青年期 79

…そしてダンジョンの最下層に着くも、ソコにいたのはベオウルフとグランドタートル。



ボスに期待するも、黄竜だったので俺はガッカリしながらも一応魔石抜きをして倒す。



「はぁ…初見の魔物はいなかったか…」


「坊ちゃん…時期に入って普段よりも強くなってるボスさえも瞬殺って…」


「そりゃ部分変化と並行変化を使ってるからね。流石に今のボス相手に普段通り修行してたらあっという間に返り討ちだよ」



俺がため息を吐きながら呟くと分身のお姉さんも呆気に取られたように呟き、俺は本気を出さざるを得なかった事を告げる。



「それもそうですが…まあ、ファンロンの魔石なんて希少なので、ありがたいです」



分身のお姉さんは微妙な顔で呟くと気持ちを切り替えたように言う。



「…ボスと戦う時は修行のために魔石抜きとかあんまりしないからなぁ…魔石の数も少ないんじゃない?」


「…そうですね…多分魔法協会に納品されたのは二桁ぐらいだと思います」



それでも本来ならありえない数で、とんでもないない事なんですが…と、お姉さんは困惑したように笑った。



そして普通に修行しながらダンジョンを出て町に帰っての翌日。



今度は別の上級者向けのダンジョンに行く事にしたが、町から結構離れた場所だったのでドラゴンに変身して移動する事に。



「…うーん…」


「いませんねぇ…」



しかしゴーレムどころかサイクロプスすら見当たらず…



せいぜいアルケニーが大量にいたぐらいで特に目新しい事はなく、俺は少しガッカリしながら普通に修行をして帰る。



…それから更に翌日、翌々日とミスリルのゴーレムはおろか初見の魔物すらも発見出来ないまま貴重な時期が過ぎて行く。



「東側に向かえ!またゴブリンの群れが来てるぞ!」


「俺達は西側だ!オークを倒すぞ!」


「北東よりグールの群れが来ているそうだ!ゴブリン達と合流する前に俺達もゴブリンを叩く!」



…ダンジョンから帰還すると町の中は俺ら傭兵団とこの国のハンター達が押し寄せてくる魔物の討伐にてんやわんや状態だった。



「ただいまー。今日はまた一段と騒がしいね」


「そうですか?時期の間はこんなものでは?」


「昨日まではこんな忙しくなかったでしょ?…ってそうか…もう中日か…」



俺が宿屋の部屋に帰って挨拶しながら周りの様子について尋ねるとお姉さんが不思議そうに返し…



俺は昨日と比べながら聞くもふと思い出して自己解決する。



「降魔も残すところあと三日から四日で終わりですからね」


「明後日で終わらないといいんだけど…って言っても一般人からしたら一日でも早く終わって欲しいか」



お姉さんが時期の終わりを予想しながら言うので、俺は早く過ぎ去らないでほしいと期待するも魔物の外出で迷惑を被ってる人達の事を思って前言を撤回するように言う。



「まだミスリルのゴーレムは見つかってませんし…」


「…ま、そう簡単に見つかるものじゃないからね…来年再来年と気長に待つしかないよ」



お姉さんの笑いながらの発言に俺は微妙な顔をしながら返す。




その翌日。




この国にある上級者向けのダンジョンは全て回り…



ミスリルのゴーレムがいないのを確認したので俺は諦めて中級者用のダンジョンに行く事にした。



「…そういえば、まだ上級者用のダンジョンには行ってませんよね?」



俺がダチョウに変身してダンジョンへと移動してる最中に分身のお姉さんが思い出すように聞いてくる。



「…いける?」


「今は分身なのでいつでも大丈夫です」



俺の心配して不安に思いながらの確認に分身のお姉さんは笑いながら肯定した。



「まあ先生がいけるってんなら…」



俺は本人の意思を尊重する事にして行き先を変える。



「もしかしたらソコにいるかもしれませんよ?」


「だといいんだけどね…」



分身のお姉さんが期待を込めて言うが俺は今までの経験上いない気がする…と思いながら呟く。






ーーーーーー






「グオォ!!」


「くっ…!速い…!」


「…!坊ちゃん!囲まれました!」


「ちっ…!」



…流石に時期のダンジョンともなると普段は下層や最下層にいるクラスの強敵が浅い階層まで上って来ていて…



なおかつ数も強さも増しているのでいくら俺でも分身とはいえお姉さんを庇いながらだと分が悪い。



「ガファ!」


「…っ!おらっ!」


「ケェェ!!」


「坊ちゃん!ホウオーがきました!」


「オルトロス三体でも手一杯だというのに…!こりゃ魔力を温存しながらだとキツイぜ…!」



…お姉さんが殺されないよう気を配りながら、魔力の消費を抑えるために最低限の部分変化しか使えない状態で、普段よりも強い魔物の群れを捌かないといけないので…



流石の俺も徐々に精神的な余裕が削られていく。



「…あ…!そういえば、坊ちゃん今は普段の1/4の魔力量しか…!」


「まあでもこれぞ修行って感じ!やっぱり人間逆境を跳ね除けてこそ強くなるからね!」


「グッ…!!」



分身のお姉さんが苦戦してる俺の様子を見て思い出すように驚愕しながら呟くが、俺はむしろ内心この状況を楽しみながら笑って返し、噛みつきにきたオルトロスの首を蹴り上げる。



「…坊ちゃん、こんなピンチの状況で笑うのはやっぱり変態だと思われますよ…」



仰け反ったオルトロスにゴブリンの爪とグリーズベアーの爪を並行変化させた右腕で貫手の心臓抜きをして倒すと分身のお姉さんが困ったように笑いながら指摘してきた。



「そう?最近こんな感じでヤバイ状況になんてなること無かったからなぁ…やっぱこういう風に本気で戦えるのは楽しいし!」


「「グオォ!!」」「キュエェェ!」



俺が分身のお姉さんを肩に担いで魔物の包囲を強引に突破したら当然魔物達が怒ったように吠えながら追って来る。

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