子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても大丈夫！

青年期 274

「…さて、コレがデザートね」

唐揚げが無くなるのを見て俺は昼食の締めとしてデザートを出した。

「…コレは…？」

「ミルフィーユクレープっていう手間のかかるケーキみたいなもん」

「…そちらのとは違うのですか？」

少女の不思議そうな問いに俺が答えると少女はお姉さんや女性の皿に乗せられた…細長いクッキーのようなパイ菓子のミルフィーユを見ながら尋ねる。

「ああ、先生達は昨日食べてるからね」

「なるほど…アレも美味しそうです…」

「では一口貰いますか？」

「良いのですか！？」

俺が理由を話すと少女は納得した後に羨ましそうに見ながら呟き、お姉さんがフォークで少し折るように切り分けて確認すると少女が喜ぶ。

「…！美味しい！パイ生地のサクサクしながらもホロホロと溶けていく食感と間に挟まれたクリームが…！」

「手間的にはケーキよりこのお菓子の方がかなり楽なんだけどねぇ」

お菓子を食べて喜ぶ少女に俺は微妙な顔をしながら返した。

「…！なるほど、手間がかかるというのも納得のいく美味しさ。何層にも重なった薄い生地と生クリームの新しい食感が素晴らしい」

「そのクレープケーキの中で一番美味しいのはやっぱりキャラメルアーモンドですよねー…作るのに更に手間がかかるだけあって至高の美味しさですし」

「ああ、確かにアレは美味いね。中に入ってる薄くスライスされたアーモンドの食感がまた…」

「アレ作るの凄く面倒くさいんだよな…アーモンドを薄切りにするのが特に一番面倒くさい」

クレープのケーキを一口食べた少女が理解したように呟くとお姉さんは思い出すように話し始め…

女性も同意するので俺は少女に要求されないよう嫌な顔をしながら釘を刺す感じで拒否るように言う。

「そこまで手間のかかる料理なんですか？」

「弟が前に作ったヤツの余りがあるから食べてみたら分かるよ。はい」

「！！ありがとうございます！」

少女の疑問に俺は空間魔法の施されたポーチから容器を取り出し、実際に食べさせて理解させる事にして皿の上に一人前の一切れを乗せると少女が驚愕した後にお礼を言った。

「！？こ、これは…！！」

「ちなみに奇数の層と偶数の層で塗られてるクリームの種類も違う」

「奇数がキャラメルクリームでしたっけ？」

「そうそう。上にはキャラメリゼのソースがかかってるし、しかも上に乗ってるアーモンドのスライスと中に挟まれてるアーモンドのスライスは厚みが違うっていう」

「確かローストの具合も違うんですよね？」

「…なぜ、そこまで…？」

一口食べて驚く少女に俺が軽く説明するとお姉さんが確認するように聞き、肯定してかかってる手間の一部を教えると…

お姉さんは補足するようにもう一度確認して少女が呆然とした様子で尋ねてくる。

「単純に美味しさの追求。今持ってる技術を注ぎ込んでいかに美味しい物を作るか、っていう芸術品みたいな物だからね…ソレは手軽に簡単にいっぱい作る事なんて一切考えてない特別な一品物として作ってる料理の一つだよ」

「…な、なるほど…確かにコレは…そう簡単に作れるものでは…」

俺が理由を話すと少女は納得しながら弟が作ったクレープケーキを食べ、理解したように呟いた。

「…まあ、と言っても実はいっぱいあるんだけど」

「えっ！？」

が、俺は前言撤回するように空間魔法の施されたポーチからタッパーのような容器を三つ取り出して蓋を開けて中身を見せる。

「作る時は同じものを大量に作って後日のために作り置き、ってのが俺のやり方でね。その方が何回も作らなくて済むから手間が省けるし」

「な、なるほど…」

「でも今回はソレがあるからコレはまた次の機会って事で」

俺が大量に作った理由を話すと少女が何故か圧倒されたような反応をしながら呟き、俺はお預けするように言いながらモノを片付けた。

「ではその時を楽しみにしています」

「ん。じゃあ次はコレ」

「これは…クッキーシューですか？やったー！」

少女の発言を流すように返して最後のデザートを出すと、シュークリームの生地を見たお姉さんが喜ぶ。

「…これは…シュー…ですか？」

「そうそう。生地の方をちょっと変えてあるけど」

「クッキーシューは普通のと違ってサクサクした生地も美味しいんですよねー」

「普通のも美味しいけどあたしはやっぱりこのクッキーシューが好きだね」

不思議そうに確認する少女に俺が肯定して普通のと違う点を挙げるとお姉さんが手づかみで食べながら感想を言い、女性も嬉しそうに手掴みで食べながら感想を言う。

「…美味しい！確かに生地がクッキーのようにサクサクホロホロと口の中で溶けるようで…！中のクリームも甘すぎずに生地の甘さと合わさっての美味しさが…！」

「良かったね」

「坊ちゃんあと一つください！」

「あ、じゃああたしにも」

「…じゃあ…私も…」

ナイフとフォークで上品に食べる少女の感想に俺が流すように言うと二個食べたお姉さんがおかわりを要求し、女性も乗っかると少女も乗っかってもう一つのクッキーシューを要求してきた。