青年期 355
「そこまでだ!」
「…ん?待った!中断!一旦中断!」
女が再び形態変化して竜人状態になるとどこからか制止するような大声が聞こえ…
声のする方を向くとおそらく中央騎士団であろう騎士達が集まっていたので、分身の俺は慌てて女に攻撃を中止するようジェスチャーを交えながら止めにかかる。
「邪魔者なんて巻き込まれても当然。人の戦いの邪魔をするなら相応の覚悟をしてもらわないと」
「いやいや!待て待て!ココで部外者巻き込んだら俺ら二人だけの問題じゃなくなるから!どうせまた戦う機会ならいっぱいあるし、何度でも受けて立つからこの場は収めてくれ!」
女は冷たい声で外野を全く気にせずに構わず戦いを続けようとするので分身の俺が必死に止めて説得すると…
「…しょうがない…」
なんとか受け入れてくれたらしく女は仕方なさ気に呟いて変化魔法を解除し、元の人間の状態に戻った。
「ふう…」
「クライン辺境伯、コレは一体どういう事だ?何故王都に近い場所でこのような規模の戦いを行ったのだ?」
分身の俺が安堵の息を吐くと騎士団長であろう男が責めるような感じで事情聴取でも行うみたいな雰囲気を出しながら尋ねる。
「申し訳ありません。少しお互いに楽しくなり過ぎてしまって…」
「貴君らの戦いの余波で王都では少なくない数の怪我人が出たんだぞ。幸い微傷や軽傷だけしか報告には上がっていないが…ここまでの規模に発展するようならばもっと広く、適正な場所が貴君の領地内や南東にあるのだからそういった場所で暴れてもらいたいものだな」
「返す言葉もございません。面目ない…」
分身の俺は謝罪から入って言い訳するように理由を話すと男が呆れたように被害が出た事を告げ、説教のように反論の余地が無い正論を言うので素直に受け止めて反省の言葉を返す。
「…しかし…一体どうやったらこんな惨状になるのか…しかも貴君らの姿を見るだけでは戦いがあったとは到底思えんな」
用件が済んで冷静になったのか男が周りを見ながらドン引きするように呟いて服に汚れすら無い女や分身の俺を見ながら微妙そうな反応をした。
「まあいい。とにかく、次は気をつけてくれよ」
「はい。ご迷惑をおかけしてすみませんでした」
男はあまり長居したくないからか話を切り上げると釘を刺すように注意し、一万近く集まってるであろう騎士団を引き連れて王都へと戻って行く。
「…もう良い?」
「いいけど…場所移動しろって言われたから第四ラウンドはまた別の場所でやる事になるよ?」
「じゃあ仕切り直しましょう。このかつてないほどの屈辱や怒りは次の時のために取っておいてあげる」
「んじゃ、今日は終わりね。次いつやるか決まったら教えて」
女の確認に分身の俺は微妙な感じで肯定しながら確認し返すと女がありがたい提案をしてくれるので受け入れて女に選択権を委ねる。
「明日。明日直ぐにやりましょう」
「明日って早いな…まあいいけど。場所はどうする?さっき聞いてたから分かると思うけど、北と南東のどっちかが選べるよ」
「近ければどこでも」
女は考える事もなく速攻で最短の日付を告げ、分身の俺が微妙な感じで笑いながら呟いて場所について確認を取るも適当な感じで返された。
「んじゃ、南東か…明日って事は今日は泊まっていくでしょ?」
「…いいの?」
分身の俺が場所を決めて尋ねると女は意外そうな表情になって確認してくる。
「いっぱい動いた後は飯が美味いよー?美味い飯を食えば戦いなんてどうでもよくなるって。まあ寝て起きるまでの間だけ、だけど」
「じゃあ…せっかくの誘いだから、お言葉に甘える」
分身の俺の発言に女は少し考えた後に申し出を受けるので一緒に拠点まで戻る事に。
ーーーーー
「…おっと。ちょっとココで待ってて。直ぐに戻って来るから」
「分かった」
拠点内の本部の建物に入ったところで分身の俺は用事を思い出した振りをして女をエントランス的な場所で待たせ、自室へと向かう。
「…ただいまー」
「お。派手にやったようだな、コッチまで影響来てたぞ」
分身の俺が念の為に挨拶をしながら自室に入って来るので俺は笑って返し、ポーチを受け取って分身を解く。
「さて、迎えに行くか」
俺は自室から出て女が待っているエントランスへと向かった。
「お」
エントランスに行くとちょうど魔法協会の代表者である少女が来てたらしく、二人で会話していてその様子をお姉さんと女性が警戒した様子で見ている。
「おかえり。早かったね」
「簡単な確認だけでしたので」
「今のところ何の被害も確認されてないみたいだ」
「お。なんか王都では軽く被害が出たとかで中央騎士団がゾロゾロと確認に来てたよ」
俺が声をかけるとお姉さんが理由を話し、女性が拠点内を調べた結果を報告するので俺は意外に思いながらついさっきの事を軽く話した。
「そうなんですか?」
「それでちょっと騎士団長に怒られた。周りの迷惑を考えろ、って…いやー、俺も楽しくなると周りの事なんて頭の中から消え去るからさぁ」
「中央騎士団の騎士団長っていうと…ベルドット子爵家の?」
「そうそう。今年引き継いだばかりだというのに問題が起きまくるから大忙しで大変だろうね、俺は大人しく謝って済ませたよ」
お姉さんの意外そうな感じでの問いに俺は笑って言い訳するかのように返し、女性の思い出すような確認に肯定しながら穏便に済ませた事を告げる。
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