青年期 134
…それから二日後。
敵兵達が引き返してくる様子も無いので領主から報酬を受け取って俺らは町を出る事にした。
「…鍵ってなんでしょうね?」
「…ん?どうしたの突然」
移動中の馬車の中で本を読んでいたお姉さんが突然よく分からない事を言いながら話しかけてきて、俺は瞑想を中断しながら聞く。
「いえ…坊ちゃんがこの前言ってた事をふと思い出しまして」
「この前言ってた事?」
「『封印』や『儀式』、『契約』で手に入る力だと仮定するならその『鍵』に該当するのは一体どんな物なのかな…と」
お姉さんの曖昧な感じの返答に俺はどれの事か思い出せないのでおうむ返しのように聞くと、お姉さんは疑問に思った内容を話してくる。
「あー…なるほどね。兵器や封印なら文字通りの『鍵』なんだろうけど…儀式や契約なら比喩表現の可能性があるのか…」
「封印なら指輪や剣といった魔道具の可能性もありますが、儀式ならば人という事も考えられます」
「…確かに。王家の血筋とかが鍵…って可能性も無くはない…か…?」
俺が納得しながら考えるように呟くとお姉さんは予想を告げ、俺も理解を示しながら前世の記憶の知識を漏らしながら肯定的に捉える。
「…うーん…もし今度会ったらそこらへん聞いてみようか。会えるか分からないけど」
「そうですね」
「どこに行ったかは聞いてないけど都市部あたりに行けば会えるかもね」
「直接会えなくても何かしらの情報は手に入る可能性は高いでしょうし…」
俺の考えながらの言葉にお姉さんが賛同し、適当な感じで言うとお姉さんは期待通り行かなくても収穫はある…的な感じのフォローをするように返した。
ーーーーー
「…団長。着いたぞ」
「…お。ありがと」
夕方になる頃に道中の村に到着したらしく団員が馬車のドアをノックして報告するので俺はお礼を言って馬車から降りる。
「さーて、メシメシー」
「お腹空きましたね」
「…まさか…!お前達は…!」
俺とお姉さんが宿屋を探そうと村の中を歩き出すと近くに居た兵士が驚いたように俺たちを見た。
「なんでお前達がココにいる!」
「…誰?」
「…さあ…?」
兵士の警戒した様子で聞いてくるので俺がお姉さんに尋ねると不思議そうに返す。
「…多分人違いじゃない?」
「そんなわけあるか!『スバンダ』を防衛していたのは確かにお前らだった!見間違うわけが無い!」
俺が相手の勘違いだと思って聞くも兵士は否定して断定するような感じで根拠を告げる。
「『スバンダ』で『防衛』って…もしかしてあの町に攻めて来てた兵士の一人?」
「この村を占拠でもしに来たか!?」
「いやいや…俺ら旅の傭兵団だから。町を防衛してたのは仕事の依頼を受けてたからだし」
「…傭兵団?…なんだ、傭兵か…紛らわしい。穏健派がついに牙を剥いたかと焦ったぜ…」
俺の確認に兵士は何を早とちりしたのか持っていた槍を構え、俺が呆れながらツッコミを入れるように言うと構えを解いた後に息を吐いて呟きながらどこかへと歩いて行く。
「…もしかしてこの村って過激派の拠点だったりするのかな?」
「…どうでしょう?でも支配下にはあるような言い方でしたね」
俺が面倒な事になりそうな予感がする…と思いながら聞くもお姉さんは断定を避けるような感じで言う。
「ま、どうせ朝一で出て行くから関係ないか」
「ですね」
俺は長居しなけば問題無いか、と気持ちを切り替えるように言って改めて宿屋を探す事に。
…翌日。
まだ薄暗い時間に俺らは村を出て目的の都市へと向かう。
「あと村一つなので…明日には都市に着きそうですね」
「うん。何も無ければ良いんだけど…」
お姉さんが地図を見ながら予想を話し、俺は昨日の出来事を不安に思いながら呟く。
「…過激派達が勘違いして襲撃して来なければ良いんですが…」
「まあ返り討ちには出来るけどその後がまた面倒だよね…」
お姉さんも心配したように最悪の状況を予想するように呟き、俺は倒した後の事を考えながらため息を吐いた。
「アッチから先に襲って来たのなら正当防衛が成り立つ…成り立ちますかね?」
「話や理論が通じるんであれば成り立つハズだけど…通じなかったらアッチが諦めるまで戦うしかなくなるからなぁ…」
お姉さんの不安そうな確認に俺は前提を基に返し、もし相手がイカれていた場合も想定しながら展開を予想する。
「…話が拗れて中立派や穏健派まで敵に回ると厄介な事になるような…」
「それは実質国を相手取って戦うのと同義だからね。まあそうなると流石に他国に隙を見せる事になりかねないから無いと思いたい…」
でも宗教が絡むと後先考えなくなるからなぁ…と、俺はこの世界の歴史と前世の記憶での知識を思い出しながら微妙な顔で呟く。
「…過激派とは関わりたくないものですね」
「ああ言うのは人の言葉が話せる獣みたいなものだし。言葉も話もある程度は通じても、結局は自分の主張を通すために暴力に頼るんだから一生分かり合えないでしょ」
「…確かに」
お姉さんの嫌そうな顔での発言に俺が呆れながら賛同するとお姉さんは嫌な顔のまま同意した。
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