青年期 108
「…あんた…!どこ行ってたんだい!令嬢をほったらかしにして…!」
お嬢さんの家に戻ると焼け焦げてたり血や泥で汚れてたりで結構ボロボロになってる女性が怒ったように詰め寄って来る。
「ごめん、最後の刺客が来てたから…」
「…じゃあしょうがないね。しかしまた無傷とは…」
俺の言い訳に女性は担いでる青年を見て納得したように呟き、羨ましそうに呟いた。
「ソッチは結構大変だったみたいだね」
「ああ…あとちょっと、ってところで邪魔が入って逃げられた」
「邪魔?」
「王都の警備隊さ。どうやら戦ってる内に王都に近づいていたようでね…」
俺が労うように言うと女性は微妙な顔をしながら返し、疑問に思いながら聞くとため息を吐きながら話す。
「へー、そりゃ災難だったね」
「でも次は逃がさない。明日の同じ時間に同じ場所で、って約束したからね」
「ま、死なない程度に頑張って。令嬢の護衛は俺がしとくし」
俺の同情しながらの言葉に女性は拳を握りながら強気に笑うので俺は青年を下ろしてロープで拘束しながら応援する。
「頼んだよ。…それよりソイツは強かったかい?」
女性が笑いながら返すと興味を持ったように話題を変えて疑問を聞いて来た。
「かなり強かった。俺でも無傷とはいかなかったぐらいには」
「…いや、無傷に見えるけど…」
「見た目はね。未だに火傷した手がジクジク疼く」
俺の感想に女性が俺の頭からつま先までを見てツッコミを入れるように返し、俺は左手を見せながら痛みがまだ残ってる現状を説明する。
「なるほど。事後の応急処置が完璧だったから跡が残ってないのか…」
「流石に精霊相手はキツかった。相手がガス欠で倒れてくれたから良かったけど」
「は?…せい、れい…?」
納得したように呟いた女性に感想を告げると理解できないような反応をした。
「そ。コイツは俺も最近古文書だか魔導書での文献で知った『精霊術師』らしい」
「…って事は、精霊ってのはあの精霊かい!?実際に存在したんだ…!」
俺が肯定すると女性は普通に信じた後に確認するように驚愕して嬉しそうに呟く。
「いやー、俺もびっくりした。ただ…超強い代わりにかなりの魔力を消費するみたいだけど」
「…なるほど。あたしも精霊術師なんて魔法協会で読んだ事のある本でしか知らなかったからね…そうなんだ」
「まあ粘ったおかげで魔力切れになってくれて事なきを得た、と」
俺の説明に女性は考えるように納得し、俺はガス欠の言い方を変えて説明する。
「…しかし実際に精霊を見る事が出来たなんて…あんたとんでもない幸運だったね!」
「全くだ。ソッチだったら死んでたかも…」
「一体なんの精霊だったんだい?」
女性が嬉しそうに喜びながら羨むように言うので俺は同意しつつも注意を促すように返すと相手した精霊の正体を聞いてきた。
「多分『火』だと思う。斧や鎧とか鉄を溶かせるレベルの火力の魔法を軽々と使ってて、本体もおそらく同じだろうから不用意に攻撃すると痛い目を見る」
「…だからあんたでも手に火傷を…確かに厄介だ。事前情報が無く初見ならあたしでも死んでただろうね。今の話を聞くに」
俺が答えながら感想を話して注意喚起をしたら女性も賛同するように真剣な顔をする。
「動きの速さも相当なものだったから精霊を召喚する前に様子見せず最初から全力の一撃で決めないと…精霊を召喚されたらもうどうしようもないと思う」
「…そこまでか…」
俺の感想を含めた対策を聞いて女性は難しい顔で認識を改めるように呟く。
「あと妖精にも注意が必要だね」
「妖精!?」
「精霊が使役してた」
「…『精霊』に『妖精』か…ははっ、なんだか御伽噺の世界に迷い込んじまった気分だよ」
「全くだ」
更に補足するように言うと女性は驚いた後に笑いながらファンシーな事を言い出し、俺も同意した。
「…とりあえずあたしは風呂でも入って来るかな。このままの格好じゃいられないし」
「あ。ちょっと」
「え?…なんだ…?」
話がひと段落ついたからか女性が身だしなみに気を遣うような事を言って背中を向け…
俺が呼び留めながら変化魔法の極技その2を使って身体の見た目を戻すと女性は驚いたように自分の二の腕を見る。
「俺じゃ見た目を戻すだけの応急処置程度しか出来ないけど…」
「あんた回復魔法も使えたのかい…?確かに痛みは少し残ってるけど…それでもこのレベルは高位じゃ…?」
「あくまで止血みたいな応急処置程度で、回復してるとは言えないからどうだろう?」
「いや、あたしにとってはソレでもありがたいよ。感謝する」
俺の自虐するような説明に女性は驚きながらも勘違いするように呟き、俺が否定的に返すと女性が笑顔でお礼を言う。
「じゃああたしは風呂入って来るからそれまで令嬢の護衛は任せたよ」
「はいはい。…明日、先生を呼んで俺も含めて治してもらうかぁ…」
女性がウキウキするように軽い足取りで風呂場に向かって行くのを見守りつつ、俺はロープで拘束してる青年を肩に担いで左手を見ながら呟いた。
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