青年期 313

…男や男性の動きが止まると部下である兵士達の動きも止まり、敵兵達は指揮官っぽい騎士を一人残してどんどん逃げ出して行く。



「おっ、追撃しないんだ?」


「…ふん、逃げる敵を追うよりも一騎打ちを優先したまでだ。指揮官さえ居なければ兵がいくら数を揃えてようが問題では無い」


「それもそうだ」



分身の俺が意外に思いながら聞くと男が理由を話すので分身の俺は賛同する。



「じゃあやろうか」


「待て、貴様がやるのか?」


「そりゃ俺が提案したんだから」


「ココで指揮を執っているのは私達だ。決める権利はこちらにあるはずだが?」



分身の俺の発言に男が不満そうに止めるので理由を話すと男性も権利を主張して分身の俺を止めようとしてきた。



「…そう言われたら何も言えないけどさぁ…」


「…一騎打ちはお互いに代表者を決めて行いたい。他の部隊に私よりも強い適任がいる」



分身の俺が不満に思いながらも大人しく引き下がると指揮官っぽい騎士は馬から降り、この状況下では普通ならありえない提案をする。



「…ソレを呑むのならばそちらには少々不利な条件になるが、構わんな?」


「無論だ」


「では此度の一騎打ちにて我々が勝利した場合はそちらの部隊が撤退し、我々が敗北しようとも撤退はしない…という条件でそちらの代表者選出の一騎打ちを引き受けよう」



男性の確認に騎士はよっぽど代表者とやらの実力に自信があるのか内容も聞かずに了承し、男性は駆け引きをするように条件を告げた。



「よかろう。ただ一つ、そちらが負けた場合はお互いに立て直す時間として二日の停戦期間を設けてもらいたい」


「…良いだろう。では書面を作成するゆえ、ついて来てもらいたい」


「…なに?」


「俺らから手を出す事は無いから安心して。あんたが変な事をしなければ…だけど」


「…よかろう」



騎士は了承した後にお互いにメリットのある条件を追加し、男性が了承して流儀に則った事を言うと騎士が困惑したような顔になり…



分身の俺が楽観的に身の安全を告げると騎士は警戒しながらも了承してついてくる。



「一騎打ちはいつやる?なるべくなら早い方が良いんだけど」


「…明日の朝までには準備が整うはずだ」


「…じゃあさ、お互いに一騎打ちが終わるまで他の部隊達には停戦してもらわない?この一騎打ちで勝負が決まるから他の小競り合いは今の内にやめてた方が良いと思うんだよね」



分身の俺の問いに騎士は少し考えて返答し、分身の俺は自分達が勝つ前提で騎士にそう提案した。



「…そうだな。そちらも同じ考えであれば停戦を指示しても構わない」


「…では書面作成後にお互いに停戦の指示、司令書を各部隊に送る…という事で構わないか?」


「ああ」



騎士が男や男性を見ながら牽制するように返すと男性はまたしても駆け引きするように確認し、男性は了承するように頷く。





ーーーーー





「…これで誓約書の作成は完了とする」


「ああ」


「一枚はそちらに、一枚は我々に…くれぐれも約束を破るような真似はしない事だな」


「そちらこそ」



…お互いに話し合っての書面の作成が終わると男性は釘を刺すように紙を渡すと騎士は受け取りながら駆け引きするように返す。



「じゃあ、また明日」


「停戦の件、忘れるなよ」



分身の俺が軽く手を振って挨拶すると男も男性同様に釘を刺すように言う。



「…さて、明日の一騎打ちは誰が行く?ソッチ達の誰かがやるんなら俺はもう必要無さそうだから帰るけど」


「ふん、あの状況から一騎打ちに持ち込めただけで上出来だ。もうお前の出番は無い」


「…待て。今回の一騎打ちの相手はコイツに任せる」


「お」「なっ…!」



分身の俺の確認に男が用済みだと言わんばかりに返すと男性が制止するように言って意外な判断を下し、分身の俺の意外に思いながらの反応と男の驚愕するような反応が被る。



「万が一、私達のどちらかが重傷を負った場合…連邦側が約束を反故にして攻めて来ないとも限らない」


「まあ可能性として無くはない。俺なんて一騎打ちに勝った後に公爵の命令で袋叩きにされたし」


「…ソレについては我々ドードル側の言い逃れ出来ない完全な落ち度だ。我々の部下もその場に居て加担したと聞く…この場で謝罪を申し上げる、済まなかった」


「…そうだな。我々の教育が行き届かなかった責任でもあるわけだ…お詫び申し上げる」



男性が現実的な考えを話すので分身の俺が賛同するように過去の体験談を話すと男性は申し訳なさそうな顔で頭を下げて謝り、男も頭を下げて謝った。



「まあもう終わった事だし、その結果公爵の影響力が弱くなったわけだから別に」


「…公爵のあの卑劣な判断での卑怯な行動は本来ならば許されない事だ。『公爵』でさえなければ責任を取らせ、我々が武人として斬首したものを…!」


「全くだ。俺ら武人の誇りを汚して地に落とし、嘲笑うようなもの…断じて容認出来ん!今でも思い出すだけで腹が立つ!」



分身の俺はもはや過去の事なので適当な感じで軽く流すも、男性と男はやはりプライドがあるからなのか憤るような様子を見せる。



「…結局アレで派閥を追放されなくてもどのみち抜けたんじゃない?その様子を見る限りだと」


「…確かに公爵についていけないと考えてはいたが…」


「しかし後ろ盾が無いというのも、な…」


「だったら相談してくれれば将軍を紹介したのに。って言ってもソレじゃ結局今と一緒か」



分身の俺の予想に男性は微妙な顔で呟き、男も微妙な顔で現実を見るかのように呟くので分身の俺は適当な感じで言って笑う。

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