青年期 264
…その後。
昼食が終わって直ぐに話が纏まり、用事は済んだので少女を連れて大公国へと帰還した。
「…ありがとうございます。ゼルハイト様のおかげで話し合いも穏便に済みました」
「…あー…うん。俺のおかげってよりあのマスタークラスのハンターのおかげじゃないかな?」
首都の近くで拘束を解いた後に少女が頭を下げてお礼を言い、分身の俺は微妙な感じで男の手柄を主張する。
「敵でさえも味方につける事が出来るのはゼルハイト様の人望があってこそ。私ではあのような事はとても…」
「良い人で助かったね。強い人がみんなあんな感じで良い人ばっかりだったら戦争も起こらないだろうに…」
「…そうですね」
少女の賞賛するような発言に分身の俺が男を評価しながら返した後に憂うように言うと少女も同意した。
「料理の方も大変美味しかったです。ゼルハイト様が料理上手だという事はクライン大魔導師からお聞きした事がありましたが…まさかあれほどとは」
「また食べたくなったらラスタの拠点に遊びに来たら?今と違って材料が揃ってるからもっと色んな料理を作れるし」
「…では暇が出来た時はぜひお邪魔させてもらいます」
少女が思い出すような感じで意外そうに言うので分身の俺が招待すると少女は嬉しそうな顔で肯定的に返す。
「その時に先生が居たら魔石の売買も出来るね。一応今も少しは持ってるけど」
「!?魔石の個人売買!そう言えば…上層部の一員がそのような方法で魔石を手に入れたと…!」
「まあ金があればの話だけど」
分身の俺の提案に少女は目から鱗…といった反応で驚愕し、分身の俺は前提条件を言う。
「…では、帝国の兵士達が国から離れた折には魔石の売買の件…よろしくお願いします」
「オッケー。早ければ多分明日の昼過ぎには居なくなるだろうね」
少女が頭を下げながらお願いしてくるので分身の俺は軽い感じで了承して時期を予想する。
「そうなるとありがたいですが…」
「まあ遅くても明後日には居なくなるでしょ。アッチも急いで戻らないといけないし」
「…では私はこれで」
少女の難しそうな顔での呟きに分身の俺が適当な感じで返すと少女は少し考えて挨拶をすると首都の方へと歩いていく。
…そして翌日。
の昼前。
帝国軍の動きを監視していた部隊から、解放した捕虜を含めた全ての兵士達が船に乗って離れて行った…との報告を受けた。
「おおー、予想より少し早かったか…じゃあ報告して帰ろうか」
「そうですね」
「ああ」
分身の俺は仕事が終わった事を少女に報告するために分身のお姉さんと女性と一緒に魔法協会の本部へと向かう。
ーーーーー
「…そうですか…ご苦労様です。クライン大魔導師、魔法協会を代表して感謝申し上げます」
「あ、いえ…」
「ところでゼルハイト様。例の件ですが…」
報告を聞いた少女が頭を下げてお礼を言うと分身のお姉さんは気まずそうに困った様子で返し、少女は直ぐに話を切り替えて魔石の売買を持ちかけてくる。
「ああ、うん。魔石の売買ね」
「…クライン大魔導師が同席していれば密約には反しないはずです」
「そうですね」
分身の俺は分身の二人にも分かるよう伝えた後に魔石を取り出してテーブルの上に置くと少女が確認するように言い、分身のお姉さんは肯定した。
「…とりあえずコレが売れる分だね」
「…出されている物全て、ですか…?」
分身の俺が魔石を出した後にそう告げると少女は信じられない…といった様子で驚きながら確認してくる。
「いやー、流石に今回はいつもと違って二回ともちょうど撤退時と被っちゃって…ダンジョンに行ってた時間が短いから物も少ないんだ」
「コレでも少ない方なんですか!?」
50個程度の魔石しか売れない事を言い訳するように話したら少女は驚きながら分身のお姉さんを見た。
「まあ…普段と比べると…急いで最下層に行って急いで帰っていたので…あ、でも差は少しだけですよ?」
「…そ、そうですか…ケンタウロスの魔石にコレはサラマンドラ?協会にも一つ二つしか納品された事の無い珍しい物ばかり…これら全て買い取る、と言う事は可能ですか?」
分身のお姉さんの微妙な顔での肯定しながらの説明に少女はテーブルの上に置かれてる魔石を手に取って呟き、確認してくる。
「金が払えるんなら別に構わないよ。俺は魔物と戦うのが目的であって、魔石なんてついででおまけの副産物でしかないし」
「坊ちゃん本当に魔石に興味がありませんもんね…本人が了承しているので密約には反しないと思います」
「では…全て買い取らせて下さい」
分身の俺の適当な返答に分身のお姉さんが微妙な感じで笑いながら説明すると少女は大人買いならぬ富豪買いするように魔石を買い占めた。
「……はい。ちょうどですね」
「ありがとうございます。今まで長く生きて来ましたが…まさかここまで大量の魔石を手に入れる日が来るなどとは…夢にも思いませんでした」
「良かったね」
分身のお姉さんが金額を確かめて告げると、少女は空間魔法が施されているであろう何かに魔石をしまいながら感極まるかのように言い、分身の俺は適当に相槌を打つ。
「これも全てゼルハイト様のおかげでございます。また機会があれば是非ともお願いいたします」
「あ、うん。じゃあ帰ろうか」
少女の頭を下げてのお礼に分身の俺が適当に流すように返事して帰宅しようとすると、分身のお姉さんと女性はなんとも言えないような顔で何か言いた気な視線を向けてくる。
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