青年期 168

…数日後。



今度は俺の魔法適性が一切無い事に触れる噂が流され…



『貴族として不適格』というレッテルを貼るように世論が誘導されていく。



「いやー、だいぶ面白い事になってきたね。中々のやり手だ」


「そうですか?魔法適性どころか魔力すら持ち得ない貴族なんて結構居ますし、公爵の中にも当主が魔力を持っていない…なんて珍しい事でも無いでしょうに…」



俺が敵対貴族の攻撃を面白がっているとお姉さんは不機嫌そうに否定的に返す。



「だからだよ。他にも魔力の無い貴族の当主達がいる中でどうやって俺を特例や特別扱いにして引きずり下ろすのか…楽しみじゃない?」


「…それは…確かに…」



俺の問いにお姉さんは不機嫌そうに呟いた後に少し考えて不思議そうに呟く。



…そしてその一週間後にはガウ領の各地で領民達が領主である俺に対して反発するような運動を起こし…



更にその数日後には直ぐにデモ運動だかシュプレヒコールだかの武力を用いない反乱の騒動にまで発展する。



すると何故か『ローズナー男爵が国に対して反乱や内乱を起こそうとしている』だの『ローズナー男爵は反逆を目論んでいる』だの根も葉も無い悪質なデマまでもが出回り始めた。



ちなみにローズナーの方では暗躍とかを一切させていないのでアッチの領民達は困惑していて、逆にガウの領民達に反発しているらしい。



…とはいえ流石にこんな事態にまで発展したら政府の方も見逃すわけにはいかず…



俺は王都の城へと呼び出しを受けてしまった。



…城に行くと俺が通された玉座の間の中には貴族のお偉いさんがいっぱい居て…



俺を蹴落とそうとしているウィロー伯爵やパルパティ侯爵にロマズスル辺境伯、ソレに協力したダルベル伯爵達も居たが、俺の父親を始めとした侯爵や辺境伯といった味方になってくれそうな貴族は居なかった。



「…リデック・ゼルハイト=ローズナー=ガウ男爵。ココへ召喚された理由は承知しているな?」



俺が王様の前へと行くと王様が確認するように尋ねてくる。



「はい」


「そうか。では何か申し開きがあるのなら申してみよ」


「ありません」


「「「「な…!?」」」」



俺の肯定に王様は弁明の機会を与えてくれたが俺が拒否ると周りの人達が驚き、ザワつき始めた。



「…申し開きは一切無いと?では全ての事実を認めるのか?」


「一部以外は否定のしようがございませんので、認めます」



王様も驚いたように確認し、俺は反逆以外の内容を認めるように返す。



「その一部とは?」


「私が国に反逆しようとしている…反乱や内乱を起こそうとしている、という悪質なデマについて…でございます。おそらく過去のゼルハイト家の噂を利用しようと目論んでいた、と推測致しますが…」



王様の確認に俺はデマを否定しながらウィロー伯爵達を見て反撃するように言う。



「うむ。それについては…」


「陛下!恐れながら申し上げます。この者は我が国の情報を他国へと流していた疑いがございます、その疑惑が払拭されない限り今判断を下すのは早計かと」



王様が何か言おうとするとまだ話してる最中にも関わらずロマズスル辺境伯が遮って反論し始める。



「…今判断を下すのが早計であれば私にかけられた反逆罪の疑惑はこの場では不問と致す、という事でよろしいですか?ロマズスル辺境伯」


「なっ…!」


「待て。それとこれとは話が別であろう」



俺の揚げ足を取るような確認に辺境伯は驚き、伯爵が反発した。



「そうですか。ですがドードルやロムニアの情報については国に報告書を提出しております。情報の取引をするためにこちら側も多少の情報を差し出すのは当然だと思われますが?」


「自国の情報を敵国に流すなど立派な背信行為だ。反逆の意思ありと見做されるのは当然であろう」


「その件に関してはヴォードル辺境伯から『国境の防衛に役立つ大変貴重で有意義な情報だった』と高い評価を下す旨の報告を受けている」



俺が余裕の態度で流すように返して弁明をすると伯爵は反逆罪に持っていくように言い、王様の隣にいた公爵が判断材料となるような情報を告げる。



「ふむ…過去の誤った情報を利用して反逆罪を仕立て上げようとしたのならば相応の処分を下さねばな。しかし、誤りなのは『反逆の意思有り』とされる事であり、領地の問題に関しては一切の弁明をせずに認めるのだな?」


「はい」



王様はデマを流したり冤罪を被せようとした事については罰するような事を言って、ソレとは分けて話を整理するように再確認して来るので肯定した。



「…そうか。では領民を不安に陥れ、貴族として相応しくない振る舞い…貴族の名を貶めんとした罪により、罰としてゼルハイト卿より男爵の爵位一つとガウ領を没収する事とする」



…王様が仕方ないといった表情で俺への処分を下すとウィロー伯爵達がしたり顔で笑うがダルベル伯爵達は微妙な顔をしている。



「はっ。私は若く戦う事にしか脳が無いゆえに複数の領地では手に余り、陛下の期待を裏切るような事態を引き起こしてしまい誠に申し訳ございません。領地の運営に優れた者が統治すればガウ領の領民達も心安まる事でしょう…ローズナー領ではこのような事態が起きないよう誠心誠意努めて参ります」


「うむ。次は失敗せぬよう期待しているぞ」



俺は処分を甘んじて受け入れるように床に膝を着いて皮肉の交えた謝罪をし、ついでに毒まんじゅうを食べる奴に嫌がらせをすると王様が俺をフォローするような言葉をかけてきた。

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