青年期 45
「じゃあこの二人が隊長って事で、ちゃんと命令は聞くこと」
「ああ」
「分かった」
「よろしく頼む」
俺が知り合いのハンター二人を指して指示を出すと団員達は指揮を執る事になった二人を見ながら了承する。
「無理や無茶はしないように。撤退や増援要請の必要が出たら即行動に移して」
「了解だ」
「たかが山賊ごときにその必要があるのかは分からんが…万が一の時は助けに来てくれ」
「すぐ行くから死なないようにね」
俺の釘を刺すような指示にハンター二人が了承するので俺は笑いながら返した。
「…では行くか」
「場所はどこだ?」
「場所は…」
「頑張って~」
話が終わると直ぐに山賊退治に向かおうとするので俺は応援の言葉をかけて手を振って見送る。
「傭兵団の派遣ですか…新しい仕事が増えそうですね」
「…ああ、そっか。治安維持のためなら内戦とか関係無いから山賊や盗賊相手にメンバー達を派遣するっていう手もあるか」
お姉さんの発言に俺は少し考えて戦争以外での仕事に発展する事に気づく。
「…『傭兵団』ってよりはまるで『民間軍事会社』だな…ま、意味合い的には一緒だけど」
「民間軍事会社…ですか?…なるほど…!武力で安全を売るわけですか!流石坊ちゃん!」
俺が微妙に思いながら前世の記憶での知識を呟くとお姉さんは目から鱗といった反応をしながら褒めてきた。
「はぁ…平和な世の中じゃ稼げない仕事だよな…そんな会社が儲かるよりも潰れる世の中になって欲しいもんだ…」
「…それもそうですね」
俺のため息混じりの呟きにお姉さんはちょっと沈んだような表情になって同意する。
それから4日後。
山賊退治に出ていた団員達が帰還して来た。
「お。お疲れ様。どうだった?」
「余裕だったぜ。こちらと山賊とでは戦力差がありすぎてな…」
「だから殺さずに捕らえて村の治安維持部隊に引き渡して来た」
団員から報告を受け、出迎えようと本部から出たところでばったりと会ったので…
俺が労いの言葉をかけて聞くと知り合いのハンター二人が報告を話す。
「報酬は『金が払えない』と言われて穀物や装飾品を差し出されたのだが…」
「まあ貰えるだけありがたい。一応換金した後に報酬支払うからみんなの名前書いといて」
団員の一人が馬の後ろに繋いである荷車を指して言うので俺は本部のカウンターを指差して指示を出した。
そして事務作業の得意なハンターである団員を呼んで国へと活動報告や村からの報酬受け取りによる税の書類をお願いし…
俺は王都に行って馴染みの買取業者を拠点まで呼び、小麦とかを換金してもらう事に。
「おや、今回は珍しく魔物素材は無いのですか?」
「欲しいの?」
「そりゃもう。出来れば買取を月一から隔週にしてほしいぐらいですよ」
業者のおっさんは小麦や装飾品を見て不思議そうに尋ねるので俺が聞き返すと笑いながら肯定する。
「じゃあ…この拠点に買取出張所みたいなのを作らない?それならダンジョンから帰ったついでに直ぐ素材を売れるけど」
「いいんですか!?」
「他のハンター達もわざわざ王都まで売りに行く手間が省けるし、なにより今回みたいに物品を受け取った場合速やかに現金に換える事が出来るからね」
「ありがとうございます!では是非よろしくお願いします!」
俺の提案におっさんが驚くので誘致する理由を話すとおっさんは頭を下げながらお礼を言う。
「出張所の場所とか内装とかなにか希望はある?」
「…場所は運搬し易い出入り口の近くだとありがたいですが…建物の方はウチに設計図がありますので、明日持って来させていただきます」
俺が確認するとおっさんは少し考えて要望を話した。
「ん、分かった。とりあえずコレの換金が終わったら魔物素材の方もよろしく」
「ありがとうございます!!」
俺は了承した後に小麦や装飾品を指差して言った後に空間魔法の施されたポーチから肉以外の魔物素材を出しながらお願いする。
「…あ、そうだ。設計図持って来る時に一緒に身分証とかも持って来て、この拠点に出入りするための許可証を作るから」
「分かりました」
俺がふと思い出した事を告げるとおっさんは魔物素材の一つであるグリーズベアーの爪を見ながら頷く。
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