青年期 150
…その後、俺らは朝食の残りを食べてから観光へと出かける。
「…やっぱりロムニアに比べるとドードルの方がまだ治安が良い方ですね」
「そう?王都だからじゃない?」
「町でもならず者達に絡まれる事は無かったですし」
「一泊しかしてないからだと思うけど…まあ確かに観光客とか一般人が迷い込みそうな所に危なそうな場所はなかったね」
街中でお土産を物色しているとお姉さんが比較するような事を言い、俺は適当な感じで返す。
「でも行って良かったですね。『召喚術』や『精霊術』を教えて貰えたので当初の目的は達成出来ましたし」
「全くだ」
お姉さんの思い出を語るかのような発言に俺は同意しながら頷いた。
…それからも観光を続ける事、三日後。
朝早くから部屋を尋ねてきた王様に魔石を売り、俺らは出発の準備をして傭兵団と合流する。
「さーて、今度は将軍の居る都市に行って…ラスタに戻った後に辺境伯の城塞を通って拠点に帰還だ」
「あの都市までは…約一週間、ってとこですかね」
「途中修行が入るからもう少しかかるかも」
「あ…確かに」
「おっと。ごめんごめん、どうやら待たせたようだね」
俺とお姉さんが馬車に乗る前に期間について予想し合って話してると女性が小走りで駆け寄って来て軽く謝った。
「え…国王の護衛は?俺らについて来て大丈夫なの?」
「何言ってるんだい?あたしは元々ただの雇われだよ。それに今は猟兵隊の一員なんだからついて行くのは当たり前だろ」
「そうなんだ。てっきり依頼が終わったからもう抜けるとばかり思ってた。そのまま残ってくれるんなら助かるよ」
「そうかい?そう言って貰えると嬉しいよ」
俺の確認に女性は怪訝そうな顔をしながら答え、どうやら俺とお姉さんの勝手な勘違いだったらしく…
俺は早とちりしてた事を伝えて謝意を示すと女性は何故か照れたように笑う。
そして村や町を経由しながら進む事、約9日後。
ようやくラスタとの国境を守っている辺境伯のいる第二の王都とか呼ばれる都市に到着した。
「…おおー…久しぶり…」
「結構かかりましたね」
「まあ急いでるわけじゃないからしょうがない」
俺は都市の中に入ると馬車を降りて遠くに見える壁を見ながら懐かしむように呟き、お姉さんも降りてきて背筋を伸ばしながら言うので笑いながら返す。
「とりあえず4日、休養してラスタに帰ろう」
「はい。分かりました」
「…この前泊まったトコが空いてたらいいんだけど…」
「…そうですね」
俺が滞在期間を決めるとお姉さんも賛同し、俺は隊長達を集めて指示を出した後に宿を探しに行く。
…翌日。
「ん?はーい」
朝食を食べ終わって片付けをしているとドアがノックされる。
「貴殿が傭兵団『猟兵隊』の団長か?」
俺がドアを開けると兵士が立っていて、俺を見て確認してきた。
「そうですけど…」
「ガナンド様がお呼びだ。都合のつく時間を教えてもらおう」
俺の返事に兵士は若干威圧的な態度で用件を伝える。
「別にいつでも問題ないですよ」
「…今すぐにでも、か?」
「はあ…」
「ならばついて来るがいい」
俺は観光以外に予定は無いのでそう返すと兵士が怪訝そうな顔で確認し、適当な感じで肯定すると指示を出すように言って歩いて行った。
「…ちょっと行ってくる」
「分かりました」
…兵士の態度になんだアイツ…?と思いながらも一応お姉さんに伝え、俺は兵士を追って部屋から出る。
そのまま兵士の後をついて行くと壁を二つ越えた先にある城へと案内された。
「いやぁ団長殿、良く来てくれた」
「お久しぶりです」
そして城の謁見の間みたいな部屋に通されると男性が玉座のような椅子から立ち上がって挨拶し、俺も挨拶を返す。
「噂は良く耳にしていましたぞ。随分と活躍しているそうではないですか」
「ありがとうございます。これも団員達の頑張りのおかげです」
「ははは!精鋭揃いに偽り無し、か」
男性の褒めるかのような言葉に俺がお礼を言って団員達の功績へと持っていくと男性は笑いながら返した。
「ロムニアの方にも行かれたらしいが…どうでした?」
「食べ物は美味しかったですが…やはり内戦の影響か町の治安はあまり良くなかったですね」
「なるほど…もう少し詳しく聞かせて貰えないだろうか?」
男性が他の国に行った事にも言及して尋ねてくるので簡単に感想を話すと興味深そうに呟き、続きを促してくる。
「分かりました」
「助かる」
「ではどこから話したものか…」
俺はロムニアに行った時の事を詳しく話そうとしたが、辺境伯令嬢を誘拐した刺客達の事も関わってくるだけに少し考えながら呟く。
「まずはなぜロムニアに行こうと思ったのか…その理由を聞かせてくれないか?」
「分かりました。その前に予備知識として…えーと…ザラーヌ辺境伯の令嬢が誘拐されそうになった事件…はご存知ですか?」
ありがたい事に男性が話の取っ掛かりを作ってくれるように聞いてくれ、俺は前提としての話をするために確認を取った。
「ああ。アレは衝撃的で有名だった…ヘレネー殿と団長殿が未然に防いでいなければロムニアとの国境はどうなっていた事か…」
「その時の刺客に『精霊術師』というかなり珍しい魔法使いがいまして…」
「精霊…術師…?」
「はい。精霊術師とは…」
男性の腕を組んで厳しい顔をしながらの呟きに俺はロムニアに行くキッカケとなった最初の話から始める事に。
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