青年期 215

…そして何事もなく分身の俺らは魔物を倒しながら第四階層へと上がる。



「…んお。アレは…」


「ラミアーですね。こんな所に居る魔物だったんだ…」



少し進んで上半身が女で下半身が蛇の姿をした魔物を発見し、分身の俺が思いだそうと呟くと分身のお姉さんが名前を言って意外そうに呟いた。



「知っているのか?」


「降魔の時期に一回だけ見た事あります。でもその時は複数体いたので、それを『一回』と言っていいのか分かりませんが」


「なるほど」



男の意外そうな問いに分身のお姉さんが微妙な感じで笑いながら答え、男は納得したように返して魔物へと近づく。



「…シャー!…グッ…!」



男がある程度近づくと魔物が襲いかかってくるが天高く放り投げられて地面に叩きつけられる。



「…アレじゃ巻き付く隙すら無さそう…」


「そもそも巻き付けるかな?掴む事すら無理っぽい感じだけど」



男と魔物の戦いを見ながら呟く分身のお姉さんに分身の俺は適当な感じで返した。



「…触れたら直ぐに投げられるか折られるかなので、 まず捕まえたり組み付けたりできないですからね…」


「ただ…まあ、ラミアーには…というか蛇系の魔物には毒の技があるからな…ソレは流石に受け流せないから避けるしかないと思うけど」



分身のお姉さんが男の戦い方について話し、分身の俺が若干心配しながら見てるとやはり魔物が毒液をツバのように吐き出して飛ばし始める。



が、男は余裕で避けて魔物を投げて木にぶつけた。



「おおー…流石に当たらないか」


「そりゃ普通は避けますって」



分身の俺が意外に思いながら言うと分身のお姉さんがツッコミを入れるように返す。



「…ん?」


「あ」



…もう少しで男が魔物を倒せる…ってところで二体目のラミアーが乱入してきたので、分身の俺が相手する事に。



「シャー!!」


「…お。倒した」



魔物の爪での引っ掻きや尻尾での叩きつけを避けずにくらっていると男がようやく魔物を倒し終える。



「…しかし、やはり一切避けぬのだな…」


「もはや毒すらも効かないので、毒殺などの暗殺なんて不可能になってますし」



分身の俺が魔物に巻き付かれて締め上げられ…引っ掻きや噛み付きとか毒の攻撃をくらっていると、その様子を見た男が驚きながら呟いて分身のお姉さんが笑いながら説明するように返した。



「…そろそろかな」


「ギュ…!?」


「…どんな魔物でも心臓抜きで一撃とは…羨ましいものだ」


「やっぱり真似するのは難しいですか?」


「ああ。リデック君の部位鍛錬とやらを多少真似てはみたが…どうやら君のような回復術師が近くに居ないとあのレベルに達するのは不可能のようだ」



ある程度攻撃をくらった後に心臓抜きで仕留めると男が羨ましそうに呟き、分身のお姉さんの疑問を聞くような確認に男は肯定して体験談を話し出す。



…そんなこんなダンジョンを進んでボスを倒し終える頃にはもう夕方だったので、暗くなる前に…と急いでダンジョンから脱出する。



「…まさか最上層のボスまで行けたとは…一人では第六階層までが最高到達だったのだがな」


「流石に初めて見る魔物が多かったですね」


「うん。特に植物系の魔物とかは降魔の時期でもほとんど見ないから来て良かったよ」



…ダンジョンから出た後に男が意外そうに感想を話すと分身のお姉さんも嬉しそうに言い、分身の俺も喜びながら返す。



「…あのアルラウネか。確かにこのダンジョンには何度か来てるが、初めて見たな…」


「じゃあレア系の魔物なのかな?」


「私としてはナーガが肉を落とすのにびっくりしました。ラミアーは落とさないのに…」


「そう言えばコカトリスも肉を落としていたな」



男の発言に分身の俺が予想すると分身のお姉さんは思い出すように言い、男も顎に手を当てて思い出すように呟く。



「アルミラージも兎の肉を落としてたね」


「どんな味なのか楽しみです!」


「…じゃあ、とりあえず分け前を…」



分身の俺も肉を落とす魔物の事を言うと分身のお姉さんは食事を期待するかのように言い出し…



男と別れる前にダンジョンで取った素材を広げて報酬の分配をする事に。



「…いいのか?」


「そもそも師匠が取った物もあるのでソレは師匠の物ですよ」


「…それもそうだが…パーティで取った物は共有だろう?」


「ハンターの常識としてはそうですけど…ソレは協力して敵を倒した場合の話であって、師匠は個人で倒したのでその分の権利は当然師匠にあります」



男の確認に分身の俺が笑いながら返すとハンターの心得や常識を話してくるが、分身の俺は例外的な事を言って広げた素材を指差す。



「…じゃあ私から先に貰います。とりあえず初見の魔石を一つずつ下さい!」


「じゃあこの小袋の中に入れとこうか」


「ありがとうございます」


「…では…」



分身のお姉さんが気を遣って遠慮なく報酬を貰うと男も広げた素材の中からボスだった魔物…オロチの鱗と牙を手に取る。



「…本当に良いんだな?コレは高値で売れるぞ?」


「ははは、金の問題など…この魔石一つで数年は遊んで暮らせる額になりますよ」


「ですね。お金に困ってるのであれば魔石を魔法協会に売却した方が良いと思います。このオロチの魔石だけで何千万いくでしょうし」



男の再三の確認に分身の俺が笑ってグレムリンの魔石を手に取りながら言うと、分身のお姉さんも賛同してオロチの魔石を指さして売却額を予想した。



「なっ…!?…い、いや…流石にそこまでの大金は…」


「良かったぁ~…実は欲しがったらどうしようかと内心ドキドキでしたよ」


「…そ、そうか」



男が驚愕して遠慮して断るかのように呟くと分身のお姉さんは安堵を息を吐き、男は反応に困ったように返す。

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