青年期 226
…昼食後。
「…うーん…」
「…リーゼ様のことですか?」
自室で俺が腕を組んで考えてるとお姉さんが悩みの種を予想するように尋ねた。
「ん。父さん達に知らせようかどうか迷ってね…でもソレでコッチに来て修羅場になられるとリーゼの逃げ場というか、避難先が無くなるからどうしたものか…」
「ああ…居づらくなりそうですもんね…」
「実家の方で修羅場になるんだったらまだこの拠点に逃げ込めるけど、コッチでなるとやっぱ気分的に他の所に逃げそう」
「…確かに」
俺は悩みを話した後に予想を告げるとお姉さんが納得するように賛同する。
「…とりあえずエーデルだけには話を通しておくか。心の準備をさせて父さん達をフォローしてもらわないと」
「そうですね。それが良いと思います」
…リーゼの事で色々と想定をした後に最悪の事態を避けるための保険をかけるため動く事にするとお姉さんも賛同し、俺は変化魔法を使ってスライム化からの分身をした。
そして分身の俺は王都にある実家へと向かう。
「!これはリデック様!お帰りなさいませ!」
「お帰りなさいませ!」
「警備ご苦労さん。エーデルは居る?」
「はい。エーデル様なら現在も執務中かと」
実家に着くと門の前の警備兵は敬礼しながら挨拶するので分身の俺が労いの言葉をかけて尋ねると、警備兵の一人が答える。
「ありがとう」
「いえ!開門します!」
分身の俺がお礼を言うと警備兵は門を開けてくれ、俺は敷地内に入って庭を歩く。
「おや…これはリデック様。お帰りなさいませ。旦那様は仕事で不在でごさいますが…」
「ああ、今日は父さんじゃなくてエーデルに会いに来た」
「エーデル坊ちゃんに…?今は執務室にてお勉強中ですが…」
家の中に入ると執事長のおじさんが驚いたように挨拶して父親の不在を告げ、分身の俺の用件に不思議そうな顔で弟の現状を教えてくれた。
「とりあえず部屋まで案内してくれる?」
「かしこまりました。こちらです」
分身の俺の要求におじさんは少し頭を下げると行き先を手で示して先導するように歩き始める。
「…坊ちゃん、お兄様のリデック様がいらしておりますが」
「兄さんが?今行く」
「いや、もう来てる」
…おじさんが部屋のドアをノックしながら用件を伝えると中から弟の意外そうな声が聞こえ、分身の俺はそのままドアを開けて返す。
「来てたんだ」
「ああ、ちょっと…いや、結構面倒な事になってな」
「ではお飲み物をお持ちします」
弟は立ち上がった状態のまま言うとそのまま椅子に座り、分身の俺がどう伝えるべきか…と困惑しながら返すとおじさんが軽く頭を下げて部屋から出て行く。
「面倒な事?何かあったの?」
「…リーゼが周りの令嬢にハメられて学校を退学させられたんだと…」
弟の問いに分身の俺は弟に近づいて耳打ちするように小声で内容を伝えた。
「…えっ!?」
弟は俺の時と同じく一瞬理解出来ないような反応をした後に驚愕する。
「リーゼは立ち回りをミスっただけで自分に非は無いと言っていたが…いくら妹とはいえソレを鵜呑みにするのもどうだかな」
「…まあ、リーゼには見栄っ張りなところがあるから…それで無駄に敵を作って利用された可能性もあるけど…」
分身の俺が妹の言い分を伝えた後に疑うように言うと弟も困ったように笑いながら妹の欠点を呟き、ハメられた経緯を推察した。
「とりあえず4日後の週の始めに公表されるらしいから…コッチに手紙が届くのもそのぐらいだろうよ」
「…父様と母様は頭抱えそう…既に僕も頭抱えたい気分だし」
「全くだ。まあだからお前には前もって先に伝えたわけだが…心の準備が出来るようにな」
分身の俺の予想に弟はため息を吐いて呟き、分身の俺も同意しながら今日来た理由を話す。
「…先に聞いといて本当に良かったよ。リーゼは今は兄さんの所に?」
「ああ…」
弟が安堵の息を吐きながら呟き、妹の所在を確認するので分身の俺が肯定するとドアがノックされる。
「紅茶をお持ちいたしました」
「…ありがとう」
「ご苦労さん」
「ではごゆっくり」
メイドはテーブルの上に二人分の紅茶を置くと軽く頭を下げて退室した。
「…兄さんの所なら安心だけど…これからどうしたものか…」
「まあしばらくは俺んトコで面倒を見れるが…問題は縁談とかだよなぁ…」
「うん…」
弟がドアに耳を当てて外に誰も居ない事を確認してため息混じりに妹の将来を案じるように呟き、分身の俺も同意するように懸念を告げると弟は考えるように返す。
「一応俺のコネとツテを使えば城の方で王妃や王女付きのメイドとして働かせてもらえると思うが…」
「…問題はリーゼが上手くやれるか、だよね…周りには立場のある令嬢や夫人達が居るわけだし」
「まあそもそもリーゼがソレを良しとするか、って問題も出てくるし」
分身の俺の提案に弟は心配しながら否定的な感じで言い、分身の俺は妹の考えを尊重するように返す。
「…はぁ…とりあえずソコはリーゼ本人の判断が絡んでくるから今考えても仕方ないとして…僕は父様や母様へのフォローを考えとかないと…」
「そこは任せたぜ」
…どうやら弟も妹の判断を尊重するかのように告げた後に両親の反応を想定し、考えながら呟くので分身の俺は頼るように弟に面倒事を押し付ける。
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