青年期 76

「ァ、ァ…!」


「…あっぶねー…テンション上がって初撃でガードしちゃったけど骨が折れるかと思った…」


「大丈夫ですか?」



…魔石を抜いて魔物を倒した後に右腕を見ながら焦ったように呟くとお姉さんがさっきとは違って今度は心配したように確認してきた。



「うん。ミノタウロスよりも動きが少し俊敏な分、力の方は少し弱いみたいだね。もしミノタウロスよりも力が強かったら骨にヒビ入ってたかも」


「…強化魔法の使い手でも素手でガードなんてしようものなら下手すると死ぬんですが…」



助かった…と俺が右腕を見て安堵しながら呟くとお姉さんはなんとも言えないような微妙な顔で呟く。



「…いやー、反省反省…どうやらテンションが上がるとまだ自分の能力を過大評価するようだ…」


「坊ちゃんホント自分に厳しいですね…」



俺の反省しながらの課題を見直すような呟きにお姉さんは呆れたように呟いた。



「…はい」


「ありがとうございます。…なんか変わった形ですね…楕円形にしては丸すぎるような…」



俺が魔石を渡すとお姉さんは両手で掲げるように持つと不思議そうに形について言及する。



「もしかしたら目の形とか?宝石にも似たようなのがあるらしいし」


「へー…でも目玉って球体ですよね?これは少し楕円形のようですけど…」



俺の予想にお姉さんは意外そうに呟きつつも納得いかないように呟くので…



「サイクロプスの目玉はこんな形なんじゃない?」


「なるほど」



適当な感じで魔物の造形について触れるとお姉さんが納得したように返した。



「…んじゃもう少ししたら帰ろうか」


「分かりました」



俺は空間魔法の施されたポーチから時計を取り出して時間を確認し、そう告げるとお姉さんも賛同する。




…翌日。




朝早くから俺ら傭兵団は次の町を目指して村を出た。



「…ん?」


「どうかしました?」


「…いや、なんでもない」



…馬車の中での瞑想中に一瞬ただならぬ気配や雰囲気を感じたが本当に一瞬で終わったので俺はまた瞑想に入る。



「…あ。大雨がくる。…みんな!一旦止まって!」



瞑想中に身体の内部で変化魔法の部分変化や並行変化をしてるとコンドルの特性で天候の変化に気づき、俺は急いでドアを開けて指示を出す。



「どうした?」


「何かあったのか?」


「これから約30分後ぐらいに大雨が降るからテントの準備して」


「雨?」


「…もしかしてあの雨雲か?」


「あの薄さだとせいぜい小雨程度だと思うが…」



俺の指示に団員達は不思議そうに空を見渡しながら言うもちゃんと指示通りテントの準備を始めた。



「どれくらいの時間降りそうですか?」



団員達が街道から逸れたところに大型のテントを一斉に設営し始めるとお姉さんが確認してくる。



「多分二時間から三時間ぐらいかな?」


「…じゃあ今日中には町に着かなそうですね」


「進路を変えて近くの村に行こうか…隊長達集まって!進路を変える事になりそう!」


「…近くの村に行くのか?」


「あー…雨のせいで今日中には町に着かなそうだもんね…」



お姉さんと話した後に俺が隊長達に集合をかけて理由を話すと直ぐにみんな察したように言いながら集まった。



「目的があるわけじゃないから野宿とかは避ける方向で進もうか」


「そうだね」


「賛成!宿代も十分にあるし!」


「俺も構わん」


「俺もだ」



俺が今後の方針を軽く決めながら話すと隊長達はみんな俺の意見に賛同する。



それから30分もすると予想通り雨が降り始め…



5分もする頃にはザーザーの大雨に。



「うわぁ…坊ちゃんの予想通り大雨ですね」


「魔物の特性のおかげだよ。鳥とかは飛ぶために気流や気候に敏感だからね」


「なるほど」



馬車の中から外の景色を見ながら言うお姉さんに俺がそう返すと納得したように呟く。



「…お」


「やんできましたね」



大雨になって二時間後には小雨になり…



その一時間もしない内に雨は完全に上がったのでみんなにテントを片付けさせ、最寄りの村へと向かう。



「団長。村に着いたぞ」


「ありがと。さーて…宿探しだ」



…なんとか暗くなり始めたぐらいの時間には到着でき、俺とお姉さんは馬車から降りて宿を探した。

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