青年期 44

…それから数日後。



南の戦場や西の戦場で一緒に戦ってた傭兵達も次々と王都に来て俺の傭兵団へと加入してくる。



もちろんハンターのライセンスを持たない人はハンターの試験を受けさせて合格した後に加入を認めた。



流石に団員が300人を超えると柵の設置は直ぐに終わり…



更に傭兵達が知り合いの大工を呼んでくれたり建設資材の融通を口利きしてくれたりで、同時並行で色んな建物の建設が出来る事に。



おかげで国中の色んな町や村から業者が来てくれるらしく…拠点の開発が一気に進む事になりそうだ。




…更に数週間後。




団員達が続々と増え、建設資材もどんどん拠点内に運び込まれ…兵舎の工事が複数の場所で開始される。




…そして王都の外に土地を購入しての半年後。




『ついに拠点内に本部が完成した』との報告を受け、お姉さんと共に急いで拠点内に移動すると…



「おおー…!」


「立派な建物が完成しましたね!」



横に広い役所のような三階建ての建物が完成していた。



「…でも良く考えたらこんな大きい建物にする必要ありました?」


「…無いかもしれない…事務作業だって俺らの仕事が無いとやる事無いし…」


「半分以下の大きさでも良かったかもしれないですね」


「そだね」



外観を見ながらのお姉さんの問いに俺が考えながら呟くと微妙な感じで笑いながら指摘するので俺も同意する。



「まあとりあえず中を見て行こうか」


「はい」



俺が気を取り直したように言いながら中に入るとお姉さんもついてきた。



…建物自体は役所とかと似たつくりになっているのでそこそこ広いエントランスから少し進むと接客用のカウンターがあり、その奥が事務作業用の空間になっている。



「ギルドとか魔法協会の支部のような広さですね」


「数十人で働けるように広くしたから。でも実際は書類作業なんてあんまり無いから2、3人で十分かもしれないけど」



お姉さんの感想に俺は理由を話しながら微妙な感じで補足した。



「他の場所は居住区なんですね」


「…もしかしたら事務作業が忙しくなるかもしれないから移動時間とかを減らすために」



…この建物の設計段階の時にはお姉さんもその場に居たはずなのに…



なぜか初めて知るような感じで言い出し、俺は一応理由を説明する。



「団長!」


「ん?どうしたの?」



一階を見て回ったし、俺の部屋と会議室がある二階に行くか…と考えていると団員が慌てた様子で声をかけてきた。



「さっき手紙が来て…!故郷の村が山賊の被害に遭ってるらしいんだ!山賊の退治に行かせてくれ!」


「ほう?それは大変だな。よし、みんなを集めてくれ」


「え!?いや…そんな全員で行くような規模じゃないんだが…」



団員の許可を取るような発言に俺が傭兵団を動かそうとすると驚いた後に困惑したように呟く。



「そう?じゃあ何人ぐらい必要?」


「多分10人…15人いれば、大丈夫だと思う」


「じゃあ20人だな。指揮官は俺が呼んで来るから残りの17名を集めてきて」


「分かった!団長、恩に着るぜ」



俺が人数を確認すると団員は考えながら予想するので俺は念のため人数を増やして指示を出すと、お礼を言って仲間達に声をかけるために建物から走って出て行った。



「坊ちゃんは行かないんですか?」


「まあね。とりあえずは様子見」



お姉さんの意地悪そうな笑顔での確認に俺は軽い感じで肯定して理由を話し…



建物から出て知り合いのハンター達を探すために一月前に完成した兵舎区画へと向かう。



「お。いたいた…おーい」


「ん?どうかしたのか?」



兵舎に向かってる途中で知り合いのハンターの一人を見つけたので声をかけると駆け寄って来て用件を尋ねてくる。



「今から時間ある?」


「ああ、大丈夫だ」


「なんか団員の故郷の村が山賊に襲われたみたいで…その山賊を退治して来てくれない?」


「山賊の退治…?」



俺の確認に頷くので用件を伝えてお願いすると不思議そうな顔で確認するように聞き返す。



「そうそう。まあ無理にとは言わないけど」


「いや、引き受けよう。部隊の人数は?」


「とりあえず20名の予定。だから他にあと一人、指揮出来る人を連れてくるよ」


「ふむ…それならば俺が呼んで来よう」


「お。じゃあお願い。新しく出来た本部の入口で待ってるから」


「ああ、分かった」



俺が選択肢を与えるとどうやら引き受けてくれる上にあと一人のメンバーを選んで来てくれるらしいので、俺は待ち合わせ場所を伝えて先に移動した。




ーーー




「話は聞いたぜ。なんでも山賊を退治するんだって?」



本部の建物に戻って10分もしない内に知り合いのハンターが来て、確認するように尋ねてくる。



「みたいだね」


「まあ困ってる人を助けるのはハンターの義務だが…それはダンジョン内に限った話だからな…」


「連れて来た!」



俺の肯定に知り合いのハンターが微妙な顔をしながら呟くとさっきの団員が他の仲間達を引き連れて戻って来た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る