ニャルガッズ援軍編
青年期 204
…二週間後。
俺は急に王都の城に呼び出されてしまい…王様から直接『同盟国の援軍に行ってくれ』と頼まれ…要請を受ける。
なぜ俺なのか理由を尋ねると『コンテスティ侯爵とヴォードル辺境伯は隣国の相手に忙しく、ロマズスル辺境伯はこの前のライツとの戦いで戦力を消耗してるのを理由に断られた』とのこと。
…俺の所も領内がまだ完璧に安定してるとは言い難く、難色を示して他の軍閥の貴族達に投げようとしたが王様がまさかの頭を下げて頼み込み…
更に見返りとして結構良い条件や待遇を提示されてしまったので恩を売るためにしょうがなく王様の顔を立てて引き受ける事に。
「…絶対罠ですよ。このタイミングだと、領内の戦力を割かせて手薄になった領地を武力で実行支配しようとしてる…としか考えられません」
俺の話を聞いたお姉さんは敵対貴族の仕業である事を断言して警戒するように予想した。
「だろうね。もう少ししたらラグィーズ領とクライン領が完全に安定する、そしたら他の領みたく工作の隙が無くなるからその前に…って事じゃない?」
「坊ちゃんがこれ以上成り上がる前に潰しとこうって考えもあると思いますが…今からでも断った方が良いと思います」
俺が肯定して相手の考えを予想するとお姉さんは説得するように返す。
「大丈夫大丈夫。そもそも分身の俺一人で十分だし」
「…だといいんですが…」
「なーに、昔懐かしの傭兵スタイルで戦えばいいよ。それに…まだ見ぬ強者と戦えるかもしれないし」
「…まあ、坊ちゃんがそういうのなら…」
俺の楽観的な返事にお姉さんが不安そうに返し、適当な感じで楽しみながら言うとお姉さんは呆れたように引き下がる。
その翌日。
俺は変化魔法を使って分身した後に城へと出向いてここから東の同盟国『トラトラット』よりも更に東の方にある『ニャルガッズ』へ出発する事を報告し…
アッチに渡す手紙やら身分証明のためのバッジを受け取った。
そしてドラゴンに変身して分身のお姉さんと分身の女性の嫁二人を連れて直ぐに移動する。
ーーーーー
「…ん?アレか」
高速飛行すること約二時間ぐらいで援軍要請された同盟国へと着き、戦場を発見したので速度を落として旋回した。
「…えーと…前の国境があの山の近くだとすると…かなり攻め込まれてますね」
「…こんな上空から敵軍を偵察できるだなんて…いくらなんでもちょっと反則的過ぎやしないかい?」
分身のお姉さんが同盟国付近の地図を取り出して状況を確認して説明すると分身の女性はなんとも言えない顔で聞いてくる。
「戦う時には使わないよ。だって使う必要も無いし」
「坊ちゃんとりあえず本陣に突撃して一騎打ちの申し入れをするだけですもんね」
「…まあ確かにそうだけど…」
分身の俺の否定に分身のお姉さんが笑って賛同すると分身の女性は微妙な顔をしたまま呟いた。
「しかしこの辺り一帯が平原地帯で助かった。これなら敵の馬を奪って突撃するだけで終わるかも」
「…あんたが使う変化魔法が反則級に強いのか、それとも元々その変化魔法自体が反則級に強いのか…もう分からなくなってきた…」
「変化魔法は元から反則級に強いですよ?だから下手すると乗っ取られて『魔物化』しちゃうリスクが出てくるわけで」
分身の俺が幸運に感謝するように言うと分身の女性は呆れたような感じで呟き、分身のお姉さんが分かりやすく説明して答える。
「…つまりは変化魔法を使いこなせれば強い、って事か…」
「まあそうなるね」
分身の女性のまとめに分身の俺は肯定して返し、戦場の偵察は済んだので王都へと向かう。
「…ん?なんだお前らは?」
「援軍の要請を受けてラスタから来ました」
「…そのバッジは確かにラスタの…少々お待ち下さい」
…王様が居るであろう城に行くと城門の前の衛兵が怪訝そうな顔で尋ね、分身の俺が用件を告げてバッジを見せると兵士は直ぐに態度を改めて対応の仕方を変えた。
「…ただいま案内の者がこちらへと向かっております。お手数をおかけしますが、門の向こうでお待ち下さい」
「開門!」
兵士の一人がさっきとは全然違う丁寧な言葉遣いで話すともう一人の兵士が合図をして門が開く。
「…あっ。ラスタから来られた人達ですね?この度は援軍要請を受けて下さり、心より感謝申し上げます。私は案内役を仰せつかったフューリーと申します。どうぞよろしくお願いいたします」
「あ、はい」
「では早速案内いたします。こちらです」
分身の俺らがとりあえず城の庭を歩いていると、メガネをかけた少年…のように見える男が駆け寄って来て挨拶してくるので、分身の俺が適当に返すと男は先導するような感じで先を歩き始める。
「ただいま我が国はグロッソとの苦しい戦いが続いており非常に厳しい状況下に置かれております。聞けばラスタは周りの三ヵ国から侵攻を受けているにも関わらず防衛に成功して跳ね除けているご様子」
是非我々にもそのご恩恵に預かれるような…と、男は案内中に聞いてもいないペラペラと喋り続けながら城の廊下を歩いていく。
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