青年期 206
…その翌日。
昼食後に街中を観光しながら情報を集めていると兵士に声をかけられ、城に行くよう告げられたので城に行くと…
昨日のおじさんがこの国の指揮官のバッジを三人分差し出し、分身の俺らはソレを受け取って早速前線へと移動する事に。
ーーーーー
「…おおー…昨日よりも更に押されてるねぇ…」
「本当ですね。敵も勢いづいてますし…これは…」
「…これじゃあ一旦撤退してこの先で立て直した方が良いんじゃないかい?」
…分身の俺らが戦場に着くと明らかにニャルガッズ側が劣勢をしいられていて、分身のお姉さんがお手上げの状態で呟くと分身の女性も退くような案を出す。
「…そうした方が良いかも。とりあえず前線司令官とかに挨拶してこうか」
「はい」
「そうだね」
分身の俺は分身の女性の案に賛同しながらニャルガッズの陣営へと向かう。
「…うへー…負傷者ばっかり…」
宿営地のような陣営の中に入って少し歩いただけでテントに入り切らない負傷者が地面に転がされていて、止血などの簡単な応急処置すらされずに放置されている。
「…明らかに魔法使いの数が足りてませんね…」
「…これはどう見ても負け戦の感じだね…」
分身のお姉さんの予想に分身の女性は周りから漂う雰囲気から察するように呟く。
「あのー、ちょっといいですか?」
「…なんだ?…誰だ、お前は…?見た事ない顔だな…」
「この戦場を指揮してる偉い人に会いたいんだけど」
「…!そのバッジは…!はっ!しかし、今は戦場に出ていまして!ココには不在であります!」
分身の俺が適当に疲れたように座ってる兵士に話しかけると怪訝そうな顔で聞き返すが、おじさんから貰ったバッジを見せながら用件を告げると兵士は急に立ち上がって敬礼しながら報告した。
「なるほど…俺らの判断では一旦この場から撤退して仕切り直したいと思ってるんだけど…勝手には兵を動かせないしなぁ…」
「撤退…で、ありますか?」
「ああ。もうこの戦場は完全に相手に呑まれてる。一旦下がって、ここから20kmぐらい離れた場所に陣を敷き直して立て直しを図った方がまだ今よりはマシな戦いになるだろうさ」
分身の俺の呟きに兵士が不思議そうに確認すると分身の女性が理由を話す。
「まあ前線司令官がその案を受け入れてくれればいいんだけど…もし大した作戦もなく頑なに現状を維持しようとしたらヤバいな…」
「…ありえなくもないのが怖い話ですね…優柔不断だったり柔軟に考えられない人だと多分そのまま負けるまで続けるでしょうし…」
「戦場で判断を誤るのは致命的だからね。今のように劣勢の場合だと特に…引き際を見極められなかったら一気に負けるだけだよ」
…分身の俺らが最悪の事態を想定して話していると兵士は理解出来なかったのか、ポカーンとしたような顔をしている。
…そして夕方。
完全に暗くなる少し前ぐらいの時間帯に戦場の最前線で戦っていた兵達が帰還してきた。
「…おっと。やーやー、みんなお疲れさん」
「…なんだ…?誰だ貴様は?」
「見た事無い顔だ」
「商人か?」
分身の俺が労いの言葉をかけて出迎えると兵士達はみんな疲れた様子ながら怪訝そうな顔をする。
「俺らラスタから援軍で来てんの。で、将軍から君達兵の指揮を任されてる」
「ラスタからだって…!?」
「援軍って…!」
「いや、そんな事よりあのバッジは…!」
「…待て。何も聞かされていないが、本当なのか?」
分身の俺は素性を明かした後にバッジを見せながら告げると兵士達がざわつき始め、その後ろから指揮官っぽい男性が出て来て確認するように聞いてきた。
「え。何も聞いて無い?とりあえずこのバッジは本物だよ。ほら」
「…確かに。コレは将官の地位に就いている者のみが身につける事を許されたバッジ…情報の行き違いか…?」
分身の俺が意外に思いながら言い、バッジを渡すと男性は受け取って確認した後に不思議そうに言いながらバッジを返してくる。
「じゃあ真偽を確かめたところで…ココの戦場の指揮を執ってる前線司令官はどこ?」
「俺だ」
分身の俺の問いに目の前の男性が答えた。
「あー…提案があるんですけど、聞いてもらえます?」
「言ってみろ」
分身の俺が言葉遣いを直すように言うと男性はとりあえず話は聞いてくれるらしい。
「このままじゃ負けると思うので、一旦撤退して立て直しを図った方が良いと考えてるんですが…」
「なんだと?撤退するのならば負けも同然。ココで粘れないようならばどこで戦おうが結果は同じだろう」
分身の俺の提案に男性は眉をひそめて否定的な意見を返す。
「現状では雰囲気が良くないんですよねー…敵の勢いに呑まれてしまっていて。ですので一旦仕切り直す事で雰囲気を変えたいと思っています」
「雰囲気だと?…馬鹿らしい、と言いたいところだが…確かに兵達の士気が思うように上がらない気がするな…」
「ソレで負けたら自分のせいにして下さい。よそ者が現場を知らずに勝手に振る舞ったから負けた…と言えば責任問題は避けられるでしょうし」
「…ふむ…そうだな。よし分かった、お前の提案を採用しよう」
…分身の俺が理由を話すと男性は思い当たる節があるような感じで呟くので…
分身の俺は背中を押すように逃げ道を用意してあげると意外にもアッサリと受け入れてくれた。
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