青年期 158
…それから二週間後。
「団長。なんだい?あたしに話しってのは」
女性は俺の部屋に入って来ると呼び出された用件を尋ねた。
「いやー、俺も貴族としての立場があってね…今年で二十歳になるからそろそろ跡継ぎの事を考えないといけないわけで…」
「なんでそんな話をあたしに?あたしにはドードルの貴族に知り合いなんて居やしないし、この国なんてもってのほかだから紹介なんて出来ないけど…」
と言うかあんたならどこからでも引く手数多だろう?と、俺がまだ話してる途中なのに女性は内容を勘違いするように困惑しながら返す。
「まあ単刀直入に言うなら俺の妾とか側室とかで第三夫人として子供を産んで欲しい。当然嫌なら冗談と思って断ってくれ」
「え?…え??」
俺は誤解や勘違いされないように直球で用件を告げ、断られやすい雰囲気を作るために適当な感じで逃げ道を用意すると女性が理解出来ないような反応をする。
「別に返事はいつでもいいからさ」
「ちょ、ちょっと待った。子供産むってつまり結婚…って事?」
「まあそうなるね。ただ正式な婚姻関係になるわけじゃないけど」
俺が気を利かせて自室から出ようと立ち上がると女性が確認してきて、俺は肯定した後に訂正した。
「第三夫人ってのは…正妻は決まっているのかい?」
「いや、まだ。でも貴族同士の結婚って大抵政略結婚であって、恋愛結婚にはならないじゃん?だから身体の相性とかで子供が出来ない…とかになると困るから今の内に手を打っておかないと…」
「…あたしが第三って事は第二はもしかして…」
「多分予想通り、あの先生。『貴族と結婚出来るなんて名誉な事』って即答で快諾してくれた」
女性の問いに否定してから側室の話を持ちかけた理由を話すと予想するように呟き、俺は肯定しながら軽く説明する。
「でも貴族ったって男爵でしかないし…領地は二つ持ってるけど、それも将来どうなるか分からないしなぁ…」
「…保険という意味で子供が欲しいって事は分かったけど…どうしてあたしなんだい?見ての通りあの大魔導師様のような可愛げの欠片も無いんだけど…」
俺が微妙な顔で自虐的に呟くと女性は納得したように呟いた後に不思議そうに…自虐的な感じで両手を広げながら疑問を尋ねた。
「もしかして自分の外見の良さに気づいてない?…いや、まあそんなもんか…とりあえず一番重要なのは才能で、次に知り合いだからって理由であって外見は最低限普通であれば良かったんだけどね…」
「才能…ね」
「先生は回復魔法においてはこの国で右に出る者は居ないほどの才能があるし、ソッチはドードルで屈指の強化魔法の使い手でしょ?」
俺の話を聞いて女性はどこか含みのある感じで呟き、俺は確認するように聞く。
「…でもこんなあたしでも本当にいいのかい?コッチとしては貴族と結婚出来るんなら生活に困る事は無くなるからありがたい話だけど…」
「ちゃんと幸せに出来るかどうかは分からないけど、最低限の裕福な暮らしぐらいは保証するよ。子供が何人出来ようが一生生活には困らせないようにする自信はある」
「……分かった。じゃあ…あんたの子供を産んであげる」
女性の確認に俺がお姉さんに言ったのと同じ言葉でプロポーズするように告げると女性は少し考え、恥ずかしがるように了承する。
「お、ホント?助かるよ、ありがとう」
「あ、でも初夜とか夜の方はあたしに決めさせて欲しい。心の準備とか色々と準備が必要だし…」
「オッケーオッケー。じゃあ夜の方の都合はソッチ合わせよう」
俺がお礼を言うと女性は焦るように若干早口で要求して来るので俺は軽く受け入れた。
「…話は終わりました?」
「聞いてたの?」
「だって気になるじゃないですか」
するとお姉さんがドアを開けて確認してきて、俺の問いに笑いながら答える。
「はぁ…てっきりこの前の私設兵団の話かと思って来たのに…まさか求婚されるだなんて思ってもみなかった…」
「とりあえず家はどうしよう?妊娠中はしばらく猟兵隊から離れる事になると思うけど」
「「あ…」」
女性のため息を吐きながらの疲れたような呟きに俺が今後の事を考えながら聞くと女性とお姉さんは今言われて気づいたかのような反応をした。
「この拠点に仮住まいを作るか、ローズナー領の適当なトコに屋敷を買うか建てるか…」
「そうですね…子育てとかもありますし…」
「あたしとしてはこの拠点内の方が安全だからココに仮住まいを作ってローズナー領?だっけ?のどこかに移り住める家を用意してくれた方が助かるんだけど…」
俺が考えながら呟くとお姉さんも将来を見越したように呟き、女性が割と現実的な提案をする。
「じゃあそうしようか。なるべくなら事前に準備していた方が楽だからココに建てる場所と、ローズナー領のどこが良いか決めよう」
「私は今の自室でも構いませんが…」
「…あたしもこの拠点内ならなるべく新しく建てるより今ある施設内を活用した方が良いかな」
…この拠点内の地図とローズナー領内の地図をテーブルに広げながら言うとお姉さんは特に要望を言わず、女性もその意見に賛同するような事を言い出す。
「うーん…じゃあ、一階のココの部屋は?流石に妊娠中は階段を登り降りするのも辛いでしょ?」
「…そうだね。空き部屋ならソコを使わせて貰うよ」
「じゃあ私は妊娠中の間はその隣の部屋を使わせて貰います」
俺が少し考えて二人が妊婦になった時の事を想定しながら配慮するようにこの本部の建物の一階の部屋を提示すると、女性とお姉さんはアッサリと受け入れた。
「…だったら、俺がその間この真ん中の部屋を使うから、その両隣の部屋を二人が使う…ってのは?何かあったら近くにいる俺が直ぐに対応にあたれるし」
「良いと思います!」
「うん。あたしも異論はない」
…お姉さんと女性が隣同士で喧嘩とかしたら困るので俺が間に入るように提案すると、二人はこれまたアッサリ受け入れて了承する。
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