青年期 243
「…え、待って。そういえば昔にもライフル弾が効かなかった人が居たんだけど…」
「世界戦の時なら、それ俺」
「マジ!?普通ならゴム弾を頭に当てただけでみんな倒れるのに、50口径の戦車でも貫通する弾が当たってもピンピンしてる人なんて初めて見たからびっくりした」
「そりゃ魔法の無い世界だったら存在しないかもね」
女の子の思い出すような発言に肯定するように返すと女の子が驚愕するので分身の俺は適当な感じで返す。
「えー…そもそも魔法の無い世界なら身体強化とか出来ないからこんな銃なんて反動が凄すぎて女じゃ撃てないし」
「ああ…そんな物を持ち上げたままでよく撃てるな、と思ってたけどやっぱり強化魔法か」
「当たり前でしょ。普通の状態で撃とうもんなら反動で肩外れて鎖骨にヒビ入るか折れるって」
女の子は微妙に話が噛み合わないような感じで言いながら銃を拾い、分身の俺が予想を話すと分身の俺に向けて構えて笑いながら肯定した。
「アズマ中将!無事ですか?…なっ!」
「まだ…生きていたのか…!」
「しかも、未だ無傷だと…!?」
一旦退室して行った男達が戻って来ると分身の俺を見て驚愕する。
「おっと、そうだった。退却するか俺と一騎打ちをするか決めてくれ」
「…どっちも無理」
分身の俺は用件を思い出して選択肢を提示すると女の子がおそらく空間魔法の施された何かに銃をしまって選択自体を拒否した。
「じゃあしょうがない。ココに居る人達を人質にして退却してもらうしか無いか…」
「ちょっと待って!ここで逃げ帰ったら責任取らされて降格や失脚しちゃう!後ろ盾もないただの小娘がココまで成り上がるのにどれだけ大変だったかあなたなら分かってくれるでしょ?それに…ライフル弾ですら傷一つ付かないあなたと一騎打ちしても絶対に勝てない事は分かりきってるし…」
分身の俺がため息を吐いて嫌々ながらも最後の手段を使う事を示唆して呟くと女の子は焦ったように拒否した理由を説明してくる。
「うーん…そう言われてもなぁ…」
「お願い!今回は見逃して!なんでもするから!私の初めてをあげてもいいから!」
「…なんでも?」
「ぅ…やっぱりなんでもは無理、私に出来る事ならに変える」
分身の俺の困りながらの呟きに女の子は両手を合わせて懇願するように言い、女の武器である身体を差し出すような事も言い出し始めるので…
分身の俺が確認すると女の子は言葉に詰まった後に目を泳がせて訂正した。
「…じゃあこれからは戦争のルールを絶対遵守してくれ。夜襲も兵站狙いも今後は一切しないと誓えるか?」
「ううっ…!な、なんでさ!兵法の基本戦術でしょ!ソレを多用して何がいけないの!?」
分身の俺は少し考えて条件を伝えると女の子が困ったような反応をした後に逆ギレをかましてくる。
「俺がわざわざ理由を説明するまでもなく頭の切れる中将殿なら理解しているハズだけど?」
「ぐっ…!なにその嫌味な言い方!」
分身の俺のニヤニヤ笑いながらの嫌味を込めた返答に女の子は食ってかかるように返す。
「目先の事だけじゃなく後先の事も考えないと自分の首を絞める事になるよ?歴史を知ってるのならそれも理解してるでしょ?」
「…で、でも兵法の基本戦術だし…ここまで効果的だと逆にやらない方が馬鹿、っていうか…」
分身の俺がちょっと真剣な表情で割とガチめな話をすると女の子は顔を逸らしながら抵抗するかのように呟く。
「…勝ちに拘るのは悪い事じゃないし別に問題無いけど…そのために手段を選ばないってのは問題有りだ、大問題過ぎる。が、まあ俺には関係無いし…本人が早死にしたい、自殺願望があるってんならもうこれ以上とめはしないよ」
好きにしたら?と、分身の俺はあえて女の子を突き放すように厳しい言葉をかけながら匙を投げて諦めるような態度を取った。
「う…うぅ…分かった。分かった、分かりました。もう夜襲はしないし、補給部隊を狙ったり兵站を切るような戦い方はしません!」
「ちゅ、中将!それは…!」
「アズマ中将!敵の甘言に騙されてはいけません!」
「今や貴女は帝国の英雄…全戦不敗、無敗神話を打ち立てた貴女が敵に負けるなど…!」
女の子が苦しそうに呻いて決断したように宣言すると周りの男達が必死になって説得して止めにかかる。
「…これで良いんでしょ?」
「まあ今の所はソレでオッケー。後からまたやってもらう事はあるけど…今度は俺の番だな」
女の子の諦めたようにため息を吐いての確認に分身の俺は譲歩するように認め、話を進めるように言う。
「やってもらう事?」
「とりあえず率直に言うと魔法協会が無くなると俺は物凄く困るからこのまま見逃す事は出来ない」
「えー!詐欺じゃん!不公平!私達だけ一方的に押し付けられるとかあり得ないんですけど!嘘つきじゃん!こっちは見逃してもらう代わりになんでもするって言ったのに!」
女の子が疑問を尋ねるもスルーして自分の言い分から先に伝えると、女の子は苦情を言った後に分身の俺を非難するように責め立てる。
「…話を最後まで聞いてくれ。要はソッチの責任にさえならなければ退却しても問題無いんだろ?」
「え、う、うん…そりゃあ私の責任じゃないんなら…あなたみたいな化物と戦っても勝ち目なんて無いんだから喜んで帝国に帰還するよ」
分身の俺は呆れながらため息を吐いてそう返し、確認をすると女の子は困惑したように肯定して微妙な顔をした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます