子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても大丈夫！

青年期 90

「アダマンタイタン…！あの未討伐指定の魔物、ですか！？」

「はい。ですが、素材や魔石の方がとても重くて…強化魔法の使い手が居なければ運ぶ事すら難しいでしょう」

「…失礼ですが、本当に事実なのですか？そう直ぐには信じられる事では…」

驚くおばさんにお姉さんが注意事項のような事を言うとおばさんは困惑したように確認し、疑うように呟く。

「気持ちは理解出来ます。なのでまずは通常の魔石の取引から始めましょうか」

「…分かりました」

お姉さんの指示におばさんは微妙な表情をして了承して魔石の確認作業に移る。

「…！コレは…！まさか、金のゴーレムの…！？」

「はい」

「…ご、ゴーレムの魔石すら今回が初めて見るというのに…その上位種の魔石まで…」

おばさんが確認作業を続けていると急に紙と魔石を交互に見ながら驚愕し、呆然としたように呟く。

「…コレも特別な魔石の一つでは？」

「そうですか？…では査定待ちという事で取引から外しておきましょう」

「…噂には聞いていましたが…実際にこのように大量の魔石を扱うとなると緊張するものですね。この歳になってこれほど緊張する場面に遭遇するとは…」

おばさんの問いにお姉さんがあっさりと魔石を回収するとおばさんは確認作業が済んだ後に安堵の息を吐きながら言う。

「では魔石の確認は出来ましたので支払いする金額を用意してきます。少々お待ちください」

「…金のゴーレムの魔石も珍しい物なんだ？」

「みたいですね。確かに普通の魔物に比べたら目撃情報が少なく珍しい魔物ではありますが…それでもミスリルのゴーレムや紫色のスライムに比べたらまだ一般的な魔物の範疇だと思います」

「紫と黒はマジで100回に一回も見ないから幻とか伝説とか言っていいほどだからねぇ」

特に黒は500回ぐらいダンジョンに行ってても二回しか見た事無いし…と、俺はお姉さんの説明に納得しながら呟く。

「普通のハンターならダンジョンに行くのは大体月に一度なので…坊ちゃんの経験から推測すると遭遇出来るのは20年に一度ぐらいですかね…？」

「まあ隔週で挑もうもんなら『命知らず』とか『自殺志願者』って呼ばれるらしいし…じゃあ毎週行ってる俺はなんなんだ、って話だよね」

「『頭のおかしい狂人』では？魔法協会の裏では坊ちゃんそう噂されてますよ。『危機感の欠如した戦闘狂』とも言われてますが」

お姉さんの予想に俺が笑いながら返すとお姉さんも笑いながら冗談を言うような軽口で告げる。

「うわひでぇ。でも否定出来ないのが辛い…」

「でもソレで一番恩恵に預かってるのは魔法協会なんですけどね」

俺が笑いながら返してボケるように呟くとお姉さんは笑いながら言う。

…そしておばさんから代金を貰ってお姉さんと王都の観光をする事、三日後。

「…猟兵隊の団長殿はおられるか？」

朝早くから宿屋のドアがノックされた後に俺を尋ねて来たんであろう言葉が聞こえてきた。

「はいはい。俺ですけど…何かありました？」

「睡眠の邪魔をして申し訳ない。陛下がお呼びなのだ…魔法協会の支部にて話があるとの事だが…」

俺がドアを開けて対応すると兵士が居て、申し訳なさそうな顔をして軽く謝った後に用件を告げる。

「魔法協会の支部？城じゃなくて？」

「そう聞いている」

「分かりました。支度をして直ぐに向かいます」

「すまない、助かる」

俺の確認に兵士が肯定するので了承すると兵士は感謝するように軽く頭を下げて去って行った。

「ついに到着したんですね」

「誰か来たの？」

「協会の上層部です。査定するには最低5人必要なので…私とこの国の国王陛下を入れてもあと三人必要だったんですよ」

お姉さんが待ちわびたかのように言うので俺が聞くと軽く説明してくれる。

「へー…で、なんで俺も呼ばれたの？」

「だってアダマンタイタンの魔石持ってるのって坊ちゃんだけですし。あと重くて動かすのが大変なので…」

「肉体労働要員か…」

「多分ちょっとだけ報酬も出ると思いますよ。流石にタダ働きをさせるわけにはいかないでしょうからね」

俺の疑問にお姉さんが困ったように笑いながら返し、俺がため息を吐いて呟くとお姉さんは予想を話した。

「だったら仕事の依頼みたいなもんか」

「そうですね。じゃあ待たせるのも悪いので行きましょう」

「はいはい」

俺が言い換えるとお姉さんは肯定した後に行動を促してきて、俺は適当に返事をして部屋を出る。

「そういや協会の上層部って色んな国のお偉いさんなんでしょ？」

「はい」

「その割に来るの早くない？国政とか大丈夫なのかな」

「たまたま都合のついた人が直ぐに飛行船に乗って来たからじゃないです？」

歩きながらの俺の疑問にお姉さんは予想しながら答えた。

「上層部が集まって会議とかする場合は一月前から連絡来ますし、それでも多忙になって参加が出来なくて代役を立てる…って事も多々ありますからね」

「へー…やっぱ忙しいんだ」

「ひどい時は全員代役で会議の意味が無かった時もあったらしいですよ。坊ちゃんが学校に通い始めた時にも私一人以外みんな代役…なんてかなり気まずい事もありましたから」

「うわ…それは確かに気まずい…」

お姉さんが協会上層部内の事を教えてくれ、俺は大変だな…と思いながら返す。