青年期 351
「…昔の変化魔法の使い手は外見詐欺な人達ばっかだったのか…」
「『若いままでいたいから』『若さを取り戻したい』って理由で変化魔法を学ぶ人達も大勢いたんだから」
「へー。まあそりゃそうか」
「…さて。お喋りはこれくらいにして続けようか」
分身の俺が意外に思いながら呟くと女はまだ変化魔法の歴史が闇に葬られる前の当時の事を話してくれ、分身の俺の納得したような反応を見て戦いの再開を告げる。
「そうだね。いつでもどうぞ」
「…この私が格下の扱いを受けるなんて初めてだ。新鮮な経験だけど、感情が逆立つ…『後悔させる』と激情が湧き立つ」
「そんなんいいから早く来いよ。こっちから仕掛けようか?」
「ふ、ふふふ…」
分身の俺は賛同して先手を譲るも女は不快そうな感じブツブツと呟き、催促した後に気を遣って確認すると女が笑って炎を纏う。
そしてまたしても蜃気楼による残像を出しながら分身の俺の周りをグルグルと回り出した。
「ぐわー…コレ、キツイわー…打撃と粉塵爆破の選択を迫られるせいで意識が割かれて本体を見失う」
多分女の必勝戦法であろう技に分身の俺は完全に翻弄されながら周りを警戒して弱音を吐く。
「…ん?げっ!」
粉塵が舞ってないから打撃か?と思いながらふと上を見上げるとビー玉のような大きさの火球が大量に降ってきている。
「隙あり」
「ぐっ!」
…分身の俺が見上げてる最中に後ろから女に背中を殴られ、衝撃波が身体を突き抜けるような感覚と共に内側から灼かれるような痛みが。
すると女は素早くその場を離脱して上から降って来た火球が分身の俺や地面に当たって大爆発を起こす。
「げほっ、げほっ…今のは流石にちょっとキツかったな…」
「…やっぱり火力が少し足りなかったか…まあ初めてにしては上出来だったと思おう」
「身体の内側を直接火で焼こうなんて中々にエグい事を考えるねー、まあ失敗したわけだけど」
分身の俺がむせて咳をしながら呟くと女は反省して自分を慰めるかのように呟き、分身の俺はとんでもない攻撃の発想力を褒める。
「…周りのこの惨状で未だに無傷の状態なのが信じられないんだけど。あなた本当に人間なの?」
女は度重なる爆発で平原が見る影もなく荒れ果てた死の大地状態になってるのを指しながら分身の俺を人外扱いしてくる。
「正真正銘の人間だよ。ただ耐久力が人よりちょっと高いってだけで人外扱いはやめてもらいたいな」
「そう。でも人間扱いしてたらあなたを倒せないみたいだからココからは認識を変える」
分身の俺が否定的に言うと女は流すように返して覚悟を決めたのか雰囲気が若干変わった。
「はあああ!」
女は気合いを入れるためか力を溜めるためか叫んで炎を纏うと炎の色が赤から黄色になる。
「…温度が変わったか…ん?おっと」
「はっ!」
分身の俺が予想を呟くと女の姿が消え、多分後ろだろうと想定してその場から直ぐに離れると女が地面が地面を殴って衝撃波と炎を出す。
「くらえ!」
「おわっ!」
そして女は腕を横に振って握った何かを投げつけるような動作をすると、ビーズのような小さな火球が大量に分身の俺の近くで連鎖的に大爆発を起こした。
「まだまだ」
…さっきまでと違い女は様子を見る事なく直ぐに次の攻撃に移って分身の俺の足下から火柱が立つ。
「けほっ…」
火柱が爆発した後に分身の俺がむせて咳をすると女がさっきのように残像を出しながら分身の俺の周りを回っている。
すると赤色の埃のようなものが周りに舞い、分身の俺が粉塵爆破だと気付いた瞬間に大爆発が。
「どうせ死んでないんでしょ!」
「ぐっ!」
度重なる爆発で煙や埃がもうもうと辺りに立ち込める中、女が追撃で分身の俺の腹を殴り…
衝撃波が身体を突き抜けた後に炎に包まれた。
「…人体の内部を燃やすって予想以上に難しい…天才と謳われた私でも習得には時間かかりそう…」
女は距離を取るように離れて呟くとビー玉のような火球を大量に飛ばし、またしても分身の俺を中心に大爆発が起きる。
「…ちょっと、いくらなんでもおかしいでしょ。完全に殺す気だったのに…」
「…いやー、中々に辛かった。こう見えても結構痛かったよ」
深さ2mほどの大きなクレーターを見下ろしながら女が信じられない様子で呟くので、分身の俺は見た目以上にダメージを受けていることを伝えた。
「…もっと威力を上げないと…ここまで耐えられたのはあなたで三人目よ。一人目二人目でも瀕死に近かったのに…」
「…俺以外にもこんな苛烈で殺意全開の攻撃を耐えられた奴がいたんだ。先人達は凄いもんだ」
「…その二人は変化魔法の達人だった。一人は私の師で、もう一人は弟子」
女の微妙な顔での賞賛するような発言に分身の俺が軽く驚いて感心しながら返すと聞いてもないのに女はその二人が誰かを話し出す。
「へー、辛い過去もあったもんだねぇ」
「…今の時代でもあなたなら分かるでしょう?磨き上げた技術は使いたくなるもの…自分の持てる力や技術を全てを出し尽くして戦いたい気持ちが」
「分かる分かる。めちゃくちゃ分かる」
分身の俺が同情するように呟くと女は戦うに至った経緯をそれとなく間接的に話して同意を求め、分身の俺は頷きながら激しく同意する。
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