青年期 297
「…しっかし、雑魚が鬱陶しいなぁ…弾だってタダじゃないのに…」
女の子はオークと一緒に出てくるゴブリンやスケルトンに、拳銃でのヘッドショットを一発も外さずに決めて倒しながら嫌そうな顔で呟く。
「大変だな」
「…ソッチは武器も防具も必要無いから一切金がかからなくて羨ましい…」
「俺は鍛え抜かれたこの肉体一つで十分足りるし」
分身の俺が相槌を打つように言うと女の子はなんとも言えない顔で呟き、分身の俺は適当な感じで返す。
「なんなら部位鍛錬で鍛えられるからお釣りがくるレベルじゃない?」
「魔物素材を売れば金になるから一石二鳥だな」
「…コスパも効率も極まり過ぎ…」
女の子がツッコミを入れるような感じで聞くのでことわざを言うと女の子は微妙な顔をしながらため息混じりで呟いた。
「まあでもまだココは初心者向けだしまだマシか。中級だったらダチョウやオークとかが一緒に出たりするし」
「…良く考えたら上級だと弾が足りないんじゃね?」
「うん。いつも足りるか否かってカツカツの状態になるから弾数の管理が面倒で上級は年に一回ぐらいしかいけない」
女の子の気持ちを切り替えるような発言に分身の俺がふと思いついた疑問を尋ねると女の子は肯定する。
「へー。銃は弾が無いと役に立たないから準備が他の武器に比べて大変だな」
「…一応奥の手だけど、弾切れでも攻撃は出来るよ。威力は上がるのに殺傷能力はめちゃくちゃ下がるけど」
「まあ点で集中した威力と面での範囲が広がって分散する威力じゃな…そりゃそうだ」
分身の俺が適当に軽く言うと何故か女の子は隠すべき情報を話し、魔法を応用しての攻撃は想定していた事だけに分身の俺は肯定しながら納得して返した。
「ってかなんで俺に話した?」
「あなたには効かないだろうから隠してても効果無さそうで意味無さそうだし」
分身の俺の問いに女の子は普通に理由を答える。
「弾より殺傷能力が低いんじゃあなぁ…」
「焼夷弾でも火傷すら負わないレベルならやっても無駄でしょ」
「って事は焼夷弾レベルの攻撃は出来ると?」
「普通に火炎瓶投げるだけで焼夷弾みたいにならない?」
「…なるほど」
分身の俺が微妙な顔をしながら呟くと女の子は開き直ったように言い、分身の俺の確認に似たような事が出来る簡単な方法を教えてくれるので納得した。
「水鉄砲で油かけて炎魔法で発火させるやり方もあるし」
「おおー、鎧着けてる奴にも効果的な現実的な方法だな。そういう非人道的な行為は戦争のルールで禁止されてるからやったら怒るけど」
「…やらないよ。よっぽど追い詰められない限りは」
「まあ命の危機の時は例外だな。ソレは流石に暗黙の了解になってるし」
女の子の提案に分身の俺が褒めるように返しつつも釘を刺すと女の子は微妙な顔をしながら地味に抵抗するように言い、分身の俺は状況次第ではお目溢しする事を伝える。
「…もし他の国がやってきたらどうするの?やっぱり報復する?」
「状況にもよる。市街戦や攻城戦とかで相手に後が無い状況なら何も言わん。まあその前に降伏勧告して脅すからそんなんされる状況になった事無いけど」
「ああ…」
女の子が好奇心で確認してくるので分身の俺がケースバイケースである事を告げ、過去の話をすると女の子は思い出すように納得した。
「もしソッチみたいに普通にやって来た場合はソッチの時と一緒。一旦警告を出して、聞かないようならしょうがない…コッチもルール無用のなんでもありでいく」
「…もしかしてだけど…大公国で私達の中継基地を跡形も無く消したのは魔法協会の奥の手じゃなくてソッチの仕業だったりする?」
「ん」
「…マジかぁ…」
分身の俺の返答に女の子は何かに思い至ったように尋ね、分身の俺が肯定すると微妙な顔をしながら呟く。
「流石、同じマスタークラスの人がビビるだけはあるよ。帝都を地図上から消すほどの攻撃とかされたらもうどうしようもないし」
「まあ多分あのお兄さんも余裕で同じ事ができると思うぞ。問題は自爆技になるだろうからソレをやると生存出来ない点だが」
「…そりゃ町ごと消し飛ばすんなら自分も範囲内に巻き込まれるからね」
「離れた所からやると射程距離が足りないから結局自分が巻き込まれない範囲で…ってなるとせいぜい半壊ぐらいで収まると思う」
女の子が投げなりな感じで褒めるので反論するように予想を話すと女の子は微妙な顔で返し、分身の俺は現実的に考えた想定をする。
「…帝都半壊でも恐ろしい…ってかめちゃくちゃ迷惑」
「流石にやらないとは思うが…マスタークラスのハンターともなるとそれぐらいの実力はあるから下手に喧嘩売って敵には回さない方が賢明だな」
「…この前のあなたの代わりに魔法協会のトップの護衛した件でも、厳重注意っていう物凄く軽い処分で済まされたし。仮にも皇帝陛下への反逆や背信行為と捉えかねられないヤバい事だったのに」
女の子の微妙な顔のままの呟きに分身の俺が軽い感じで警告や注意をするように釘を刺すと、女の子はこの前の帝国内のその後の出来事を教えてくれた。
「そりゃ行為的にはそう捉えられても仕方ないけど、考え的には全然そんな事無いし」
「しかも『厳重注意』っていっても一言ぐらい言われて終わりだったらしいし」
「そりゃ処分を重くして逃げられるわけにはいかないだろうからな…最悪魔法協会に行って敵に回るとか、知り合った俺んトコに来るとかしたら帝国的には自殺行為に近いし」
分身の俺が理解を示しながら返すと女の子は羨ましそうに詳細を話し、分身の俺は皇帝である青年の考えを予想しながら返す。
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