ダンジョン修行編

青年期 287

…その二週間後。



「…団長。今団長の知り合いだ、って言う奴が来てるんだが…ハンターのライセンスを確認したらどうやら今の『ロンゴニア帝国』の出身らしくてな」



団員達と木刀で手合わせをしていると別の団員が駆け寄って来て来客の報告をしてきた。



「…あー…わざわざ帝国から来たのかよ…遠い旅路をはるばるご苦労な事だ…確かに俺の知り合いだから俺が迎えに行くよ」


「分かった」


「ってなわけだから俺は抜ける。また今度ね」


「団長また勝ち逃げかよ!」


「いっつも良いところで邪魔が入るな…」



俺がどいつだ…?と二択の人物を思い浮かべながら呟いて指示を出すと団員は了承し、木刀を別の団員に渡しながら言うと他の団員達が不機嫌になるような反応をしながら返す。



「…ん?なんだソッチか」


「え、なにその反応?地味に傷付くんですけど」


「『帝国から来たハンター』で『俺の知り合い』って言ったらあと一人居るからどっちかと思ってな」


「あー…なるほどー…」



門の外に行くと来客は転生者であろう女の子だったので俺がそう呟くと女の子は困惑したように返し、理由を話すと納得したように呟いた。



「で?わざわざ遠い帝国からこんな辺境の小国まで何しに来たんだ?」


「情報収集がてら遊びに。あなた噂ではなんか凄い人物になってるけど…やっぱり見た感じ全然そうは見えないね」



やっぱり噂ってアテにならないな…と、女の子は俺の問いに用件を告げて弄るような感じで冗談を言う。



「まああくまで噂は噂で尾ひれが付くもんだからな」


「でもまさか貴族だなんて思わなかった。しかも今は結構な広い領地持ちのお偉いさんなんでしょ?」


「そうだぞ。敬えよ」


「うわ、そんな事言われたら全然敬えないやつ」



俺の微妙な感じでの返事に女の子が意外だった事を告げて確認し、肯定してボケるとちゃんとツッコミを入れるように返してくれる。



「ってかソッチも帝国軍で『中将』の『将官』なんだから立場の高いお偉いさんじゃん」


「そうだよ。だからちゃんと敬ってよね」



俺が反撃するように言い返すと女の子も肯定して胸を張りながらおうむ返しのように俺と同じ冗談やボケを言ってきた。



「ははー、お恵みをー。あたしにおこぼれを、天下りの甘い汁を下せぇー」


「……お主もワルよのぉ~」


「いえいえ、お代官様ほどでは」


「いやあなた代官より偉いでしょう。ってか代官って領主の代わりだし」



俺のボケ返しに女の子は少し迷って更に乗っかるように返し、俺が空気を読んで更にボケ返すと女の子が知識を披露しながらツッコミを入れる。



「まあ代行みたいなもんか。とりあえず立ち話もなんだし、続きは座って話さね?」


「あ、じゃあお邪魔します」



俺は適当に返して自室に招くよう提案すると女の子は了承して門をくぐり、拠点の中へと入った。



「…にしても情報収集って言ってたけど、まさか一人旅じゃないよな?」


「まさか。部下5人と一緒。みんな今は王都に居るけど」



俺が歩きながら女の子の身の安全を心配して確認すると女の子は否定した後に同行者が居る事を告げる。



「たった5人?」


「5人でも多い方じゃない?あんまり多いと不審がられるし」


「…そういや今回は俺の事を調べ回ってる奴がいる、なんて情報は一切入って来なかったな…もしかして元スパイ出身か?」


「ふっふっふ…普通に聞いて回っても怪しまれるだけだから冒険者…コッチではハンターだっけ?の方面から情報を集めた」



俺の問いに女の子は否定的に返し、思い返すように手腕を褒めて弄るように言うと女の子が得意気に笑いながら方法を話してきた。



「ほー、頭良いな。って事はマスタークラスの話題から話を切り出したのか」


「そゆこと。あなた冒険者界隈でもめちゃくちゃ有名なのに貴族としてもめちゃくちゃ活躍してるみたいだから、みんな冒険者の話なんてほとんどしなかったよ」


「まあハンターとしては言わずと知れた…みたいな感じだし、ソレ以外の話の方が盛り上がるわな」



俺が感心して予想すると女の子が肯定し、俺は納得しながら返す。



「ってか一番びっくりしたの、魔法適性がゼロとか元傭兵だったとか変化魔法の使い手って事なんだけど」


「…三つあるけどどれが一番だ?」


「全部。なんなら二番目に驚いた事も多い」



女の子のよく分からん発言に俺がツッコミを入れるように指摘すると女の子はまたしてもよく分からん事を言い始める。



「それ順位つける必要ある…?」


「魔法適性がゼロって事は魔法全く使えないんでしょ?」


「いや、コスパが最悪なだけで使おうと思えば使えるぞ。普通に」


「あ、そうなんだ」



俺が呆れたように呟くも女の子は無視して疑問を尋ね、否定して教えると意外そうな反応をした。



「まあじゃないと強化魔法なんて使えないもんね…少し考えたら分かる事だった…でもじゃあなんで変化魔法を?確かにメリットは大きいと思うけど…デメリットが最悪過ぎて強化魔法があればあんなの必要無くない?」


「強化魔法の適性がある奴からしたらそうかもな。変化魔法は適性とか関係無いから、デメリットの面も気をつけてさえいれば無いのと同じよ」



女の子は納得した後に疑問を聞いてくるので俺は適当な感じで女の子の認識に肯定しつつ変化魔法を選んだ理由を教える。

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