青年期 149
…翌朝。
「…ん?」
お姉さんと二人で朝食を食べていると部屋のドアがノックされる。
「はーい」
「団長、今時間いいかい?」
俺が返事をしながらドアを開けると女性が立っていて、確認をとって来た。
「大丈夫。なんかあった?」
「いや…」
「朝早くから済まないな。猟兵隊が戻って来たと聞いて居てもたってもいられなくてな」
俺の問いに女性がちょっと困ったように笑いながら呟くと後ろから国王が現れる。
「あー…なるほど」
「アーシェ・クライン大魔導師も同室か?」
「はい。中へどうぞ」
俺は女性が訪ねて来た理由を理解して呟き、王様が確認するように尋ねるので肯定して部屋の中へと招く。
「失礼する」
「あ」
王様が挨拶して中に入るとまだ朝食を食べてる最中のお姉さんが王様を見て気まずそうな顔をした。
「食事中にすまない。しかし今日は空いてる時間が朝の今しかないのだ」
「あ、いえ…それなら朝食もまだなのでは?」
「後で執務中につまむ。機会を無駄には出来んのでな」
王様の軽い謝罪と理由を聞いてお姉さんは一旦食事をやめて疑問を尋ね、王様は食事を後回しにする旨を告げる。
「…それではこちらをお持ち下さい」
「…コレは?」
俺が空間魔法の施されたポーチから紙に包まれたサンドイッチとハンバーガーを取り出して渡すと王様は不思議そうに聞く。
「サンドイッチといった軽食です。お姉さんも貰う?」
「!良いのかい!?あたしまで…!だってソレ、あんたの手作りだろう?」
「王様の護衛って朝食もろくに食べられないんじゃない?早くてパパッと食べられる物なら直ぐに食べれるでしょ」
「やったぁ!ありがとう!またあんたの料理が食べられるなんて最高だよ!今日はなんてツいてるんだ…!」
俺は軽く説明した後に女性にも確認すると驚きながら若干遠慮するような事を言うので、俺がちゃんと飯を食えよ…と暗に含みを込めながら渡すと女性は大袈裟なほどに喜ぶ。
「…そんなに美味いのか?」
「ははっ、それは後から食べてみてのお楽しみってトコだね」
王様の軽く驚いたような確認に女性は上機嫌の様子で笑いながらイジワルするように返す。
「そうだな。楽しみは後で取っておこう…それよりも…」
「今回は前回よりも魔石の種類が二つ、増えています」
「…まさかとは思うが、トロールとサスカッチの魔石か?」
「はい。既にご存知とは流石ですね」
王様が話を魔石の売買へと持って行くので最初に朗報を告げると王様は驚いたように確認し、俺は肯定しながら褒めた。
「魔法協会でも最近納品されたばかりだというのに…どうしたものか…」
「坊ちゃんの個人的な持ち物から売買する分には問題ないかと思われます」
「そうか!ならば是非売ってくれ!どのような質で、どの程度の質かを協会に先んじて調べる事が出来るとは…!」
王様の悩みながらの呟きにお姉さんが後押しするように言うと王様は喜んで魔石の売却を促してくる。
ーーーー
「…陛下。そろそろ…」
「なに?くっ…!もうそんな時間か…分かった」
女性の時間を見ながらの声掛けに王様は焦ったように返して魔石の選択を終えて金を数えながらテーブルの上に置いていく。
「…確かに。金額丁度です」
「ありがとうございます」
「いや、こちらこそ。…滞在は4日と聞いたが…出発する前にもう一度機会を貰えないだろうか?」
お姉さんが精算をして俺がお礼を言うと王様は少し迷ったかのようにそう確認してきた。
「こちらとしては願ってもない話ですが…」
「そうか!ではまた」
「はい。ありがとうございます」
俺の返答に王様は気を良くしたかのように上機嫌の様子で挨拶し、女性と共に部屋から出て行く。
「…それにしてもよくあんなに大量に買うもんだ」
「そりゃそうですよ。魔石の個人所有なんて坊ちゃんから買うか、協会から横領する以外にないですし」
「あんなにいっぱい買っても魔力の回復とか魔法の威力を上げる以外に使い道ある?」
「めちゃくちゃいっぱいありますよ!なに言ってるんですか!研究に使おうもんなら一回の試行で一つ減るんですから数はいくらあっても全然足りないですって!」
「そ、そお…?」
俺の疑問にお姉さんは何言ってんだコイツ?みたいな目を向け…確認するように聞くと今度は詰め寄るように力説してくるので俺はその圧に思わず一歩退がる。
「それに坊ちゃんが言うような『チャージ』や『ブースター』みたいな使い道だけでも数はいくらあっても多すぎる事はありませんし、そもそも手に入れる手段がほとんど無いに等しいのに金で買えるとなれば誰だって大量に買いますよ」
「あ、うん…そうなんだ」
なおも力説するように語るお姉さんに俺は変なスイッチ押しちまったか…と思い、困惑しながらもとりあえず相槌を打つ。
「私だって毎週坊ちゃんから報酬としていくつかの魔石を頂戴していますけど、もしもの万が一の場合の事を考えて保険を用意すると自由に使えるのは月に数個程度ですし…」
「え、そうなの?」
「はい。協会から支給される魔石が足りなくなった時とかによく研究用の魔石を都合してくれ…と色んな人から嘆願書のような手紙が山ほど届きます」
お姉さんが自分の事を例に挙げて話し、俺が軽く驚いて確認すると意外な実情を告げる。
「へー…研究者も大変なんだな…」
「…そこらの小石を拾うように集めてる坊ちゃんにはあまり実感が湧きにくいとは思いますが…魔石って基本的に厳重保管、厳重管理が必須な貴重品なんですよ?」
「みたいだね」
「魔法使いならみんな喉から手が出るほどに欲しがってるモノなので、100個でも1000個でも…魔石に全財産を注ぎ込んでも後悔は無いほどの価値があるんですからね」
俺はマジであんまり興味が無いので適当な感じで返すもお姉さんはこれでもか!というぐらいに力説した。
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