青年期 91

「…お待ちしておりました、大魔導師様。中へどうぞ」



…協会支部の建物に着くと見張りのように立っていた協会員がお姉さんに頭を下げながら挨拶する。



「ありがとうございます」


「あ、すみません。今は部外者の方は入れないんですよ。また時間を置いてお越し下さい」



お姉さんがお礼を言って建物の中に入り、俺も入ろうとしたら協会員に止められてしまった。



「え?あ、じゃあココで待っててもいい?」


「すみません、これから会議か何かあるらしく『安全確保のために人払いして建物の周りには協会員以外を近づけるな』という指示を受けてまして…」


「あー…それは大変ですね…分かりました。じゃあ別の所で待つ事にします」


「ご協力感謝いたします」



俺の確認に協会員は申し訳なさそうな顔で拒否るので揉め事を避けるために俺が大人しく引くと協会員は笑顔でお礼を言う。



「…坊ちゃん?どうしたんですか?」


「なんか俺は協会員じゃないから入れないんだって。だから宿屋に戻っとくよ」


「ええ…またそんな…じゃあ私の権限を使いますから一緒に来て下さいよ。…いいですよね?」



俺が背を向けるとお姉さんがドアを開けて尋ね、協会員とのやりとりを話すとお姉さんは面倒くさそうに呟いた後に問題を解決させるように言って協会員に確認を取る。



「あ、はい。大魔導師様が許可を出してくれるのなら」


「だそうです」


「はいはい」



協会員は素直に頷くとお姉さんがそう告げ、許可が降りたので俺も建物の中に入る事に。



「坊ちゃんが居なかったらまた迎えに行かないといけないんですよ?」


「って言ってもあんなトコで揉めるわけにもいかないでしょ。陛下とか上層部のお偉いさんが来るんならなおさら、少しの諍いでも起こすわけにはいかないし」


「そうですけど…」



建物の中に入るとお姉さんはため息を吐きながら言い、俺が大人の対応を取った理由を話すも納得いかなそうに呟く。



「そもそも協会支部じゃなくて城とかで集まってくれれば良かったのに」


「それは…でもそういう決まりになってますから」


「まあ俺らの国だったら知り合いばっかだからあんな風に止められる事も無かったんだけどね」


「…秘匿事項の弊害ですね」



俺の愚痴にお姉さんは困ったように返すので俺は雰囲気を変えるために軽くボケるように言うとお姉さんが笑って返した。



「…来たか」



この前の地下倉庫に向かうと部屋の前に国王陛下を含めた数名の人達が立っている。



「遅れてすみません」


「自分が無名なばっかりに入口で止められてしまって。それで中に入るやりとりで多少時間がかかりました」



お姉さんが軽く頭を下げて謝るので俺は理由を告げた。



「…なんだと?」


「…なるほど、秘匿事項の弊害か…」


「…仕方あるまい。情報を公開するわけにはいかんのだ」



王様が眉間に皺を寄せて聞くとやり手の起業家みたいな雰囲気のおじさんと結構厳つい感じのおじさんが状況を把握したように言う。



「まあいい。時間の指定はしていないのだ、この程度なら遅れたとも言えん」


「うむ。時間が惜しい。そんな無駄なやりとりをしてるほど暇では無いのでな」


「この後の予定のためにさっさと用件を済ませてもらうぞ」



王様の発言におじさん二人が同意して地下倉庫の中に入って行くと残りの人達も入るので俺らも部屋の中へと入る。



「では早速本題に入ろう」


「『新しい魔石の査定』と、『解析する魔物素材の確認』だな?」


「はい」



地下倉庫のドアが閉まるとさっきのおじさんが話を切り出し、王様が再度確認するように尋ねるとお姉さんは肯定した。



「しかしクライン大魔導師の報告とはいえ全くもって信じ難い。今までの実績があっても尚、だ。この感覚は何度経験しようと未だに慣れんな」


「全くだ。確実に真実で事実である事は理解しているつもりだが、それでも信じられんよ」



結構厳つい感じのおじさんが腕を組みながら低い声で言うとやり手の起業家みたいな雰囲気のおじさんが同意する。



「…金のゴーレムの魔石だけならばまだ素直に信じられよう…だが、ミスリルのゴーレム…更には未討伐のアダマンタイタンの魔石や素材と聞くとどうにも疑念が生まれ、信じる事に拒否反応が出てしまう」



王様も腕を組んで微妙な顔で賛同するように話し出す。



「どうか我々の疑心を払拭するために現物を見せてくれ。いつものように」


「分かりました」



やり手の起業家みたいな雰囲気のおじさんの催促するような発言にお姉さんが了承し、空間魔法の施されたポーチから魔石を取り出してテーブルの上に置いて行くと…



「「「……おお…!!」」」



俺とお姉さん以外のその場に居たみんなが驚嘆するように呟いた。



「…コレが…一見すると普通のスライムの魔石と見間違えるのも無理は無いな」


「紫や黒のスライムについて調べさせたが、どうも文献にすら記述が少ない」


「その数少ない情報も『ダメージを与えると数が増える』だの『急に武器や防具が跡形も無く消える』だの荒唐無稽なものばかりだがな」


「…どうやら確率的には一般のハンターで20年に一度遭遇出来るかどうか…みたいですね」



おじさん達がスライムの魔石を見ながら話し合い、お姉さんは俺の経験を基にした予想を教えた。



「20年に一度!それが本当なら情報の少なさに納得がいくが…」


「だがコレで少なくとも二回は遭遇しているわけだ。計算が合わないのではないか?」



やり手の起業家みたいな雰囲気のおじさんが驚きながら呟くと結構厳つい感じのおじさんは疑うように聞く。



「…いや、おそらくダンジョンへと挑む回数が違う」


「おっしゃる通りです。普通のハンターならば年に12回から15回ですが…坊ちゃんの場合は60回前後なので、遭遇する確率も普通のハンターの5倍ほどになります」



王様の反論するような発言にお姉さんが肯定して説明をする。

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