青年期 115

…そして翌日。



俺らは朝早くから村を出発し、夕方ぐらいに着いた町で一泊する。



…次の日も同じように朝早くから出発して夕方前に着いた村で休憩を取って一泊し…



王都を出て大体三日後には『ザーラヌ辺境伯』とやらが治める『グレグーン領』の領内へと入った。



「…あの令嬢の話だとあと二日後にはロムニアとの国境付近に着くみたいだね」


「この前の将軍様と同じく広大な領地ですよね…この国では他の辺境伯の方々もこれぐらいの領地を持ってるんでしょうか?」


「さあ?意外とその二人だけだったりして」



休憩で立ち寄った村の飲食店の中で俺が予想しながら予定を告げると、お姉さんが羨ましそうに呟きながら聞いてくるが俺はさして興味の無いので適当に返す。



…それから二日後。



道中何も問題は起きなかったので、予定よりも意外と早く…昼過ぎ頃には辺境伯令嬢の家がある都市へと到着した。



「ありがとうございました。護衛はここまでで十分です」



お嬢さんのおかげで都市に入る際の確認作業が無くなったのでスムーズに都市内に入るとお嬢さんが馬車から降りて来てお礼を言う。



「道中何も問題が起きなくて良かったです」


「はい。それも猟兵隊のみなさんのおかげだと思います」



俺が社交辞令のように言うとお嬢さんは同意しながら団員達を褒めるように返す。



「ありがとうございます。…この前の刺客が牢から逃げ出して再度襲撃に来るかと思いましたが…残念…いえ、対応する手間が省けました」


「…あ、はは…お金の方は後から届けさせますので…申し訳ありませんが少々お待ちください」



俺はお礼を言って軽く頭を下げた後に予想を話して残念に思いながら呟き、お嬢さんを不安にさせまいと言い直すとお嬢さんは困ったように笑って報酬の事を告げる。



「…じゃあ三日ぐらい休養してからロムニアに向けて出発しようか」


「そうだな」


「うむ」


「賛成!」



お嬢さんがいなくなった後に隊長達を集めて予定を話すとみんな賛同してくれたのでそのまま解散させた。



「さーて、宿を探してから観光だ」


「はい!」



俺は周りを見ながら予定を告げるとお姉さんが嬉しそうに返事をする。



「…ココはアッチの将軍のトコと違って城塞都市…って感じでは無いね」


「そうですね。どちらかと言えばヴォードル辺境伯の所と近いかもしれません」


「あー…確かに」



都市内の様子を見ながらの俺の感想にお姉さんが同意しつつ似ている例を挙げるので俺は納得して賛同しながら宿を探す。



その翌日。



朝食を食べ終わって出かける準備をしているとドアがノックされた。



「はいはーい…どちらさま?」


「貴殿が傭兵団『猟兵隊』の団長か?」



俺が返事をしながらドアを開けると兵士が立っていたので素性を尋ねると逆に確認し返される。



「そうですけど…なにかありました?」


「…領主であるザーラヌ辺境伯が貴殿に会いたいと申している。都合のつく時間を教えてもらいたい」



俺の肯定しながらの問いかけに兵士は安堵して用件を話す。



「あー…じゃあ今で」


「今直ぐでも問題無いと?」


「はい」


「…では案内しよう」



俺は面倒な事を直ぐに終わらせようと返すと兵士が驚きながら確認し、肯定すると気を取り直したように告げた。



「ちょっと行って来る」


「分かりました」



俺が声をかけるとお姉さんは笑顔で手を振って見送る。



そのまま兵士について行くと…城では無く宮殿のような建物に着いた。



「へー、城とかじゃないんだ…」


「ココまで敵が来る事は無いから城は必要無い…との考えだそうだ」



俺が意外に思いながら呟くと兵士が理由を教えてくれる。



「将軍!お連れしました!」



建物の三階の奥の方の部屋に行くと兵士がドアの前で報告し、両端に居た兵士がドアを両開きで開けると…



「…よく来てくれた。此度は娘が世話になったそうで…」



腰に剣を刺した鋭い目つきの、いかにも百戦錬磨であろう強者の雰囲気を纏うおじさんが挨拶をした後に礼を言うように軽く頭を下げた。



「あ、いえ。こちらこそ報酬の高い仕事が貰えて感謝しています」



俺はいきなりの事に困惑しつつも謙遜しながら返して感謝の言葉を返す。



「…こちらから王都へと送る際にはいつもの護衛に加えて腕の立つ護衛を5人ほど付けたのだが…全く相手にならず子供扱いされ、簡単に倒されてしまったという報告を受けている」


「ですよねー…でも半端に強かったら毒針で死んでいた可能性もあったので、その戦力差のおかげで護衛の人達は命拾いしたとも言えます」



おじさんの呆れたような発言に俺は同意しながら最悪の事態を免れた幸運の方に言及する。



「…娘を助けてもらった事に関しては感謝の言葉も無い。ヘレネー殿にもぜひ直接お礼を言いたかったのだが…」



おじさんは微妙な顔になるも再度お礼を言うように頭を下げ、女性がこの場に居ない事を残念がるように呟く。



「あー…呼んで来ます?今の時間なら多分馬の世話や積荷の見張りとかしてると思いますけど」


「いや、その必要は無い。貴殿の時と同じく兵に呼びに行かせているからな」



俺の確認におじさんは首を振って断り、理由を説明して俺に背を向けて玉座のような椅子の所まで歩いてその椅子に座った。

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