青年期 305
ーーーーー
「…あ。ミノタウロス来たよ」
「オッケー」
…分身の俺が二体の魔物に組みつかれて左右両方から齧られていると女の子が報告してくるので、分身の俺は直ぐに心臓潰しで二体の魔物を倒して手早く素材を回収した。
「…私が相手をする必要無いじゃん」
ズシン、ズシンと近づいて来る魔物を見張っていた女の子が自動小銃を構えてコッチを向くも、既に素材の回収すら終わってる状況に微妙な顔をしながら愚痴を言う。
「同時に出て来た場合は、の話だろ?」
「ええ…そうだっけぇ?」
分身の俺の確認に女の子は不満そうに納得のいかなそうな感じで反発するような返し方をする。
「ってか今同時じゃん」
「同時か?ミノタウロスがコッチ来るまで時間かかるんだからそのまま待ってれば時間差にならね?」
「…ソッチさぁ……いい。なんでもない…」
女の子がツッコミを入れるように指摘し、分身の俺が反論すると女の子は呆れながら何か言いたそうな顔をするも無理やり呑み込んだように呟く。
「そんな事より、ミノタウロスが相手でも受けに徹するの?」
「おう。流石に他の魔物と同じように…とはいかないが」
「って事は…流石にガードする感じ?」
女の子の話を変えての疑問に肯定して返すと少し考えながら予想した。
「前まではそうしてた」
「…『前までは』?」
「まあ見とけって。見れば分かる」
分身の俺が微妙に肯定とも否定とも取れる返し方をすると女の子は不思議そうに聞き、分身の俺は適当な感じで楽観的に返して魔物へと近づく。
「ブモオォ!!」
魔物は女の子の時と同様に間合いに入って直ぐに威嚇して吠えながら斧を両手持ちで振りかぶると分身の俺めがけて思いっきり振り下ろす。
「ふっ!」
「えっ!?」
分身の俺が攻撃に耐えるための気合を入れると魔物の振り下ろした斧が分身の俺の頭に当たって地面が周りの半径3mほどの範囲にわたって凹み…
その衝撃に耐えられず魔物の斧が砕けるとその様子を見ていた女の子が驚愕する。
「くはは!勝った!」
「ブモオ!」
魔物の攻撃にノーガードで頭にモロに受けてふらつく事も無かったので分身の俺が勝ち誇りながら笑うと魔物が怒ったように右腕を振りかぶって殴ってきた。
「流石に二撃目をノーガードはキツイ」
「ブモ!ブモ!ブモオォ!」
分身の俺が腕を上げてガードすると魔物は左腕を振りかぶって殴りつけ…右、左と連続で上から力任せに殴りつけてくる。
「ちょっとぉ!!いくらなんでもこのままじゃ流石に死ぬって!そろそろ避けなよ!」
「ブモオ!」
「…ちゃんとガードしてるから大丈夫大丈夫」
女の子は心配そうに焦りながら大声で指示を出すと魔物に蹴りつけられ…
蹴飛ばされたついでに距離を少し取り、分身の俺は服についた埃を手で軽く払いながら余裕を見せた。
「…心配して損したかも」
「ははは、流石にガードが間に合わなかったら打撲ぐらいはしてたかもな」
「ミノタウロスの攻撃でも打撲レベルって…」
不貞腐れたかのように言う女の子に分身の俺が笑って返すと女の子は呆れたように呟く。
「これでも十数年かけて最近ようやく最初の一撃をノーガードで耐えられるようになったんだぜ?」
「…あのね、普通の人はたとえ100年鍛えてもあの斧の振り下ろしをノーガードは死ぬの。そもそもちゃんとガードしたところで無傷では済まないよ?絶対脚折れるって」
分身の俺の自慢するような発言に女の子はもはや呆れを通り越して諭すような感じで話し始める。
「ふふふ…効率の違いだな。チマチマ100年地道に鍛錬するよりドカンと10年で頑張る方が成果が高いって事だ」
「…でも失敗したら99%…ほぼ100%死なない?」
「そりゃ失敗したら死ぬよ」
「ええ…」
分身の俺が笑って返すと女の子は確率を言い直して確認し、肯定するとドン引きしたように呟く。
「まあ矛盾して支離滅裂になるかもしれんが…そのための土台を作るにはコツコツとチマチマした努力が必要って事だ」
「…まあ言いたい事は分かるけど…」
「ブモ!」
分身の俺の前置きをしての説明に女の子が微妙な顔で理解を示すように呟くと間合いに入って来た魔物が殴りかかってきた。
が、分身の俺は魔物の拳を柔術の技術でいなすようにしてその力を利用し、魔物を上下反転させて宙に浮かせる。
「…うそ…!」
そして即貫手を突っ込んでからの心臓潰しで魔物を倒すと女の子が驚愕した。
「なに今の漫画みたいな技!?一瞬ミノタウロスが宙に浮いてなかった!?」
「ん?ああ、ただの柔術の技術よ」
「『ただの』!?」
女の子は興奮した様子で詰め寄るように聞いて来るので分身の俺が魔物素材を拾いながら適当に返すと女の子が驚いたように声を上げる。
「柔道の一本背負いとか合気道の小手返しみたいなもん」
「…ああ、なるほど」
「俺ぐらいともなると魔物を投げる事ぐらい造作も無いわけだ」
「まあ、元のフィジカルが凄いから…」
分身の俺が例えを挙げると納得し、冗談やボケのつもりで言うも女の子はツッコまずに肯定するように呟いた。
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