青年期 306
「…ボスとは戦うの?」
「まあ。時間あるし」
「このダンジョンのボスってなに?ヘルハウンド?」
魔物を探して歩いていると女の子が疑問を尋ね、分身の俺が肯定して返すと女の子は確認するように聞いてくる。
「ココはガルム。ヘルハウンドは確かロムニアのダンジョンで見たな…とりあえずこの国には居ない」
「『ガルム』かぁ…黒い犬や狼と考えれば似たようなものじゃない?」
「広義的に解釈を広げればそうだな」
分身の俺の返答に女の子が少し考えるように呟いて弄るように返すので分身の俺は適当な感じで肯定した。
「…ガルムもやっぱヘルハウンドみたいに影を操ってくる感じ?」
「いや…そもそもヘルハウンドってボスの中でも中級だろ。ガルムは初級だからソイツと比べたら普通に下位互換みたいなものよ」
「まあそうだけど…」
女の子は考えるように魔物について確認してきて、分身の俺が否定してそこまでの強さが無い事を話すと女の子は微妙な顔で賛同する。
「でもヘルハウンドはめちゃくちゃ鬱陶しいからなぁ…まあボスなんてどいつもこいつも無駄に強くて面倒で鬱陶しいのばっかだけど」
「あー…ソッチだと影で翻弄されて無駄弾使わされるか」
「影分身がめちゃくちゃウザい。本体に当てたと思っても他の影分身と入れ替わってノーダメになる時あるし」
「『地獄の猟犬』と呼ばれるだけはあるって事だな」
女の子の愚痴に分身の俺が予想しながら返すと女の子は肯定するように体験談を話し、分身の俺は笑って魔物の強さに太鼓判を押すように言う。
「しかもあの影分身、忍者漫画みたいにコッチを攻撃してくる時だけ急に実体が出て来るじゃん?アレやられるとマジでキレそう」
「コッチから攻撃する時はただの影で残像扱いだから攻撃が通らない、ってのが中々に理不尽感を高めてるな」
「一応ある程度攻撃すれば影は消せるけど…本体には一切ダメージ入らないから影を全部消してもまた影分身出される、っていうね」
嫌そうな顔で語る女の子の意見に寄り添うように返すと女の子は肩を竦めて呆れたように返した。
「でもソレって体力が半分以下になった場合にしかやらない特殊行動だろ?俺は話で聞いただけでまだ実際には見た事無いんだけど」
「…マジ?…って言ってもあなた一撃で仕留めるからなぁ…そりゃ見る事も無いでしょ」
分身の俺が確認するように聞いて体験談を話すと女の子は不思議そうな顔をするも直ぐに納得する。
「じゃあソッチも一撃で仕留めれば良いじゃん。やろうと思えば出来るんだから」
「えー…まあそうだけど…」
分身の俺の適当な発言に女の子は反発するように呟いた後に微妙な感じで呟く。
「でもなぁ…ソロでヘルハウンドを一発はめちゃくちゃ骨が折れそう…動きが速すぎてスナイパーライフルじゃ狙いが定まらない上に捉えきれないし」
「前か後ろの片足を狙って削れば良くね?」
「…!なるほど!言われてみれば確かに…!よく考えたら動きを鈍らせる程度なら脚全部削る必要無いじゃん!」
女の子がため息を吐いてネガティブな事を言い始めるのでちょっとしたアドバイスを送ると女の子は理解して喜ぶ。
「…さて」
「グルル…!」
ボスの魔物が居る大部屋に入って普通に近づくと、全身真っ黒な毛並みでライオンよりも一回り大きい魔物が分身の俺に気づいて威嚇しながら唸る。
「ガウッ!…ッ…!」
魔物の間合いに入ると直ぐさま飛びかかってきて分身の俺を頭から丸呑みするような感じで上半身に噛みつき…
分身の俺は噛み付かれたまま左手で魔物の毛皮を掴み、右手で貫手からの心臓潰しをして倒す。
「はやー…」
「正直に言うとガルムの攻撃はミノタウロスよりも弱いから受ける意味が無い」
「あー…なるほど。確かに」
魔物素材を拾ってる分身の俺を見て女の子が驚いたように呟き、さっさと倒した理由を話すと女の子は理解したように納得した。
「動きの速さとかで強さや危険度はミノタウロスよりも上だが、俺が今求めてるのとは違うし」
「…というか魔物全体を見てもミノタウロスよりも攻撃力が高い魔物ってほとんど居なくない?ボスでもほんの一握りぐらいじゃん」
「俺が明確にミノタウロスより上だと感じたのは今のところ厄災の龍とアダマンタイタンぐらいだな」
「…条件に当てはまるのがたった二体で、しかもその中の一体が最近まで未討伐だった魔物って…」
一応ボスの魔物の強さを誤解されないよう補足すると女の子はツッコむように指摘し、分身の俺が今までの体験を元にして挙げると女の子が呆れたように呟く。
「よーし…んじゃ、帰るか」
「そだね。ボスも倒したからもうココに居てもやることないし」
「…上に上がる前にこの階層にいるアルケニーとミノタウロス全部倒させてくれ」
「…まあ時間はいっぱいあるから帰りも修行していったら?でもココにいる魔物は全部ソッチが倒してよ」
「おう。元よりそのつもり」
分身の俺の指示に女の子が賛同するのでお願いすると女の子は微妙な顔になって受け入れてくれた。
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