青年期 95
…そして改造馬を走らせる事、20分後。
おそらく女性の言ってたんであろう村に到着する。
「…途中には誰も居なかったね」
「…やっぱり森に逃げ込んだんでしょうか?」
「とりあえず村の人に聞いてみようか」
「そうですね」
分身の俺の言葉に分身のお姉さんが予想で返し、分身の俺らは一旦馬から降りて村の中へと入った。
「すみませーん。なんかこの村の近くで人が襲われたって話を聞いたんですけど…」
「ん?そりゃ本当か!?」
分身の俺が近くにいた人に声をかけて尋ねると男の人が驚いたように聞き返してくる。
「さっき王都に向かってた商人から聞きました」
「…危ないな…おーい!さっきそこで人が襲われてたみたいなんだけど!なんか聞いたか!?」
「え?なんだって?」
「この村の近くで!人が!襲われたんだと!」
分身の俺の嘘に男は不安そうに呟いて結構距離が離れてる所にいた女性に声をかけた。
「本当かい?…そういえば今さっき森の方に何人か入って行くのを見た、ってハジェンが言ってたけど…」
「森の方に?」
「なんせ村人以外は滅多に近づかないからね。珍しい事もあったもんだ、と思ってたけど…なんだか物騒な話になってきたね…」
女性はこっちに近づいて来ながら確認し、分身の俺が聞くと不安そうな顔で呟く。
「…ちょっと様子を見てこうか。危険な人とかが村に来ると安心して休めないし」
「そうですね」
「お!あんた達が見に行ってくれるのか?そりゃありがたいけど、あんまり無茶しないようにな」
「ありがとうございます」
…村人から有益な情報をもらったので分身の俺と分身のお姉さんは穏便にその場を離れて近くの森へと向かう。
「…うわー…結構広そうな森ですね…これは探すのに骨が折れますよ」
もしかしたら間に合わないかも…と、分身のお姉さんは目の前の森を見ながら悲観的な事を呟き始める。
「…ちょっと離れた後に耳塞いでしゃがんどいて」
「?分かりました」
分身の俺が指示を出すと分身のお姉さんは不思議そうにしつつも二頭の馬を連れて少し離れ、馬を反対側に伏せさせた後に自分もしゃがんで耳を塞ぐ。
「…お!じょ!お!さ!まー!!どこですかー!!いたら返事をー!!」
分身の俺は変化魔法を使って部分変化で喉をセイレーンに変化させた後に息を吸って思いっきり大声を出して叫んだ。
…すると森の中にいた鳥達が驚いてなのか一斉に飛び立っていく。
「…ここ…」
「…そこか」
「なるほど…!そんな手が…!」
マーメイドの聴覚やセイレーンの超音波でエコーロケーションのように音を拾って場所を特定すると、分身のお姉さんが驚きながら立ち上がる。
そして分身の俺とお姉さんがお嬢さんが居た場所に向かうと…
「ふふふ…頭を使って少しは頑張ったようだが…残念、遅かったな」
その途中でやっぱり男達に場所がバレたらしく、お嬢さんが後ろ手に捕まってる状態でお嬢さんを捕まえている男が得意気に笑う。
「いやいや。間に合って良かったよ」
「ははは!強がりを」
分身の俺の安堵して笑いながらの返答に他の男も声を上げて笑った。
「どう?俺と勝負しない?」
「勝負だと?」
「そう、一対一の正々堂々の勝負。そっちは数人だから俺の勝ち抜き戦になるね」
俺が勝ったらお嬢さんを返す、俺が負けたら大人しく見逃す…でどう?と、分身の俺は刺客の男達に一騎打ちを提案して申し入れる。
「何を馬鹿な…」
「そっちに自信が無いんならしょうがない、3対1でも良いけど?」
「ははは!面白い!こんな馬鹿は見た事が無い!」
「…ふふふ…確かに初めて見るタイプの馬鹿だ」
男の拒否るような否定的な呟きに分身の俺が挑発して条件の変更を提示すると他の男二人が笑い出す。
「お前みたいな馬鹿は好きだがあいにくと俺達は仕事中でな」
「ソイツを連れて先に行け。後で合流だ」
「分かった。遊び過ぎて遅くなるなよ」
…どうやら男達は分身の俺の申し出を受けないらしく男二人が足止め役をかって戦闘体勢を取り…
お嬢さんを捕まえてる男はお嬢さんを肩に担いでその場を離れた。
「…先に村に戻っといて」
「分かりました」
分身の俺が指示を出すと分身のお姉さんは改造馬に乗り、もう一頭を連れて戻って行く。
「ははは。さあやるか、2対1だがな」
男の笑いながらの余裕の発言を無視して分身の俺は変化魔法を使い、部分変化と並行変化でスレイプニルの脚力とダチョウの持久力に変えて逃げた男を追いかける。
「…ぐっ…!」
「俺から逃げ切れるとでも思ってたのか?」
…10秒ほどで追いついた男の背中を後ろから思いっきり殴りつけ、衝撃で離したお嬢さんをお姫様抱っこでキャッチしながら馬鹿にした。
「まあいいや。他の二人が来る前に戻るか」
「え、あの…」
「ちゃんと掴まっててね」
「…はい」
分身の俺は変化魔法を解除した後にお嬢さんを背負って気絶してる男の腕を掴みながら走って村へと戻る。
…途中で男が目を覚まして逃げようとしたがお嬢さんを背負ったままの発勁で殴って気絶させた。
「…待った?」
「早かったですね」
「そう?とりあえずコイツがまた目を覚ます前に拘束しとこうか」
「分かりました」
村の入口で分身のお姉さんが馬に乗ったまま待っていて…
分身の俺が声をかけると馬から降りるので分身の俺はお嬢さんを下ろしながら指示を出す。
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