?『厄災の魔女』と恐れられ、かつて世界中の人々を恐怖に陥れた人ですよ…?問題を起こしてからでは遅いと思いますが…」
お姉さんは案内中に俺を手招きして呼ぶと耳元でコソコソと小声で女を追い出すよう働きかけてくる。
「…確かに。この拠点内では絶対に暴れずに大人しくしててよ?せめて暴れるんならどっか遠くに連れてってからやってくれ」
「分かった。あなたに迷惑をかける気は無いから安心して」
「それなら問題無いよ。一応俺もこの拠点内の人達の命を預かって安全を管理する立場だからさぁ、念のために言っとかないといけないし、何かあったら対処しないといけなくてね」
「分かってる。これでも私も前は魔法協会の代表者を務めていたから十分に理解出来てる。大丈夫、心配要らない」
俺がお姉さんの意見に同意して釘を刺すと女はアッサリと条件を受け入れるように返し、必要無いと分かっては居るけどもう一度釘を刺すと女が頷きながら理解を示す。
「…だといいんですが…」
「…まあ本人がああ言ってるんだし、様子を見るしかないね」
「…そうですね…」
お姉さんは不安そうに心配しながら呟き、俺が小声で宥めるように言うと納得いかない顔をしつつも認めるように呟く。
「…マーリン様、今お時間よろしいですか?」
「入るよ、アンネリーゼ」
お姉さんがドアをノックして確認を取ると女は返事を待たずにドアを開けて中に入った。
「…メイディア?どうしたの?」
「私もココを活動拠点にする。ココでは騒動は起こさずに大人しくしてるつもりだからよろしく」
部屋の中で書類作業をしていた少女が女を見て驚きながらも不思議そうな顔で尋ねると女は強引に自分の意見を通すような感じで言う。
「…ソレは…私が決める事じゃなくてゼルハイト様の許可が無いと…」
「許可は取った。だから一応報告しとこうかと思って」
「なるほど。だからゼルハイト様も一緒に」
「あと聞きたい事が山ほどある。仕事手伝うから付き合ってもらうよ」
「貴女の場合、嫌だと言っても聞かないでしょう?いつも人の都合はお構いなしなんだから…」
少女は俺を見ながら言い淀み、女の返答を聞いて納得すると女がニヤリと笑ってまたしても強引に話を進め…少女が若干呆れながらも少し嬉しそうな感じで返す。
「んじゃ、俺は冷蔵庫を見に行こうかな」
「あ、私も行きます」
用件は済んだので冷蔵庫や冷凍庫の確認に行こうとするとお姉さんもついて来る。
「そういえば『レンジ』の方も後は時間調節機能を付けるだけ、と言ってました」
「おおー。料理を温めるだけでも出来ればありがたいもんだね」
「流石に人の魔力で動かせるようになるにはまだまだ時間がかかるようですが…」
「まあしょうがない。本来なら科学の知識を動員させて電気で動かすものだし…ソレを魔力仕様にするだけでも凄い事だよ」
お姉さんの報告に俺が感心するも完成形までは遠い…的な事を言うが俺は協会員達の頑張りを褒めるように返す。
「でも今の段階ではとても日常的に使える物ではありませんからね…坊ちゃん以外は」
「ゴブリンの魔石一つで二、三百万ぐらいだから月の維持コストが高すぎて金持ちでも運用は難しいだろうし」
お姉さんが困ったように笑いながら現時点での問題点を挙げ、俺は同意するように金の話をした。
「そもそも魔法協会が売却するとしても魔石はその値段の倍近くになると思います。価値を下げないために値段も上げるでしょうし」
「あー…なるほど。だから俺の事は秘匿事項になってんのか」
「ソレは、まあ…その意味も含まれてるかもしれませんが、一番は供給の確保と世界の安全のためですよ」
お姉さんの予想に俺は今更ながら他の意味について思いついたので呟くとお姉さんは若干肯定して本来の理由について話す。
「世界の安全のため、ねぇ…」
「危ない思想を持つ組織とかに流れると厄介な事になるじゃないですか?坊ちゃんから買い取った魔石を更に高く売るためなら気にしない人も絶対出てきますし」
「…確かに反政府組織とか過激な思想を持つ団体とかが魔石を手にしたら世界が荒れるだろうな…」
「そうならないために魔法協会の活動の一つとして魔石の管理が含まれています。今や『魔石を手に入れたら魔法協会へと報告する』というのは半ば義務のようになってますし…世界中に周知されているので一度も聞いた事が無い、と言う人は赤ちゃんや子供以外居ないと思ってます」
俺が大袈裟だな…と思いながら呟くとお姉さんは説明するように話し、納得するとお姉さんが更に魔法協会の活動の事について語り出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます