子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても大丈夫！

青年期 216

「…では、名残惜しいではありますが…自分達はコレで戻ります。また機会があれば」

「近くの町に滞在しているのか？」

魔物素材を片付けて別れの挨拶をすると男が確認するように尋ねてくる。

「いえ…自分達は仕事でこの国に来てまして…」

「仕事？」

「現在この国はグロッソと戦争中でして、その援軍として呼ばれました」

「戦争、だと…！？そう言えばこの前も…山に籠っている間に世界はどんどん変わっていくものだ…」

分身の俺の否定的な返答に不思議そうな顔をされたので仕事の内容を話すと男は驚いた後に思い返すように呟いてため息を吐く。

「なので自分と先生は今から宿営地に戻るつもりです」

「…そうか…俺もついて行っていいか？」

「「え！？」」

分身の俺が予定を話すと男は少し考えて予想外の提案をしてきて分身の俺とお姉さんの驚きの言葉が被った。

「自分は構いませんが…」

「自国の問題、ましてや他国に救援を求めるほどの自国の危機ともなれば無視は出来ん。微力ながら何か俺にも手伝わせてくれ」

「分かりました。よろしくお願いします」

「ああ。出来る限り頑張ろう」

分身の俺の呟きに男が同行を求めた理由を話すので分身の俺が了承して手を差し出すと男は手を掴んで握手する。

「では戻りましょうか」

「なっ！？」

「今回は馬なんですね」

「ダチョウだと二人は乗れなそうだし」

「確かに」

分身の俺が変化魔法を使ってカースホースに変身して伏せると分身のお姉さんが不思議そうに言いながらも跨り、分身の俺の理由を聞いて納得した。

「…乗っていいのか…？」

「「どうぞ」」

男の困惑したような確認に分身の俺とお姉さんの返事が被る。

「…じゃあ行くよ？」

「はい」

「ああ、頼む」

…男が乗るのを確認して立ち上がりながら合図を出すと二人が了承し、分身の俺は宿営地まで走る事に。

「…もの凄い速さだが、風の影響とかが一切無いのは何故だ…？」

「多分坊ちゃんがワイバーンの技である空力操作を使用してるからだと思います」

「『空力操作』だと？」

時速にして大体200kmぐらいの速さで走っていると男が不思議そうに呟き、分身のお姉さんの予想での返答にまたしても不思議そうに聞き返す。

「私もよく分からないんですが…坊ちゃんが言うには、気流とか空気の流れを操って風の影響を受けないようにしているとか」

「…そんな事が、可能なのか…？」

分身のお姉さんも困ったように笑いながら曖昧な感じで説明すると男は驚愕したように呟いた。

ーーーーー

「ただいまー」

「お。帰って来た」

「どうだった？」

「少しは押し返す事が出来たかな。あんたのおかげで敵の士気が下がってて勢いがあまりない感じだった」

分身の俺がテントに入りながら挨拶すると分身の女性が立ち上がり、状況を尋ねると戦況を報告してくる。

「お、維持してくれるだけで良かったのに押し返せたんだ。コッチも色々と収穫が多かった」

「…彼女は？」

「ああ、俺の嫁の一人です」

「嫁！？結婚してたのか！？」

分身の俺は意外に思いながら返すと男が不思議そうに尋ね、分身の俺との間柄…関係を話すと驚きながら女性を見た。

「と言っても側室とか妾みたいなものなので第三夫人？になるんですけど」

「…妾？第三夫人…？」

分身の俺の微妙に訂正するような発言に男は少し不思議そうな感じで呟く。

「ソッチは？やけに親しそうだけど…知り合いかい？」

「俺の元家庭教師の師匠。たまたまダンジョンで久しぶりに会った」

「家庭教師？…そうか、あんたそう言えば貴族のご子息だったんだっけ。あたしはヘレネー、よろしく」

「あ、ああ…こちらこそ」

分身の女性が男を見ながら不思議そうに尋ねてくるので、分身の俺が紹介するように素性を話すと…

思い出したように呟き、自己紹介をしながら手を差し出して男と握手を交わす。

「…リデック君がまさか既に結婚していたとは…十年の月日とは思った以上に長いのだな…」

「あれ？アーシェの事は話してないのかい？」

「「あ」」

男の呟きに分身の女性が不思議そうに聞き、分身の俺らはそう言えば…と思いながら返した。

「…もしや…？」

「あー…言い忘れてましたけど先生とも結婚してます。第二夫人になりますね」

「あ、ちなみに子供もいますよ。女の子二人が」

「はっ！？な…！えっ！？」

男が分身のお姉さんを見ながら確認するように聞き、分身の俺が肯定するように返すと…

分身のお姉さんも情報を追加して男は驚愕して困惑するような反応を見せる。

「とりあえず夕飯にしよう。ご飯は？」

「まだ。あんた達が帰って来てから一緒に食べようと思ってたから」

「じゃあ今日はシチューを作ろうか。ダンジョンで鶏肉が取れたし」

「やったー！」

分身の俺は、男が落ち着くまでの間に夕飯を作ろう…と分身の女性に確認した後にメニューを決めると分身のお姉さんが喜ぶ。

「師匠も食べていきますよね？というか泊まっていきますよね？積もる話もありますし」

「…あ、ああ…」

分身の俺の確認に男は衝撃冷めやらぬままの状態で返事をした。