青年期 139
…それから三日後。
刺客だった男達が三人揃ったので団員見習いとして匿っていた少女二人を引き渡した。
…なんでも精霊術師である青年と凄腕の魔法使いのおじさんは別行動中らしく、合流するのはまだ先になるとの事。
「やっとお荷物が居なくなったからこれで気兼ねなく観光ができるね」
「そ、そうですね」
「にしても今度はどこに行くつもりなんだろ?聞いた話ではどこもかしも過激派の兵達が探し回ってるみたいだけど」
俺の言葉にお姉さんは少し困ったように返し、俺はふと思いついた疑問を口にする。
「そもそもいつまで逃げ回るつもりなんでしょう?今の調子ではいずれ見つかって捕まる気もしますが…」
「…確かに。どっかの派閥が過激派を止めない限りイタチごっこの繰り返しだしなぁ…」
ま、俺らには関係ないけど。と、俺はお姉さんの心配するような呟きに軽いノリで適当に返した。
「…でも実際問題止められるんでしょうか?抑え切れなくてこんな事態になったんですから、難しいと思いますが…」
「どうだろう?中立派と穏健派が手を組めば止められるとは思うけど…未だに止められてないって事は派閥内でも対立してて纏まりきれてない状態かもね」
お姉さんは少し考えるように聞いてくるので俺も少し考えて内ゲバを予想しながら答える。
「…そんな事あります?」
「さあ?でも今の状況を見る限りあり得ない事では無いんじゃない?」
「…確かに」
お姉さんの微妙な感じで笑いながらの問いに俺が適当に返すと納得したように言う。
「…こんな状況でも内輪揉めって…派閥というのは大変ですね」
「人が集まって組織が出来ればいつまでも一枚岩ではいられないからなぁ…猟兵隊だって俺が抜けたら次の団長の座を巡って大変な事になるだろうし」
「あー…なるほど。確実に派閥化しての争いや権力闘争が起きると思います」
「でしょ?」
「はい」
お姉さんが呆れたように呟き、俺は身近な例を出して分かりやすく伝えるとお姉さんは納得して理解したように頷いた。
「まあでも…坊ちゃんが抜ける状況にも寄りますけど…」
「死ぬか乗っ取りか追放か…後は貴族としての仕事が忙しくなって傭兵団を抜ける可能性もあるかも…」
「うーん…基本的に死ぬ以外で争いが起きる事って無いと思いますよ?だってほとんどの人は坊ちゃんを慕って付いて来てるんですから、抜けた坊ちゃんの後を追うでしょうし」
お姉さんの呟きに俺は仮定の将来を想像しながら原因を予想するとお姉さんが否定的に返す。
「…俺がもし貴族の仕事で忙しくなったとしても結局今と同じく部隊で勝手に動いてくれるから別に抜ける必要も無いしなぁ…」
「頭が無くとも運営に全く支障が無い組織と言うのは理想的ですね。コレも団員達がハンターだからでしょうか?」
「だろうね。自分達で考えて行動してくれるってのはありがたい限りだ」
俺が微妙な顔で若干悲しい気持ちになりながら呟くとお姉さんは笑いながら褒め、俺は肯定した後に誰も居ないのに両手を合わせて感謝する。
…そして一週間後。
「…げげ…マジか…」
「どうかしたんですか?」
観光中に拠点の分身の分身が解除されてアッチの状況を把握した俺が呟くとお姉さんが不思議そうに尋ねてきた。
「ソバルツがまた攻めて来たみたいで侯爵から援軍を要請された」
「…え。…どうするんですか?」
「…コッチからアッチに戻るのにしても早くて一ヶ月はかかるからなぁ…かと言って分身達を50とか100人にして行かせると強すぎて不自然過ぎるし…」
俺の説明にお姉さんが驚いて足を止め、対応を聞いてくるので俺は対応を考えながら呟く。
「今回はもう断るしか無いのでは?流石に無茶振りが過ぎるというか…あり得ないとは思いますけど、嫌がらせとかに近いような…」
「まあアッチもダメで元々、無理や無茶を承知で頼んで来てるからね。断っても何の問題も無いんだけど…」
お姉さんが諦めたように侯爵を下げるような事を言い出し、俺は勘違いされないよう侯爵をフォローするように一応アッチもそれを踏まえて依頼して来てる事を告げる。
「うーん…しょうがない。ガウの兵を動かすか」
「大丈夫なんですか?」
「分身の俺が指揮を執る。あと守備、防衛に限定させて交戦時は強歌弱歌をかければ多分大丈夫」
「なるほど。セイレーンの技を使うなら問題無さそうですね」
俺の悩んだ末の決断にお姉さんが兵の質や損失を心配するように確認するが、俺は変化魔法でバフデバフをばら撒く事を告げると安心したように返す。
「ガウからだと南の国境まで5日ぐらいかかるかな?早速行動に移さないと…」
「軍事移動だとそれぐらいかかるかも知れません。私達猟兵隊なら騎兵の集団なので三日ぐらいで着くと思いますが」
「…はぁ…侯爵の方にも一応直接断りを入れとかないと…使いの人が勝手にある事無い事報告すると困るし」
「そうですね。その方が良いと思います」
俺が期間を予想しながら予定を立てながら呟くとお姉さんも予想を返し、俺の面倒くせぇ…と思いながらため息を吐いての発言に賛同してくれた。
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