青年期 324

「…うまうま」


「そりゃ良かった」


「…で、謀反を起こした理由って結局なんだったの?」



ようかんを一本まるごと手に取ってかじりつきながら満足そうに呟く女の子に俺が適当に返すとさっきの話の続きを尋ねてくる。



「ああ、それなんだが…」



俺は今さっき辺境伯の青年に話したのと同じ内容の話をする事に。




ーーー




「…げー…そりゃ謀反も起こされるって…」


「政府側を擁護できる要素が一切無いからな」


「ってか宗教…聖職者とかの立場ってどこの世界でも影響力強くない?帝国でも結構な要職に就いてて道徳心の無いような振る舞いするのとか居たし」



女の子の呆れたような呟きに俺が肯定すると疑問を聞きながら帝国の情報を話す。



「まあ一応人に救いを与えるって名目…いや、目的だからじゃね?」


「『信じる者は救われる』ってやつかぁ…教えを守る聖職者が聖人ばかりならソレも納得いくんだけどねぇ…」



俺は口が滑りそうになりながらもなんとか持ち直して返すと、女の子が皮肉や嫌味を言うような感じで実態に即してない現状を非難するように呟く。



「ま、どんな組織でも一枚岩ではいられないからな。聖人だからこそ、その考えにつけ込んで利用してやろうって悪人が出て来て擦り寄ってくるんじゃねぇの?」


「うーん…」


「帝国でもそういうのが居るんだろ?」


「『居る』というより『居た』。過去形。聖職者って立場を利用して悪辣な事をしてた人達は私やディバルザー元帥達で権限を使って戦場に行かせて暗殺したし」



俺の適当な予想に女の子は納得いかないような感じで水ようかんを食べながら呟くので、帝国の事情を尋ねると女の子が物騒な事を言い始めた。



「おいおい…暗殺って。穏やかじゃないな」


「一応警告しても無視された時の最終手段ね、あくまでも。…まあ改めた人なんて一人も居なかったけど」



人間、一度腐るともう元には戻れないのかもね。と、女の子は誤解を解くように説明した後に適当な感じで悟ったような事を言う。



「…しっかし戦場送りで暗殺って…良く成功したもんだな。かなり激戦の最前線にでも送ったのか?」


「まさか。安全な後方部隊を任せて安心してるところを銃でズドンだよ」


「…一回しか出来ない荒技じゃね?それ」



俺がイチゴ大福を食べながら以外に思って予想を聞くと、女の子は否定してまさかの荒技を話してくるので俺はなんとも言えない感じで聞く。



「サイレンサー付きの拳銃で頭撃ち抜くじゃん?急に倒れた!医療部隊に連れてく!ってわざと最前線に運ぶじゃん?話し合いで頭に血が上って気絶しただけです、って芝居打って部下に伝えるじゃん?後は警備薄くして敵にあえて攻められて殺されました…っていう流れでおしまい」


「…なるほど。細かい点を変えれば怪しまれはするものの突くレベルまでにはいかないって事か」


「ん。特に戦場の指揮を任されてる私との話し合いの最中に倒れた、原因は興奮し過ぎです…って言われたらみんな納得するしかないし」


「まあまさか味方殺しをするだなんて夢にも思わねぇしな…しかも後方とはいえ戦場に出るんなら死んでもおかしくないから糾弾も出来ないし」



女の子の説明に俺が理解して納得しながら返すと肯定して何度も繰り返せる理由を話し、俺は感心しながら返した。



「だから今は聖職者達も大人しくはなってる。 まあ相変わらず政務に口出しはしてくるみたいだけど」


「ふーん…まあやらかしがバレたら戦場送りになるんだから大人しくもなるわな。裏で何してるか分からんが」


「ソレはもうどうしようも無い。コッチだってコソコソと裏で動いてたからソッチも知らなかったんでしょ?」


「…確かに」



女の子は話を締めるように言うと適当な情報を話し、俺が納得しながらも揚げ足を取るように返すと女の子の反論に論破されてしまう。



「…でもよく一人で解決出来たね。争ってる様子とか感じなかったけど」


「そりゃ武力に訴えるまでもなく話し合いで丸く収まったからな」


「…いやソッチの場合は項羽みたいに存在が既に武力の塊とか暴力の化身みたいなもんでしょ」



女の子が大福を食べながら思い出すように言うので俺がそもそも戦ってない事を告げると、女の子はツッコミを入れるように人を化物や人外扱いしてくる。



「そうかぁ?俺話し合いを優先する『平和主義者』なのになぁ…」


「…ソッチこの国の国民達になんて呼ばれてるか知ってる?『野蛮人』とか『成り上がりの蛮族』とか『戦争狂い』に『命知らず』だよ?まあ『守護神』とか『大領主』とかも聞いたけど…」



俺のボケながら冗談で反発するような発言に女の子は呆れたように一般庶民達からの呼称を告げた。



「ソレは俺の事を陥れようとしてる貴族達が広めたヤツだし。まあ否定出来ないから否定しないで放置してるんだけど」


「流石に野蛮人とか蛮族は否定した方が良いんじゃない?」


「ちゃんとした貴族の教育を受けてる人達からしたら腕一本でのし上がった孤児院育ちの俺なんて野蛮人も同然よ。マナーとか知らんから品の良い態度や対応なんて出来ねーし」


「…それは…まあ本人が容認してるんなら私からはもう何も言えないけどさぁ…」



俺が適当な感じで返すと女の子は微妙な顔で訂正するよう助言をするが、俺は今まで否定していない理由を説明すると女の子が納得いかなそうな感じで呟いて大福を口にする。

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